農業協同組合新聞 JACOM
   
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2005年日本生協連「第21回全国産直研究交流会」より
進むか、青果物産直 「品質保証システム」への挑戦 (2/4〜5)

◆産直に統一基準を導入

  さる2月4〜5日、日本生協連恒例の生協産直研究交流会が都内で開催された。存在感の大きな交流会である。今年は昨年の問題提起を踏まえて「生協の青果物品質保証システムの構築に向けて」という具体策が提案された。産直事業委員会(深澤米男代表委員)の説明によれば、この間の経過は、
(1)「生協農産・産直基準2001年版」の策定・提案(2001年)
(2)「原産地点検システム(手法)」の策定(2002年)
(3)「農産事業改革の提案」(2003年)
(4)「青果物品質保証システムの開発提案」(2004年)
である。農産物全体ではなく、あえて青果物産直に的を絞った。食品の大分類である米、食肉、乳製品をひとつに集約する愚を止めた結果である。良いことだ。
 さてその中心システムはなにか。委員会提案によれば、ISO9001の品質管理システム、欧米由来の適正農業規範(GAP)などを参考にした策定提案になった。要約すると次の4点である。
(1) 規格・基準の決定:おいしさ、鮮度、安全性などを加えて品質の規格、基準を作成する
(2)生産と流通の管理:生産、加工、流通の各段階の管理点を点検・確認するトレーサビリテイの仕組みをつくる
(3)認証:第3者認証、公開認証などによって、上記を評価する
(4)以上を生協に共通の標準として「産直基準統一フォーマット」(別紙)にする
 提案された方針は、今年度から特定単位生協で部分的に実施され、実証内容を点検しながら、4年後を目処に最終決定するという。
 以上の提案は、今後生協の各現場、各段階で多く討議、検討されるだろう。さしあたって論点を提示しておこう。

◆課題は「適正農業規範」準拠で良いか

 青果物の品質保証そのものに関する。「適正農業規範(GAP)」という、なにごともルール化する西欧流儀に学ぶだけか。営農伝統は「適地適作」である。それ以上のルールはなかった。当日北海道JAふらのの産地側報告があった。4年前広域合併した典型的産直先駆例である。生産高280億円の過半を青果物が占める。毎年の価格乱高下に対応する様子を、にんじん、にんじんジュースを例に報告した。しかも標高差を踏んで、収穫期が異なるという。結局、報告は産地を知ってもらいたいということに尽きた。だとすれば、品目別営農体系が価格変動を越えて、どう定着するかが先ず注目されよう。適正農業規範以前のことになる。これが都市近郊産地なら目先の価格動向に左右される。それらをどう適正農業に配慮していくか。環境問題がそこにはある。ただし規範だけ一人歩きし、産地が消えることになったらどうする。現に露地野菜でこの40年繰り返してきた産地移動が証明済みだ。
 青果物の多様性を前提にしたと、中嶋博康・東大大学院助教授(システム作業部会員)が言うから危惧に過ぎなければ良い。
 すでに21回目の交流会である。かつて1980年代、生協・農協らの協同組合間提携協議会があった。各全国連、各地協同組合に組織された。そこでは産直事業は中心課題だった。私が関わった経験から、今回のような提案に全農、全中など農協側関係者から十分意見反映されることが望ましい。ことは輸入青果物に太刀打ちする産直事業の攻撃的対応のことだからだ。

(財)協同組合経営研究所 元研究員 今野 聰

(2005.2.10)


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