自由貿易協定(FTA)に備えて花の自給率を守る必要があるとか、米価の下落で新潟では花づくりが増えたといった検討会の議論を経て、農水省はこのほど「花き産業振興方針」をまとめた。花生産は農業生産額の6%以上。小売まで含めた産業規模は1兆2000億円。しかし中国、マレーシア、コロンビアなどからカーネーション、キク、バラなどを中心に切り花の輸入が増えている。需要量は平成12年前後をピークに横ばい、または微減傾向だ。とくに業務用が減り、家庭用の割合が高まっている。
新方針は家庭の需要に応える工夫が必要とした。切り花では現在、茎の長さは業務市場向けの80cmが主流だが、これを家庭で飾りやすい65cm以下にすることを促す。これなら業務用にも応えられるという。
長い茎は生産コストが高くつく。短くして作付回数を増やし、密植で収穫本数を増やせば1本あたりのコストを下げられる。近年はキクなどで、この短茎多収栽培技術が開発されつつあるため、これを推進して収益性を高める方針だ。
また出荷団体としては共同選花場の整備など省力化を進めることを提言した。
鉢ものや花壇用苗ものでも家庭需要に合わせた品種や姿形の生産を推進する。さらに▽差別化やブランド化▽オリジナル品種の作出▽輸出拡大▽バケット低温流通など品質管理の推進などを挙げた。
花生産では、すでに主業農家が産出額の9割を生産し、主業農家の約3割が認定農業者となっているが、今後はさらに担い手への重点的な施策を展開する。
方針は10年ほど先を見通したが、27年の花の需要は15年対比で8%増、生産も輸入増加の流れを克服すれば8%増、また作付面積は7%増の4万5000haと見通した。
経営指標としては、規模40aの家族経営でスプレーギクを作った場合(短茎多収栽培)、雇用者を入れた総労働時間5200時間として粗収入4300万円、主たる従事者1人の所得は650万円を掲げた。
◆輸入増加にらんで議論
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日本の花づくり技術は高いが、
輸入品もまた安くて、しかも高品質に… |
花の振興方針は学識経験者やJA、業界関係者らによる検討会で議論したが、まとまるまでには「切り花1本あたりのコストが下がっても、それ以上に販売単価が下がれば多収益にはならない。短茎というだけで単価が低い市場での問題がある」などの意見が出た。また「農薬取締法改正で効果的な農薬が使えなくなった。効果が薄いと、かえって使用量が多くなる」との意見には、農水省が適用農薬の拡大を都道府県に呼びかけていると答えた。
このほか▽市場法改正で手数料が高くなると市場出荷が難しくなるのではないかと小さな農家は心配している。今後は家庭用の直売が増えそうだ▽今は家族労働で労賃を下げ、コストを低減している。これは産業本来の姿ではない、などの意見もあった。
輸入問題では、米国の先例が出た。70年代にカリフォルニア州は世界一の花産地だったが、カーネを南米からの輸入に明け渡したところ、バラもだめになり、さらに鉢もの、苗ものにも影響が出たという。総崩れにならないようにと輸入への対抗策が強調された。
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