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7580トンを県間調整 −20年産米の生産調整 (2/4)


 20年産主食用米の生産調整数量については、都道府県からの目標数量の増減申し出に基づき国が調整を行うことになったが、農水省は2月4日、その調整結果を公表した。
 それによると佐賀県から生産数量を7580トン削減する申し出があったことから、主食用の生産数量増を希望した7県に配分された。
 佐賀県は面積換算で昨年末の生産数量より、1430ha転作面積を増やし、主食用生産面積は2万7350haとなる。
 一方、県間調整で増加したのは新潟県3500トンをはじめ(換算面積増加分650ha)、福島県1480トン(同280ha)、青森県911トン(同160ha)、茨城県620トン(同120ha)、石川県569トン(同110ha)、宮城県450トン(同90ha)、山梨県50トン(同10ha)となった。
 都道府県間調整については目標削減を申し出たところには産地づくり交付金が1トン11万円を上限に加算されることになっており、佐賀県はこれによって産地づくり交付金が約8億3000万円加算されるという。一方、増加を希望する県は産地づくり交付金1トン4万円を下限に減額を申し出ることになっており、申出県の削減単価水準に応じて面積配分が調整された。これにともなう産地づくり交付金の減少額は新潟県が2億1000万円、福島県が7500万円などとなる。
 農水省は「主食用需要は厳しい状況が続く。麦、大豆など自給率の低い作物や主食用米以外にも目を向けて地域の水田農業をどうするか検討することが重要になる」と話す。
【解説】
生産調整目標数量の県間調整はJAグループも自主的に行ってきたが19年産では600トンにとどまった。その点では、20年度予算で新需給調整システム定着交付金150億円のうち県間調整による産地づくり交付金上乗せ分として30億円をプール、その財源をもとに削減1トンに対して11万円加算、という仕組みを活用したことがこれまでにない県間調整面積となったといえる。
 ただ、佐賀県の20年産主食用需要量は実は19年産より3400トンも多い数量が提示されていた。20年産の需要量が19年産より増加したのは佐賀を含めて3県のみ。それでも当初面積より1400ha相当の主食用数量削減を決めたのは「米価の先行きが見通せないから」(JA佐賀中央会)だ。
「少子高齢化による需要減、さらに買い入れられた政府米もいずれは売却されるのではないかなどと考えると、米価上昇が望めそうもないなか(提示された需要量どおり)作付けを増やしていいのか」が議論になったという。しかし、単に転作を拡大しても産地づくり交付金は3年間固定のため面積あたりの交付金は減ることになる。
 そのなかで、今回、産地づくり交付金が加算される県間調整のスキームを活用すれば交付金単価全体を多少とも底上げすることができることが見込めた。
 佐賀の場合、1トン11万円の加算金を県の反収基準(530kg)から算出すると転作拡大部分の交付金単価は10アール約5万8000円となる。この拡大部分と従来の交付単価水準同4万円の転作部分を合計し、転作面積全体の交付単価として均して割り出すことに地域で合意すれば、10アールあたり4万円を超え転作を拡大しても減額になることは避けられる。
 佐賀県の大豆作付け面積は平成15年には8700haにまで拡大した。それが19年産では7900haまで減少。原因は16年からの米政策改革にともなった麦・大豆等へのメリット措置の減少だ。これはもちろん佐賀県に限ったことではなく、むしろ佐賀県でも決して大豆作が定着していたとはいえないということだろう。中央会も「過去の作付け実績を念頭に置けば転作拡大は可能ではとの考えもあった。しかし、これで米から大豆の本作化、に踏み切れるというものではなく、今回はあくまで米づくりを拡大すれば農家経営に大きな打撃を与えかねないという懸念からの選択だ」(同)という。
 県下JAにとっても米の生産量減はCE利用量や生産資材購買事業への影響、一方で大豆の生産増に対する施設受け入れ体制整備など課題を抱える面もある。にもかかわらず食用生産量の削減を決断したのは「このスキームを利用してとにかく農家手取りは減らないことを示す」ことを優先したからだという。
 主食用米の県需要量について“19年産より増産”とのシグナルが出されたとしても、そのシグナルに従うわけにはいかない、という米価見通しのなか、緊急に示された政策を活用しつつ、なんとかもうひとつの「苦渋のシグナル」を生産者に提示した――。こうした経過を聞くと、米価下支え策などや生産調整手法の見直し水田農業の維持のための抜本策を求める各地からの声が改めて思い起こされる。

(2008.2.7)

 

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