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「骨なし牛肉」に条件 −OIEの総会 (5/27)

 パリで開催されていた国際獣疫事務局(OIE)総会は5月27日、牛肉貿易のBSE措置など条件の改正案を総会で採択した。
 今回の改正案で焦点になったのが、「骨なし牛肉」を無条件で貿易できるようにする物品に加えること。米国やニュージーランドが主張していた。
 これに対し日本、韓国などは骨なし牛肉でも特定危険部位(SRM)によるプリオン汚染の可能性があることなどから無条件物品に加えることに反対し、この項目から削除を主張していた。ただ、最終的に“条件”を付ける調整案を事務局が示したことから、日本の考え方が反映されたとして賛成に回った。
 条件は(1)BSE感染牛、または疑わしい牛の牛肉ではないこと、(2)特定危険部位(SRM)による汚染防止措置がされていること、(3)30か月齢以下の牛であること、の3つ。
 農水省によると、今回の改正で骨なし牛肉の貿易にはこの3つの条件すべてを満たすことが国際基準になったという。
 また、昨年の改正で「腸全体」とされた特定危険部位については「回腸遠位部」に限定された。
 そのほか今回の改正では、各国のBSEのリスクをこれまで清浄国、暫定清浄国など5区分としていたものを(1)無視できるリスク、(2)管理されているリスク、(3)リスクは不明、の3区分に簡素化した。
 ただ、どの国がどの区分に入るのかは、今回の総会では、リスクを評価するのに必要なサーベイランスの頭数などの基準が合意されなかったため具体化はしていない。今後、1年間かけてサーベイランス基準について議論を続けるが、BSE対策については、感染状況を把握するサーベーランス(監視)だけではなく、感染牛を市場や食物連鎖から排除するスクリーニング(選別)も必要だ。日本では全頭検査というスクリーニングによってそれまで感染例はないとされていた21か月齢という若齢での患畜を発見した。
 国際的なBSE対策の基準にはスクリーニングも必要であることを協議の場で主張していくことが求められる。

■貿易条件は当事国で協議

 OIE基準はWTO協定のなかの動植物検疫措置であるSPS協定に基づく国際的な基準。しかし、強制力はなく科学的根拠があれば、OIE基準より高いハードルを相手国に要求できる。
 今回の改正で、一部に米国は30か齢以下まで拡大して牛肉輸入再開を日本に求めるとの見方もあるが、日本は21か月齢の感染牛が見つかっていることから、「20か月齢以下の米国産牛肉についてリスク評価を行う。BSEに感染しているかどうか、SRMの汚染の可能性はないかどうか(の証明)を相手国に求めるのは従来と変わらない」(農水省)としている。
 その際、OIE基準の「患畜」や「疑わしい牛」の定義も国によってまちまちだが、その定義も輸入する側の定義を要求することができるという。
 米国産牛肉の輸入再開問題は、厚労、農水両省が食品安全委員会に26日、国産との安全性が同等かどうかを諮問した。31日のプリオン専門会で本格的な議論が始まる。米国産牛肉の早期輸入再開に向けて、20か月齢以下の国内検査除外を決めたとの批判が根強いなか、米国のBSE対策評価について科学的な議論が望まれるのはいうまでもない。

(2005.5.31)



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