農業協同組合新聞 JACOM
   
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国産品販売の補完を品目別に判断
―全農が輸入農畜産物の取扱いガイドライン (3/10)

 子会社・組合貿易の黒豚肉輸入をめぐる問題で農水省から業務改善命令を受けたJA全農は、国産品優先の基本姿勢を日常業務で貫くため「輸入農畜産物取扱ガイドライン」案を3月10日の経営役員会で決めた。29日の総代会を経て、4月1日に施行する。輸入農畜産物の取り扱いを「国産品の取り扱い拡大や安定的な販売などのために必要」と判断した場合に限定し、国産品との競合や地域ブランドへの影響、安全性などを検討した上で取引の可否を決めるという手順を盛り込んだ。また判断の基準や方法などを定めた。
 輸入品取引が必要となるケースの一覧表を掲げ、▽国産品の不足など安定供給が求められる場合▽非遺伝子組み換え作物の輸入など全農の取り扱いノウハウが必要とされる場合▽取引先から輸入品の品ぞろえを求められ、国産品販売を補完する場合▽Aコープ店舗などで顧客ニーズに対応する場合、などを挙げた。
 輸入品取引をする各部門と子会社は、品目別に取り扱い要領をつくり、取引の理由と限定条件などを明確にし、チェックシートで自己点検をし、報告を行う。全国本部は、その結果をとりまとめた取り扱い実態を理事会と経営役員会に報告し、ホームページで一般に情報を公開する。
 取り扱いをやめる輸入品としては▽黒豚肉▽主食用うるち米を挙げた。
 ただし、白豚・牛肉については県本部と子会社ごとに取り扱い実績に差があるため、県別の実態や国産品販売への影響を調査したあと、正式に決める。
 なおガイドラインは、取り扱い要領の対象品目と、そうでない品目を分けた。対象としない品目には国家貿易品目のコメ、小麦、でん粉、トウモロコシ。関税割当品目では製油用の大豆・ナタネなどがある。

◆地区別総代会議でも基本的方向を議論

 全農は、ミニマムアクセス輸入米の安値入札が国内産米価に響くことを牽制したり、取引先の品ぞろえニーズなどに応えて農畜産物の輸入に参入。また国産品保護を目的に関税割当品目を取り扱ってきた。
 このためガイドライン案では輸入品取り扱いが必要となるケースをまとめた。
 取引先から品ぞろえを求められる品目にはバナナとかパパイヤなど国内で生産できないトロピカルフルーツがあり、また、国産品がほとんどない甘栗や羊肉などもある。
 品質の高い国産肉よりも低価格商品を志向する標準的な顧客ニーズに応えるためには輸入牛肉も必要だ。
 こうしたことから、JAグループの中には「国産品販売を補完する全農の輸入農畜産物取り扱いは、ぜひ必要だ」との主張も多い。
 輸入品取り扱いは、もちろん組織決定によって行われており、その事業の縮小や撤退の品目が出ることに頭をひねる向きもある。
 全農の新年度事業計画案を協議する3月上旬の地区別総代会議では、ガイドライン案についても意見を聞いたが、Aコープ店舗を持つJAなどからは「ガイドラインの実施によって国産品まで売れなくなったら困る」とする意見が出た。
 しかし一方では「食料輸入の増大に反対してきた立場から、輸入品取り扱いにはもっと厳しさが必要」といった主張も出るなど、様々だったという。
 「産地と消費地、またAコープや加工場のあるなしなどJAの性格によって意見もいろいろだったが、基本方向でガイドライン案は了承された」と全農の前嶋恒夫参事は語る。
 全農の平成15年度輸入農畜産物取り扱い実績は、ガイドライン対象品目で約350億円。品目は米穀、農産、畜産販売、生活(みそ原料など)などに大別される。
 うち牛・豚肉や主食用うるち米などの取り扱いをやめることによる減少額は約80億円と試算される。

(2005.3.14)



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