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農政.農協ニュース |
懸案のIPMをテーマに病害虫防除フォーラム −農水省・植物防疫全国協議会 (6/20) |
IPMとは、あらゆる適切な病害虫防除技術を相互に矛盾しない形で使用し、経済的被害を生じるレベル以下に病害虫の発生を減少させ、それを維持するための病害虫の管理システムをいう。 現状は、IPM推進に必要な病害虫防除技術は一定程度確立され、農業現場へも一定程度普及している。 しかし、化学農薬の使用回数削減のみを目標とした場合、病害虫の発生状況によっては、コスト・労力面で現場に過重な負担を強いるおそれがあるほか、化学農薬の使用を回数のみに着目すると、環境に配慮した散布方法やドリフト(飛散)しにくい剤型の使用、選択性の高い農薬の使用などの取り組みを評価できないという問題もあり、適切な評価尺度づくりが求められていた。 このため、農水省ではIPMの定義および目的、基本的な実践方法、実践指標策定上の留意点、実践指標に基づく具体的推進方策の実践指標のモデルなどを内容とする実践指針を作成した上で、都道府県に提示していくことにした。 実践指標は、将来的にはハイレベルな環境保全の実現を目指す農業者育成に向けた支援策の要件としての活用も視野に入れている。 IPMの基本的な実践方法としては、(1)輪作、抵抗性品種の導入や(土着)天敵などの生態系が有する機能を可能な限り活用することなどにより、病害虫・雑草の発生しにくい環境を整えること、(2)病害虫・雑草の発生状況の把握を通じて、防除の要否およびそのタイミングを可能な限り適切に判断すること、(3)(2)を受け、防除が必要と判断された場合には、病害虫・雑草の発生を経済的な被害が生じるレベル以下に抑制する多様な防除手段の中から、適切な手段を選択して実施すること、を基本としている(図)。 実践指針策定に向けて、昨年11月に農水省消費・安全局植物防疫課にIPM検討会(中筋房夫座長・岡山大学農学部教授)が設置され、水稲でのIPMが議論されてきたが、もっとも白熱したのは、「生態系が有する病害虫および雑草抑制機能」だった。有効な農薬であれば幅広く使用を認めるべきで、そのほうが経済的で効果的な防除ができ、結果的に環境に放出される化合物の量も減らせるという主張と、用いるべき農薬は生態系が有する抑制機能に悪影響をおよぼさないものに可能な限り制限するべきという主張で対立した。 フォーラムでは、『水稲害虫のIPM技術』(九州沖縄農業研究センター・荒井治喜室長)、『茨城県における水稲IPMの現状と課題』(茨城県農業総合センター・横須賀知之主任研究員)、『山形県における水稲IPMの実践について』(山形県病害虫防除所庄内支所・上野清専門防除員)の3つの事例が報告された。
総合討論の座長をつとめた岩野正敬(社)日本植物防疫協会技術顧問は、「IPMの概念において、農水省は一歩踏み出したと思う。今後は都道府県の実践にかかっている。このフォーラムが、ハードルの一つを越えるものであってほしい」と総括した。 検討会は6月7日、IPM実践指針(案)としてIPMの今後の目指すべき方向性を打ち出した。既に6月17日からパブリックコメントの受付が開始されており(受付期間は1カ月)、細かい調整が行われた上で策定される。 |
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(2005.6.20) |
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