農地、農業用水などの資源を保全する地域活動に対する新たな支援策の導入は経営安定対策とともに新基本計画の具体化の課題となっているが、農水省は検討会を発足させ議論をはじめた。
新たな基本計画では、農地、農業用水などの資源は、食料の安定供給とともに国土・環境保全など多面的機能の発揮に不可欠な「社会的共通資本」と位置づけている。そして、それらが発揮する効果は国民全体に波及しているが、これまで集落ぐるみで行ってきた保全活動が過疎や高齢化などで困難になっていることから支援策の導入が必要だとしている。
一方、経営安定対策では担い手に支援を集中させる方向で検討、農地利用集積が進めば、共同での取り組みに参加する人が少なくなり、担い手の負担が増えることも懸念されており、集落全体での取り組みが行われるような支援策が必要と整理されている。
■効果の高い取組みに限定
こうしたことから農水省では資源保全施策については、農業者だけでなく地域住民も参画する取り組みについて、個人ではなく地域を対象に支援することを基本としている。
また、活動の内容も防災や都市から水路に流入するゴミの排除といった生活環境の整備や、生態系や景観の維持など農村環境保全といった地域社会に貢献する多様な取り組みを想定し、「効果の高い取り組みに対象を限定」するとしている。
19年度からの施策導入に向けて現在全国で400地域の活動を選定して実態を調査。モデル的な事業を選んで18年から支援していく方針を示している。
■経営政策を視野に検討を
6月21日に開かれた第1回検討会では、資源保全施策が地域の環境保全や子どもたちの学習活動にもなる方向など多様な人が参画する取り組みを促進すべきとの意見も出されたが「経営安定政策の導入で担い手に農地が集積されたときに負担を減らす視点が基本のはず。多様な地域住民が参加したとしても主体は農業者ではないか」と経営安定対策の具体化を見据えながらの議論が必要と強調する意見もあった。
また、個人ではなく地域の活動を支援していく方向が「農地の分散を温存することにつながってはまずい。農家も農地は公共財という意識で集約利用して農業が盛んになることが基本ではないか」との意見もあった。
支援する活動についても「特別な取り組みよりも普通の取り組みが大切。たとえば、あぜの草刈りをどうするのか、産廃を片づけた後の農地をどうするのか、地域で話合っていく取り組みを支援すべき」、「大前提は農地の農業用水の維持管理。それに加えて環境などにプラスの効果がある取り組みだけを支援するということなのか」といった意見も出された。
議論をふまえ川村農村振興局長は「10年後に農業者が半減することからこの10年間をどう守るかが課題。ただ、助成する活動も基本的な活動が共通していてもそれだけで税金を使うことに合意が得られるかどうか。環境、景観の維持、教育面など付加しなければならないのではないか」と述べた。
検討会は7月から8月に現地調査を行い、8月下旬に実態を調査をふまえた施策の基本的枠組みについて議論する予定。 |