(財)日本穀物検定協会は3月25日、KKRホテル東京で第109回理事会を開催し、17年度事業計画等を承認した。
米流通の自由化が進むなかで、政府米の販売数量や米穀検定の取扱量が減少すると見込まれることから、協会の運営も厳しい状況が予想される。また、主要業務である精米表示自主認証業務を本年3月末に廃止、輸入農産物などの検査・検定等の業務も受注競争にさらされることから、17年度の事業収入は前年度を下回ることが予想される。
そのため協会の運営にあたっては▽人員の削減等による経費削減、▽組織の再編整備、▽人材の確保・育成を重点項目として、大幅な見直し・改善を図り、同時に業務量の確保・拡大に積極的に取り組む、としている。
■米の情報システムで消費者の信頼を確保
協会の検査・検定業務は、(1)米穀検定、(2)品質・理化学検定、(3)米の情報提供システム、(4)農産物検査、(5)輸出米およびばら搬出麦類検定、(6)飼料証明、(7)輸入雑穀類検定、(8)包装証明、(9)食品関係、(10)安全性分析、(11)DNA鑑定および理化学分析、の主要11部門を中心に実施しており、17年度の部門別の業務見込みは以下の通りになる。
(1)米穀検定は、米流通の自由化や農産物検査の完全民営化など、米をめぐる状況の変化を考慮し、業務量は前年度を下回る見込み。
(2)品質・理化学検定は、生産者、実需者、物流関係者などから、米の流通形態の多様化に対応し、様々な依頼が増えている。特に、産地における米の安全性、種子生産におけるDNA鑑定等、流通関係者の多様な検定ニーズに積極的に対応する必要から、業務量は前年度を上回る見込み。
(3)米の情報提供システムは、すでに首都圏、関西、西日本などの一部で導入され、注目されている。協会の工場審査が終了し、登録済みの米販売業者と、近々審査が予定されている業者を併せ60業者70精米工場がシステムを稼働させる。
(4)農産物検査の民営化は、13年度から進められてきており、協会も検査機関として登録している。国内産農産物検査の前年度実績は、30都道県で約16万トンだったが、今後も協会の主要業務の一つとして積極的に取り組む。外国産農産物検査は、他検査機関との競合が激しくなっているが、輸入商社に対し積極的な受注活動を行い、検査数量の確保をめざす。
(5)輸出米はほぼ前年度並みの数量、ばら搬出麦類検定は、麦の輸入量がほぼ横ばいで推移していることから、前年度並みの業務量は確保できる。
(6)飼料証明は、BSE問題、鳥インフルエンザ問題などで需要の低迷が続いている。業務量は、飼料工場での生産計画等を考慮し、前年度を若干下回る見込み。
(7)輸入穀物検定は、畜産経営の厳しい環境を反映して輸入数量が低迷している。また、海上運賃上昇など輸入コスト増などを反映して、検定コストの削減要請が求められている状況だが、一層の受注確保に努め、前年度を若干上回る業務量が確保できる見込み。
(8)包装証明は、15年度に自動紙質試験機を導入して、効果的で正確な紙質検査を実施している。今年度の証明数量は、前年度より若干増加すると見込み。
(9)食品関係の登録認定機関については、従来の国の代行機関から民間の第三者機関として認定業務を実施する仕組みに今年度移行する。(独)農畜産業振興機構から委託されている国内産糖検定については、前年度を下回る見込み。
(10)安全分析は、18年度から残留農薬等の規格基準がポジティブリスト制へ移行するのに対応して、中央研究所では多項目の一斉分析法の開発に取り組んでおり、今年度は輸入米麦で予定されている残留農薬項目の分析に対応する。また、アフラトキンなどのカビ毒の分析業務も、積極的に対応する。
(11)DNA鑑定および理化学分析は、東京分析センターにおいて、SNPS法、粉砕法などのバイオ関連の分析業務を中心に、食味分析、成分分析などの理化学分析に迅速に対応する。また、これまで実施しているRAPD法についても、引き続き対応する。今年度の研究所関係の業務量は、前年度をかなり上回る見込み。
■ホームページの内容充実し、情報提供を
調査研究では、農産物、飼料、食品などの品質特性および米の食味の調査研究を行う。稲の生育状況については、引き続き主要産地で現地調査を行うとともに、これらの情報を迅速に提供する。
米の情報提供システムにおける情報提供の一環として提供情報の解説を行い、消費者等からの米に関する問い合わせなどに対応できるよう、協会のホームページの内容を充実・強化する。
食味評価は、ランキング試験のほか、食味評価研究会において食味に関する基礎的な研究を進めるとともに、米の情報提供システムでも食味関係指標の内容を充実させるよう検討する。また、(独)食品総合研究所から委託された「麦類および麦製品のオクラトキシンAの検出技術開発と調査」を実施し、(財)飯島記念食品化学振興財団の助成による「米麦における残留農薬のポジティブリスト制導入に対応した一斉分析法の研究開発」についても、引き続き取り組む。
国際協力では、農水省のODA事業「アジア地域ポストハーベストロス共同調査および技術改善支援事業」を受託し、(独)国際協力機構(JICA)が主催する海外技術者の研修制度のうち「米の収穫後処理技術2コース」の事業運営に協力する。
協会は一昨年、中国国家質量監督検験検疫総局との間で調印した覚書(穀物等農産物の検定技術および情報についての協力と交流)に基づいて、積極的な交流を引き続き行う。また、今後見込まれる中国との農産物貿易の円滑化を図ると同時に、安全性等の検査需要の増大に対応するなどの目的で、今年度、北京市に協会の連絡事務所を開設する。
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