◆安さと引き替えに失うものの大きさを考える
日本生協連は、2月1〜2日、東京・虎ノ門パストラルで「第24回全国産直研究交流会」を開催した。
この研究交流会の初日に、鈴木宣弘東京大学大学院教授が「グローバリズムとローカリズム」と題して講演した。このなかで鈴木教授は「わが国の農産物市場が閉鎖的だというのは間違いである。日本ほどグローバル化した食料市場はないといってもよい。われわれの体のエネルギーの61%もが海外の食料に依存していることが何よりの証拠」であるとし、日本の関税が高いという意見や、国内補助金が多いという意見、あるいは食料の内外価格差を非関税障壁とすることは誤りである。さらにFTA交渉における農業悪玉論も誤りであることを、具体的なデータを示して明らかにした。
さらに鈴木教授は、WTO交渉や日豪EPAの結果によっては、日本の農業生産が消失する懸念があると述べたうえで、「可能な限りの具体的な指標を基に、消費者と生産者が“安さ”と引き替えに失うものの大きさを一緒に考える場をもっとつくるべきである。そして、一部の人びとの短期的な利益のために、拙速な流れを許せば、日本の将来に取り返しのつかない禍根を残すことになりかねないことを確認する必要がある」と語った。
次いで「生協産直における青果物品質保証システム2008年改訂版」の提案を行った五島彰日本生協連産直事業委員会代表委員(コープネット事業連合農産部長)は、適正農業規範はマイナーチェンジにとどめ、08年版の改訂の要点は、適正流通規範2008年版の開発と青果物仕様書・統一ファーマットの開発にあるとし、その内容を報告した。
報告の最後に五島代表委員は提案のまとめとして、レジメには入れてなかったが昨今の状況をみると、青果物品質保証システムを実施する前提としてまず「日本農業の活性化と安定的な発展」を上げなければならないとした。
◆EDLPからEDFPへ
次いで、全国生協産直調査(別掲)や事例調査をもとに日本生協連産直事業委員会産直小委員会がまとめた「サプライチェーン形成と産直ブランド強化について」同委員会の委員である木立真直中央大学教授が講演した。
ここでは「生協にとってみずからのアイデンティティの一つである産直事業を再点検し強化することは喫緊の課題」であるとして、その課題を次の7つの提言に要約した。
提言1:組合員への最大限の価値の提供ー商品力・サービス・提案力の強化
ここでは、組合員の食生活をより豊かにするために▽味・栄養・鮮度・安全などの商品力の強化▽店舗・無店舗の業態特性を活かした流通・サービスの提供▽組合員に商品を「選んでもらう」より、生協・産地側が組合員に「提案する」ことが求められている。
提言2:生産者支援から提案力にうあたる多面的な産地機能
提言3:ロジスティクス改善とサプライチェーンの統合的管理 ここでは、産直サプライチェーンの共通課題として、リードタイムの短縮・横持ちの削減・品温管理の徹底などのロジスティクスの改善とともに、需要予測の精緻化と計画的生産・物流チェーンを構築する方向でのSCMの導入が強調されている。
提言4:事業連合による調達・物流の集約化と高度化 スケール・メリットに基づく事業の効率化とノウハウの共有化によるロジスティクス管理の高度標準化の追求とローカル・ネットワークの内部化が課題とされている。
提言5:適正取引規範の確立 産地は販売チャネルの多元化をはかっており、量販店PB商品と生協産直を差別化するためには、産地との自立・対応を基礎とした真のパートナーシップを確立し、公平・透明・双務的契約を内容とする文書契約の定式化が需要である。これは組合員へ食品を提供する価格政策において、EDLP(Everyday
LoePrice)ではなくEDFP(Everday Fair Price)を採用することと呼応すると、価格政策における適正価格の重要性をあげている。
提言6:多層的交流関係の構築
提言7:産直ブランドの強化
木立教授は、いま消費者は上昇志向から公益的志向にシフトしており、消費者が出資する生協こそ、消費者の社会志向の期待にこたえる組織であることを強調した。
2日目は4つの分科会に分かれてテーマごとにこれからの産直について検討し、散会した。
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