農業協同組合新聞 JACOM
   
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自給率向上へ工程管理 農地確保の施策検証も 
―農水省の方針 (1/28)

 食料自給率をどう高めていくか、農水省は新たな食料・農業・農村基本計画に盛り込む自給率向上施策の「全体像」を1月28日の審議会企画部会に示した。重点は6項目で、消費面では「食育」と「地産地消」の全国展開など3点、また生産面では(1)担い手による需要に即した生産(2)食品産業と農業の連携(3)効率的な農地利用ーを促進する。
 6項目の施策推進に当たっては、工程表をつくって管理し、毎年、評価して、翌年以後の施策改善に反映させる手法を導入する。
 自給率目標はカロリーベースで、平成27年度に先延ばしして示すが、数値の提示は3月になる見通し。
 農地(耕地)の確保も27年度面積の見込みを示す。耕作放棄の抑制に役立つ施策の効果を検証する指標とするためだ。
 現行の基本計画は22年の面積を470万ヘクタール(基準は10年の491ヘクタール)と推計したが、現実はそれ以上のペースで減少。最悪で442万ヘクタールにまで落ち込むケースも想定される。しかし最近は減少ペースが鈍化しているため465万ヘクタールにとどまる場合もあるという。
 生産面の重点取り組みでは、食品産業と農業の連携が目新しい。具体的には、両方を結びつけるコーディネーターの育成や、加工・外食用の需要に対応した産地サイドの取り組み推進などを通じ、食品産業が国産農産物を選ぶようにする。
 担い手による需要に即した生産では、ここでも「経営感覚に優れた担い手」という条件をつけ、その育成へ各種の施策を集中し、また担い手が地産地消や直売などに創意を発揮できる環境を整備する。
 食料供給力(自給力)の基本的な考え方も示した。自給率目標の達成に必要な農地や用水など農業資源の確保、担い手育成、農業技術水準の向上などを図ることは、国民への最低限度必要な食料供給につながるもので、これらの取り組みを通じて食料供給力を確保することが重要ーとした。
 なお金額ベースの食料自給率は基準年の9年度が71%、15年度は70%。

◆自給率の数値で議論 企画部会

 食料自給率目標の「全体像」を議論した企画部会では、JA全中の山田俊男専務が▽カロリーベースで50%以上を目標とするのが基本ではないか▽目標年次は27年度ではなく、5年ごとに基本計画を見直し、検証するために5年後の目標を掲げるべきだ▽国産だけでは不足する主要品目の生産を増やす戦略が必要▽農地だけでなく国土全体の利用も考えた施策が必要ではないか―などを提案した。
 他の生産者委員からも、なぜ目標年次を延ばしたのか、5年目ごとの検証が必要だ、などの疑問や意見が出た。
 しかし農水省は▽実現可能なレベルで目標を設定し、実行していくことが大事。そのために工程管理をする▽長い目で見た施策を打ち出し、その成果を見ながら取り組んでいくために目標年次を10年後とした―などの考え方を示した。
 学識経験者委員の中にも実現可能な目標数値でないと国民の信頼を失わせるとの意見があった。しかし、年次については5年ごととし、毎年検証して問題点を明らかにすべきだ、と生産者と同じ意見を述べた。
 一方、外食産業団体の横川竟委員は▽農業は地産地消では生きていけない。また地産地消は自給率向上にとって余り意味がなく、むしろ学校教育の課題だ▽外食・中食や食品産業の成長に応じた業務用生産の促進が大事だ。業務用なら規格外の野菜でも需要が大きい▽旬の農産物を産地がリレー出荷する新しいシステムをつくるべきだ―などと提起した。
 農水省は“攻めの農業”として定時定量の業務用供給を強化したいとした。業務・加工用農産物の30〜50%は輸入に頼っているためこれを国産に置きかえていきたい考えだ。
 自給力を高める農地の確保については生産者の安澄夫委員(福岡県・JAおんが組合長)が生産性の高い農地面積と、それを保有する担い手の人数を数値化した目標や、また生産コストの低減目標も必要―などと具体的な施策の前提を求めた。
 また消費者の長谷川朝恵委員は、自給率目標を達成できなかったことについて「全体像」は、なぜ管理できなかったのかの問題点に踏み込んでいないと批判。新たな計画では実行していく仕組みが必要とした。
 次回の企画部会は2月10日に開き、基本計画のとりまとめに向けて議論する。

(2005.2.1)


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