農業協同組合新聞 JACOM
   
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揺るぎない信頼確保へ 中期戦略の実践を誓う
第4回JAバンク全国大会 (2/18)

 JAバンクの第一線で優れた業績を挙げているJAと、役職員の功労を称え、一層の事業発展に向けて決意を新たにする第4回JAバンク全国大会(農林中央金庫主催)が2月18日、東京・赤坂プリンスホテルで開かれ、表彰式の後、受賞者ら約200人が「JAバンク中期戦略」の実践を誓う大会宣言を力強く採択した。大会宣言では、ペイオフ全面解禁を目前に、JAバンクの揺るぎない信頼性確保のため、財務の一層の健全化を進めるとともに▽JAバンクローンの伸長▽店舗再構築▽農業担い手金融の強化などに取り組む、こととされた。

◆第一線の功績称えて
 一層の健全化を宣言

 大会では、農林中金の上野博史理事長が、あいさつの冒頭で受賞JAおよび受賞者の長年の努力に心からの敬意を表し、感謝の言葉を述べた。
 JAバンクの課題については、財務の一層の健全化と、信用事業体制の整備を「促進していきたい」とし、中期戦略に掲げた▽ローン伸長による収益力増強策▽店舗再構築による効率化策▽担い手金融強化などによる顧客基盤拡充策の実践でJAバンクの「安定的な収支構造を構築していく必要がある」とした。
 そして「この数年間は、対応が遅れた場合、ばん回不可能な立場に立たされかねない正念場の期間」と強調。また「地域特性に応じた競争力あるJAバンク独自の収益ビジネスモデル」の構築も提起した。
 来賓祝辞ではJA全中の宮田勇会長が「ペイオフ全面解禁まで、あとわずか」と指摘、JAの財務健全化のため「全中としてもJA全国監査機構による全JAの監査実施や、JAバンクとの連携に鋭意取り組んでいる」と報告した。
 さらに「JAバンクシステムの実効性向上により信用事業の利益を確保してJAグループの経営基盤を確立するとともに、利用者サービスの向上に取り組んでほしい」と訴えた。
 次いで、中期戦略の実践などで優れた業績を挙げた39JAに表彰状が、またJAバンクの発展に尽くした功労者42人に感謝状が、それぞれ上野理事長から贈られ、盛大な拍手で、その栄誉を称えた。
 続いて、JAバンクのイメージキャラクター岡本綾さんのあいさつと、プロ野球解説者・豊田泰光さんの記念講演があった。
大会宣言を読むJA山形市の大築賢祐組合長
大会宣言を読むJA山形市の大築賢祐組合長
 このあと、大会宣言起草小委員会の委員長であるJA山形市の大築賢祐組合長(功労者表彰の受賞者)が起草経過を報告のあと、宣言文を読み上げ、満場の拍手で大会宣言を採択した。
 閉会あいさつでは、農林中金の佐藤純二専務が「JAバンクが一体となって収益力の向上に努めるとともに、組合員と地域に安定的なサービスが維持できるように体制を整備し、これを通じて選ばれ続けるJAバンクを目指し、大会宣言の実行にまい進することを誓いたい」と締めくくった。

◆課題は金融の「活力」

 大会宣言は冒頭で、系統信用事業は、「JAバンクシステム」による破綻未然防止と、一体的事業推進の取り組みによって組合員の信頼を確保してきた――とうたい、ペイオフ全面解禁に対する自信のほどをうかがわせた。
 JAバンクは、これまで経営改善を要するJAに対する指導と支援や、JAバンク支援基金の増強など信頼性の向上に向けて力を注ぎ、手を打ってきた。
 そうした取り組みが、2%(16年度)という個人貯金の順調な伸び率につながっているとされている。収益力向上の柱であるローン伸長では、住宅ローンが前年対比10%を超える伸びを維持しており、これも信頼の証しと考えられる。
 上野理事長は「弛まぬ改革の成果が実現している」中で、今年の大会が開催された――と大会の意義を指摘。そうした面からも、先頭に立って活動してきた受賞者たちの功績は大きい。
 しかし金融庁が昨年末に発表した「金融改革プログラム」で、金融の「安定」から「活力」への転換を打ち出した。規制緩和も一段と進み、他業態も交えた激しい競争がさらに続く。
 このため、上野理事長は「この数年間は…正念場の期間」とした。選ばれ続けるJAバンクを目指す大会宣言の実行が期待される。

【表彰された方々】
優績JA表彰
栄えの表彰を受ける受賞者
栄えの表彰を受ける受賞者
 〈北海道・東北〉
 ▽北海道・JAめまんべつ
 ▽青森県・JA黒石市
 ▽岩手県・JA新いわて
 ▽宮城県・JAみどりの
 ▽秋田県・JAあきた白神
 ▽山形県・JA真室川町
 ▽福島県・JA新ふくしま
 〈関東・甲信〉
 ▽茨城県・JA水戸
 ▽栃木県・JA安佐
 ▽群馬県・JA佐波伊勢崎
 ▽埼玉県・JAあさか野
 ▽東京都・JA東京むさし
 ▽山梨県・JAフルーツ山梨
 ▽長野県・JA松本ハイランド
 〈北陸・東海〉
 ▽新潟県・JA越後ながおか
 ▽富山県・JAあおば
 ▽石川県・JA金沢中央
 ▽福井県・JAたんなん
 ▽静岡県・JAなんすん
 ▽岐阜県・JAにしみの
 ▽愛知県・JA愛知東
 ▽三重県・JA三重南紀
 〈近畿〉
 ▽滋賀県・JA西びわこ
 ▽京都府・JA京都にのくに
 ▽大阪府・JA北河内
 ▽兵庫県・JAみのり
 ▽和歌山県・JA紀の里
 〈中国・四国〉
 ▽島根県・JAやすぎ
 ▽広島県・JA安芸
 ▽山口県・JA山口宇部
 ▽徳島県・JA東とくしま
 ▽高知県・JA土佐れいほく
 ▽愛媛県・JA愛媛たいき
 〈九州・沖縄〉
 ▽福岡県・JA福岡市
 ▽佐賀県・JA神埼郡
 ▽熊本県・JAやつしろ
 ▽大分県・JA別府市
 ▽宮崎県・JA宮崎中央
 ▽鹿児島県・JA南さつま

【功労者表彰】
(感謝状贈呈)
 〈北海道・東北〉
 ▽北海道・JAきょうわ・萬ア一司組合長
 ▽青森県・JAおいらせ・佐藤政八組合長
 ▽岩手県・JA新いわて・伊藤萬常務
 ▽宮城県・JAみやぎ登米・白石和夫常務
 ▽秋田県・JAあきた湖東・勝田誠組合長
 ▽山形県・JA山形市・大築賢祐組合長
 ▽福島県・JA東西しらかわ・岩谷好組合長
 〈関東・甲信〉
 ▽茨城県・JA岩井市・石塚馨組合長
 ▽栃木県・JAはが野・古沢利一常務
 ▽群馬県・JAぐんまみどり・橋場正和組合長
 ▽埼玉県・JAふかや・江原和郎組合長
 ▽東京都・JA東京みどり・臼井勉組合長
 ▽神奈川県・JA横浜・志村善一組合長
 ▽山梨県・JAふえふき・志村典夫代表理事常務
 ▽長野県・JAながの・伊藤洋一組合長
 〈北陸・東海〉
 ▽新潟県・JA越後さんとう・山田誠二副組合長
 ▽富山県・JAなのはな・室井敏雄代表理事専務
 ▽石川県・JA根上・又村一夫組合長
 ▽福井県・JA越前丹生・原正美専務
 ▽静岡県・JAしみず・杉山廣行金融部長
 ▽岐阜県・JAぎふ・栗本弘組合長
 ▽愛知県・JA尾張中央・河田峯雄組合長
 ▽三重県・JA三重四日市・寺尾正組合長
 〈近畿〉
 ▽滋賀県・JA湖東・廣田繁男組合長
 ▽京都府・JA京都市・溝川幸雄組合長
 ▽大阪府・JAたかつき・竹中繁治専務
 ▽奈良県・JAならけん・吉田政憲常務
 ▽兵庫県・JA日の出・石田正組合長
 ▽和歌山県・JAありだ・西岡昭次代表理事専務
 〈中国・四国〉
 ▽島根県・JA隠岐・松本福二組合長、同県・JA島根おおち・右田周作組合長
 ▽広島県・JA福山市・纉c保組合長
 ▽山口県・JA山口大島・平井昭輝組合長
 ▽徳島県・JA里浦・戸井豊治組合長
 ▽高知県・JA土佐あき・窪田勲組合長
 ▽愛媛県・JA松山市堀江・石丸定夫組合長
 〈九州・沖縄〉
 ▽福岡県・JA福岡市東部・田中弘文常務
 ▽佐賀県・JA神埼郡・森嘉明組合長
 ▽熊本県・JAくま・守屋芳明組合長
 ▽大分県・JA杵築市・廣石良幸信用共済部長
 ▽宮崎県・JA尾鈴・中津克司常務
 ▽鹿児島県・JAさつま日置・松ア俊明組合長
上野理事長から賞状を贈り、受賞者の功績を称えた表彰式
上野理事長から賞状を贈り、受賞者の功績を称えた表彰式

大会宣言

 我々JAバンクは、金融機関の淘汰・再編が進む中、永年にわたる協同組織としての連帯と、「JAバンクシステム」による破綻未然防止および一体的事業推進の取組みにより、我が国金融システムにおいて一定の地位と組合員の信頼を確保してきた。
 一方、ペイオフ全面解禁を目前にして、金融システム全体としては、不良債権問題への緊急対応から、将来の望ましいシステムを目指す未来志向へと転換しつつある。
 こうした中、我々が将来にわたって確たる地位を築くためには、財務の一層の健全化をすすめるとともに、地域特性に応じたローン伸長、店舗再構築、農業担い手金融などに着実に取組み、JAバンク独自の収益ビジネスモデルを確立していくことが必要である。我々JAバンクは、これらの施策を組み込んだ「JAバンク中期戦略」を着実に実践し、我が国農業の発展と地域への貢献という基本的使命を果たすことを誓い、以下のとおり宣言する。
 1 ペイオフ全面解禁後も、JAバンクの揺るぎない信頼性確保のため、財務の一層の健全化と信用事業実施体制の整備に取組む。
 2 JAバンクローンの伸長と、店舗再構築戦略の着実な実践により、JAバンク中期戦略における経営数値目標を達成し、安定的収支構造を構築する。
 3 「新たな食料・農業・農村基本計画」も踏まえ、農業担い手金融の取組みを強化し、JAバンクとしての機能発揮に努める。
 併せて、高齢者・年金受給層サービスの充実、相続・遺言関連業務への取組み等により顧客基盤の拡充を図る。
 平成17年2月18日
 第4回JAバンク全国大会

◆岡本綾さんも祝辞

岡本綾さん(写真右)のトークのひととき=18日、JAバンク大会で
岡本綾さん(写真右)のトークのひととき
=18日、JAバンク大会で
 大会の会場には、JAバンクのイメージキャラクターとしてテレビCMなどでおなじみの女優岡本綾さんも駆けつけて花を添えた。祝辞の後、表彰を受けたJA役職員らと一緒に記念写真に納まったりもした。
 岡本さんは3年前からJAバンクのCM出演やポスター撮りなどを続け、女優の仕事も多いため「充実した3年間でした。これからも長いおつきあいをお願いします」などと語り、笑顔を絶やさなかった。

◆記念講演「勝利の条件」とは?
 豊田泰光さん

 今大会の記念講演には、プロ野球解説者の豊田泰光さんが登場した。水戸商遊撃手として甲子園に出場。プロ入りして西鉄ライオンズ(現西武)と国鉄スワローズ(現ヤクルト)で活躍した。“サムライ豊田”とあだ名され、チャンスにめっぽう強かった打者として知られる。1969年に現役を引退し、近鉄コーチを経験後、評論活動に入った。
 この日の演題は「勝利の条件」。サブタイトルは「チームは勝つために何をすべきか」。豊田さんは、その長い球界歴をもとにユニークな持論を語り、聴衆を引きつけた。

あいさつ
農林中央金庫 上野博史理事長

ここ数年が正念場

 第4回JAバンク全国大会の開催にあたり、日頃からのJA役職員の皆様方の熱意と長年にわたるご努力に対しまして、心より敬意を表します。また、関係機関の皆様のJAバンクへのご理解・ご協力に対しまして厚くお礼申し上げます。
 本大会は、JAバンクの第一線で、日夜ご尽力いただいておりますJAおよび役職員の皆様方のご功労を称えますとともに、JAバンクの一層の発展を目指し、関係者一同の決意を新たにすることを目的に開催するものです。
 本大会の前身で、昭和28年よりスタートいたしました「農協貯蓄推進全国大会」から通算しますと、今回で52回目を数える歴史のある大会となっております。
 JAグループおよびJAバンクが内外情勢の激しい変化に直面する中で、本大会の開催が今年も実現しましたことは、JAグループ関係者が固い絆で結ばれ、弛まぬ改革の成果が実現している所以であり、喜びにたえない思いであります。
 なお、皆様ご承知のとおり、昨年は、新潟県中越地震をはじめ、度重なる台風上陸など天災が続き、亡くなられた方々や、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興をご祈念申し上げます。
 さて、せっかくの機会でございますので、私ども農林中央金庫および最近のJAバンクを取り巻く情勢につきまして、簡単にふれさせていただきます。

◆金融情勢について

 まず、金融情勢についてであります。昨年の年末に金融庁が公表した「金融改革プログラム」は、従来の「金融再生プログラム」の次の2年間(17・18年)の改革の道筋として示されたものですが、不良債権問題への緊急対応から脱却し、未来志向の局面に転換しつつあるとの認識のもと、「金融システムの安定」重視から「金融システムの活力」重視に舵をきったものとなっております。
 この中で地域金融機関に対しては、(1)事業再生や中小企業金融の円滑化、(2)リスク管理能力・事業評価能力・収益管理態勢の向上等を通じた健全性の確保、収益性の向上、(3)地域利用者の利便性向上を図るための地域特性等を踏まえた個性的な計画策定等を求めております。
 また、金融庁では、規制改革の一環として、平成16年度中に銀行代理店にかかる諸規制の緩和を行うこととしております。これが実現すれば、集客力のある他業界からの参入が予想され、顧客の利便性が大幅に向上する一方で、他業態も交えた激しい競争は避けられない事態かと存じます。

◆農業情勢について

 次に農業情勢についてであります。皆様ご高承のとおり、現在、東アジアの各国とは自由貿易協定や経済連携協定に向けた検討や交渉が進められているほか、膠着状態にあったWTO農業交渉についても本年12月の香港閣僚会議に向けて交渉が本格化する見通しとなっております。
 こうしたなか、政府は、この3月に「新たな食料・農業・農村基本計画」の閣議決定を行うことを予定しており、食料自給率の目標を始め、各種施策の対象を担い手に集中化・重点化することにより農業の構造改革を進める方針等が盛り込まれる見込みであります。

◆厳しい情勢に対応

 JAグループにおきましては、一昨年に開催された第23回JA全国大会において、折しも本大会の第1回である昭和28年当時の「再建整備期以来の未曾有の危機」との認識の下に、経済事業改革をはじめとするJAの事業・経営全般に渡る改革を断行しているところであります。
 JAバンクといたしましても、このような業態間および他業態も巻き込んだ金融・農業の厳しい情勢に適切に対処するためには、まず第一に、ペイオフ全面解禁後もJAバンクの揺るぎない信頼性確保に向けて取組むことが必要となります。将来に渡って確たる地位を築くために、財務の一層の健全化と体制整備を促進していきたいと考えております。
 第二に、「JAバンク中期戦略」で掲げているローン伸長による収益力の増強策や店舗再構築による効率化策、農業の担い手金融機能強化等による顧客基盤拡充策を着実に実践し、安定的収支構造を構築していく必要があります。

◆新たな戦略も検討

 また、こうした取り組みに加えまして、今から将来に向けた戦略を検討していくことも重要となってまいります。この数年間は、系統の対応が遅れた場合に、挽回不可能な立ち場に立たされかねない正念場の期間であり、JASTEMシステムのもとに、地域特性に応じた競争力あるJAバンク独自の収益ビジネスモデルを構築していく必要があろうかと考えております。
 最後になりましたが、本日の大会が、JAバンクの将来にわたる安定的かつ持続的発展の契機となりますことを祈念いたしまして、ご挨拶とさせていただきます。

(2005.2.24)



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