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全体的にレベルアップ 入賞者の表彰式を開催
第16回バケツ稲づくりコンテスト表彰式―JA全中主催

 JA全中が主催する「第16回バケツ稲づくりコンテスト」表彰式が2月19日、虎ノ門パストラル(東京都港区)で開催された。
 JA全中は、未来を担う子どもたちが身近なところで稲を育てることを通して、お米や稲作文化に対する理解を深めてもらうことを目的に、平成元年度からバケツで稲を育てる“バケツ稲づくり”を実施している。2年度からは、観察ノートを中心とした栽培・観察記録や、お米・稲作などについてまとめた作品を募集し、その成果を競う「バケツ稲づくりコンテスト」を始めた。昨年の春、種もみ・肥料・観察ノート・バケツ稲づくりマニュアルがセットになった小学生以上用と、種もみ・肥料・バケツ稲づくりワークブックがセットになった幼稚園児・保育園児用の『バケツ稲づくりセット』併せて50万セットを全国で配布した。
 今回は個人の部に1450点、団体の部に106点の応募があった。1月19日に最終審査会が開かれ、個人の部、団体の部の文部科学大臣賞、農林水産大臣賞、JA全中会長賞など各賞の受賞者が決まり、表彰式を迎えた。

◆年々作品がレベルアップ、
 稲作りを通して食育を実践

森澤重雄 JA全中食料農業対策部部長 宮内健二 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育企画室室長
森澤重雄
JA全中食料農業対策部部長
宮内健二
文部科学省スポーツ・
青少年局学校健康教育課
健康教育企画室室長
 表彰式は各賞受賞者が参加し、午前11時から始まった。主催者を代表して、森澤重雄JA全中食料農業対策部部長が挨拶に立ち、「今年で16回目を迎え、多くの作品が寄せられたのと同時に、年々作品の質が高くなっており、入賞者を選ぶのに苦労しました。バケツ稲づくりセットを全国で50万個配りました。稲を育てる、命を育てることは、大変な苦労をし、愛情を注ぐ必要があります。いま、食育ということが盛んに言われていますが、このコンテストでは、種籾から稲を育て、刈り取り、精米してお米になり、それを美味しく食べる、まさに食育そのものだと思います。今日はバケツ稲づくりで同じ体験、苦労した全国の皆さんが来ています。同じ思いを語り合い、是非友達をつくってください。そして、学校に帰ったら、今日のことを友達に話し、稲づくりのことを話してください」と述べ、また来年の応募を呼びかけた。
島田純 農林水産省総合食料局食糧部消費流通課課長
島田純
農林水産省総合食料局
食糧部消費流通課課長
 その後、コンテストを後援している文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課健康教育企画室室長の宮内健二氏、農林水産省総合食料局食糧部消費流通課課長の島田純氏が、それぞれ挨拶をした。宮内健二氏は、「食べ物に関することを、もっと学校で教えていくことを考えており、今年の4月から専門の栄養教員を置きます。我々が米を食べてきた歴史は長く、皆さんも稲を育てることで、米や稲作のことを考えるようになってほしいと願っています」と、ご飯をしっかり食べることの重要性を、源氏と平家の歴史に重ね分かりやすく語った。また、島田純氏は、「ご飯を中心とした日本型の食事は、今世界から注目されています。食育は農水省としても重要なテーマとして取り組んでいます。米は我々みんなが食べられる量を、日本で作ることができます。2000年前から日本列島では稲作が行われており、水田の美しさは、皆さんも良く知っていると思います。ご飯を好きになり、水田や農業のことに関心を持ってください」と述べ、ご飯食の普及拡大を訴えた。両名の挨拶に続いて、審査委員長の津幡道夫氏(全国小学校理科研究協議会会長・東京都中野区立神明小学校校長)が審査講評を述べ、各賞受賞者の質の高さを誉めた。

【作品紹介】

個人の部《総合》

文部科学大臣賞

古川花菜子さん

 お祖父さんが米作りを行っているので、いろいろなことを聞き、自分の米づくりに生かした。研究の動機、祖父の米作りの歴史、調べる内容とその方法、観察(種まきから稲刈りまで)、収穫(脱穀から精米まで)、炊飯・試食など項目ごとに写真や図・グラフなどを使い、稲の成長の過程が具体的に示されている。

農林水産大臣賞

橋立佳央理さん

 バケツ稲づくりは、今回が2回目の挑戦となる。「私の八十八の手間」と題したノートを、種もみからおにぎりにして食べるまで、ほぼ毎日記録している。写真などをふんだんに使った「棚田新聞」も発行し、棚田の研究や観察も行った、バケツの中の『藻』を除くためにタニシに食べさせるなど、工夫して稲を育てたことがうかがえる。

JA全中会長賞

小幡翔平・隼也さん

 兄弟で力あわせ、「絶対に豊作にしてみせる」と決心して、2回目の挑戦を始めた。ひとめぼれ、日本晴、ヒノヒカリ、あきたこまちと品種別の成長の違いを記録した。父親の転勤をきっかけに、寒い地方と暖かい地方の米の育ち方の違いを観察し、折れ線グラフで表した。お米新聞にまとめて、読む人が楽しめるよう工夫している。



お米・ごはん賞

渥美知子・美里・翔矢さん

 親子3人で課題を持って観察し、グラフなどにまとめて、分かりやすく表現している。日なたに置く、日影に置く、家の中に置く、など稲は日当たりの影響をどのように受けるか、条件を変えたバケツ10個を観察し、収穫量を比較している。お米料理をいろいろ作り、みんなで食べた。お菓子もできるお米料理の豊富さに驚き、お米を見直した。

特別賞

村中澄怜さん

 安全でおいしい米づくりをめざし、生ごみたい肥、稲わらたい肥、もみがらたい肥、けいふんと米ぬか、化学肥料、と5種類の肥料のバケツ稲を用意した。予想をたてて、稲を育て、その結果を観察している。稲づくりの視点を、肥料と生育の関係に絞って比較した。結果の違いも、その原因を追求し、具体的で分かりやすい。

◆入賞者に賞状とメダルなどを授与

 表彰式に入り、文部科学大臣賞、農林水産大臣賞、JA全中会長賞、お米・ごはん賞、が、個人1名、団体1校に送られ、特別賞が個人1名に送られた。また、金賞が個人4名、団体4校に、銀賞が個人3名、団体4校に送られた。
 受賞者は壇上に上がり、森澤重雄JA全中食料農業対策部部長はじめ審査委員からそれぞれ賞状とメダルまたはトロフィーが手渡された。当日は、銀賞以上の受賞者が出席した。入賞者は以下の通り。

【個人の部】

《総合》
○文部科学大臣賞 古川花菜子(福島県) 小6年
○農林水産大臣賞 橋立佳央理(新潟県) 小3年
○JA全中会長賞 小幡翔平・隼也(奈良県) 小6・4年
○お米・ごはん賞 渥美知子・美里・翔矢(静岡県) 母・中1・小4年
○特別賞 村中澄怜(富山県) 小5年

《小学生低学年の部》
○金賞 加知瑞歩(岐阜県) 3年
○銀賞 伏見啓正(岐阜県) 3年
○奨励賞 鈴木菜都美(山形県) 3年、橋立和憲(新潟県) 1年

《小学生高学年の部》
○金賞 菅野美香(福島県) 5年
○銀賞 佐藤杏樹(東京都) 5年
○奨励賞 高梨悠也(千葉県) 5年、北村優太(茨城県) 6年

《共同作業の部》
○金賞 神谷大輝・沙亜乃(三重県) 小6・小4年
○銀賞 鈴木かずみ・なるみ(神奈川県) 母・小3年

《その他の部》
○金賞 盛山小雪(鳥取県) 一般


【団体の部】

《総合》
○文部科学大臣賞 いなべ市立笠間小学校6年(三重県)
○農林水産大臣賞 北区立滝野川第六小学校6年(東京都)
○JA全中会長賞 桑折町立睦合小学校5年(福島県)
○お米・ごはん賞 南郷村立南郷第一小学校3年(福島県)

《小学校低学年の部》
○金賞 岐阜大学教育学部附属小学校3年(岐阜県)
○銀賞 富士市立吉永第二小学校3年(静岡県)

《小学校高学年の部》
○金賞 市川町立川辺小学校5年(兵庫県)
○銀賞 黒磯市立東原小学校4年(栃木県)※
※黒磯市の合併により1月1日から那須塩原市立東原小学校となった。
○奨励賞 長久手町立南小学校5年(愛知県)

《共同作業の部》
○金賞 温泉津町立湯里小学校5・6年(島根県)
○銀賞 敦賀市立葉原小学校3・4年(福井県)
○奨励賞 仁摩町立仁摩小学校ひばり学級(島根県)、山梨県立あけぼの養護学校2・6年(山梨県)

《その他の部》
○金賞 学校法人緑ヶ丘幼稚園年長組(静岡県)
○銀賞 いずみ保育園年長組(福島県)
○奨励賞 社会福祉法人納所保育園4・5歳児(佐賀県)、福栄村立福川保育園年長組(山口県)

テーマを決め、独自の目で観察を
―審査を終えて―

津幡道夫 審査委員長
津幡道夫 審査委員長
 審査委員長の津幡道夫氏に、審査を終えて感じたこと、全体の作品の印象について聞いた。
 「小さなバケツの中で育てた稲から、多くの自然現象を見つけて驚き、楽しんでいる様子が、どの作品からも伝わってきて好ましく思いました。50万セットを配って、応募が1556点です。稲を最後まで育てることは難しく、お米が収穫できた人はそんなに多くなかったのではと考えています。ですから、稲を最後まで育て、米を収穫できた人は、それだけで評価できます。日当たり、肥料の量、気温の違い、品種の違いなどいろいろ条件を変え、工夫しながら稲を育てている真剣な様子が分かりました。作品の質は年々高くなっており、選ぶのに苦労しました」。
 来年度に向けては、「稲が育つそれぞれの段階ごとに、各自が観察するテーマを決め、独自の目で稲の生長を記録するような作品を期待しています。同時に、稲づくりを通じて食べ物や農業などについて考えたことを発表してほしいと思います」と語った。また、来年度は今年度以上の応募があることを期待しているとも語った。
表彰式を終えて記念撮影
表彰式を終えて記念撮影

(2005.2.24)



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