JA全農は消費者への情報提供や意見交換を目的に定期的にふれあい懇談会を実施してきたが、このほど第1期から3期のメンバー合同の懇談会を開催、改めて生産や表示問題、全農の事業などについて意見交換を行った。
23名が参加し、これまでの懇談会に共通する質問について全農が回答、解説した資料を作成して説明した。
たとえば、農薬では、できるだけ農薬を使用しないで生産できないか、散布された農薬はどうなるのか、といった質問が寄せられている。
これに対しては、全農営農・技術センターでの試験では農薬を使用しない場合は総収量が60%にとどまり出荷可能なものは半分以下になるとの結果になったことなどを紹介し、人口増のなか限られた農地で生産性を確保するには不可欠な生産資材だと解説。また、残留農薬基準も日本は医薬品と同水準と世界でもっとも厳しい基準にあることなども紹介した。
有機農産物についての質問も多く、担当者は化学肥料との違いや生産、流通の問題などを解説した。
有機質肥料は化学肥料と違い、微生物に分解されてから作物に吸収されるため微生物の活性が高まるなど、土が持っている本来の力を引き出すという特徴がある。
しかし、肥料成分が調節された化学肥料にくらべ成分が低いため施用量が多くなり原料も限られていることから高価になる、と説明。また、モンスーン地帯の日本では病害虫の発生したやすい環境で農薬の適正使用はやむを得ないことや、無農薬栽培では生産量も安定せず販売を定着させるには問題が多いことなどから、現在、JAS法で格づけされた有機農産物の国内生産量に占める割合は約0.16%にすぎないことも指摘。
生産者はコスト削減の観点からも農薬を必要以上に使用することはなく各産地の栽培基準を守っていること、全農としても有機肥料の使用を増やすなどの土づくり運動に取り組んでいることなどを話した。
また、遺伝子組換え農産物については、全農も国内外の企業による種子の支配を防ぎ新品種の種子育成者権を確保することが必要なこと、また、生産者メリットだけでなく健康機能など社会に寄与する観点から国のスギ花粉症緩和米の研究に参加していることを紹介。ただし、社会的理解が得られるまでは当面実用化しないことが全農の方針であることも強調した。
全農の担当者からの説明に対して参加者からは、「のっけから農薬は農業生産にとって不可欠と言うのはどうか。環境への配慮を進めたいが農薬を使用せざるを得ない環境にあるとの説明のほうが理解を得られる」、「遺伝子組み換え農産物は、食べたくない人もいる以上、交雑や混入のない仕組みをどう作るか課題」などの指摘があった。また、全農安心システムについての産地情報をもっと伝えるべきとの声や、全農の役割として自給率向上に絞って事業を組み立てるべきだと意見もあった。
これらの意見をもとに全農では「食と農のQ&A」を作成し幅広く提供する予定にしている。
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