農業協同組合新聞 JACOM
   
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コメ先物で意見対立 経済界などは賛成論 
不正取引とからめて 農水省の食糧部会  (6/17)

 農水省の政策審議会は6月17日、食糧部会を開き、コメ先物の上場検討を始めたが、上場賛成に傾く論調のほうが目立った。同省が提示した資料には、全農秋田県本部と(株)秋田パールライスのコメ不正取引関係がかなり多く、報告も、その問題とコメ先物の二本立てとなり、また議論の入口も秋田問題となった。
 立花宏委員(日本経団連専務)は、米価下落に対して秋田では「架空取引をやらざるをえなかった。商売にはリスクヘッジの手段が必要だが、コメには、その手段がなかったからだ」と事件の背景を論じた。
 また横川竟委員(日本フードサービス協会会長)は「うちの社は、産直で経済連からコメを仕入れているが、難航するのは価格交渉だ。先物相場があれば、それを目安に契約できるし、現在は入札取引制度によって公正な価格が形成されているとはいえないから、そのチェックともなる先物相場はあったほうがよい」との意見だった。
 他の委員からも「これからは現物と先物の2つの市場を機能させていくことが必要」との意見が出た。
 これに対し、生産者の峰島歌子委員(JA全国女性協前会長)は「おコメまでも先物商品にするのか。投機をコメの世界に入れてよいのか。全国の集落で水田農業ビジョンを立てている時に、こんな話が出てきては困惑するばかり。憤りを感じる。米価を安定させ、おコメを作って、農家が食べていける農政にするために時間をかけて検討すべき」と真っ向から反論した。
 また同省の生産調整研究会が14年に「将来は(先物取引)導入の可能性を排除すべきではない」と中間まとめをしている点をついて山田俊男委員(JA全中専務)は『将来』とは「どういう状況をいうのか。生産調整や国境措置がなくなった時をいうのか」と基本的な問題を投げかけた。
 さらに山田委員は「米国では先物取引が自由だというが、農産物の価格変動に対しては、直接支払いを実施し、最低価格支持などもしている。その辺をよく議論すべきだ。また先物取引がリスクヘッジの機能を果たしているのかどうか、日本ですでに上場されている商品についても検証する必要がある」と反論した。
 しかし賛成派の加倉井弘委員(経済評論家)は「投機があるから、リスクヘッジをしてはいけないというのは本末転倒。先物取引はやったほうがよいと思う」などと主張した。
 このほか秋田問題では経済界などから▽集荷業者間の競争があるため、JAは米価が下落したから仮渡金を減らすとはいえない。これが事件の背景だ▽県本部と子会社の兼務人事は禁止されたが、出資関係の一心同体も見直してはどうか。どちらかが入札取引から降りてはどうか▽独占的で圧倒的なパワーを持ったプレーヤー(事業者)がいると自由な市場は成立しない−などの発言があった。
 これに対し農水省は▽全農と子会社の間の取引は、より厳重にチェックする▽価格形成センターのプレーヤーは限られている。単協がもっと参加するように改革したい▽同センターは機能不全だが、これに代わるものがないので、規制を減らし、きちんとした市場に育つよう措置している−などと説明した。
 次回の食糧部会は7月に18年産米の生産目標数量配分の基本的考え方などを審議するが、時間を延長して穀物商品取引所関係者から先物取引についてヒアリングする。また9月も部会審議を機会に生産者団体から意見を聞く。10月は卸売業者、11月は小売・外食事業者から聞く予定。

(2005.6.20)


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