農業協同組合新聞 JACOM
   
農政.農協ニュース
処理進み出荷再開へ 茨城の鳥インフルエンザ禍 (6/26)

 農水省は6月26日、茨城県水海道市の養鶏場で、死んだ鶏から鳥インフルエンザのウイルスが発見されたと発表。27日からは、飼養中の約2万5000羽すべての殺処分を県が開始した。消毒などを含めた全作業が終わるのは30日の見込み。動物衛生研究所(独立行政法人)の検査では、H5N2亜型のA型インフルエンザで弱毒性だという。
 これは、昨年1月から西日本で発生した毒性の強い4例のH5N1亜型と異なる。しかし病原性の強いウイルスに変異する可能性があり、これを予防するため同省は、今回の5例目も高病原性として取り扱う。
 県は、発生農場を中心に半径5キロ以内にある全養鶏場17戸(合計73万4500羽)の鶏や卵などの移動を禁止した。水海道市と板東市が対象となった。しかし県の立ち入り調査では、29日現在、臨床的な異常は見つかっていない。ウイルス検査で陰性が確認されれば、鶏卵の出荷は再開される。
 また国産鶏卵は卵選別包装施設(GTセンター)で殺菌剤により洗浄されているとして農水省は、すでに発生農場から出荷された鶏卵の回収はしない。
 一方、消費者が買い控えるなどの風評被害が懸念されるため、内閣府の安全委員会は27日、鶏卵、鶏肉を食べた人間が鳥インフルエンザに感染したという報告は世界的にない、とする委員長談話を出した。同委員会は昨年の発生時も安全宣言を出している。
 島村宜伸農相も28日の会見で、防疫対策の強化とともに改めて「風評被害を防ぐため、国民への情報提供には正確を期すよう都道府県に通達した」と述べた。
同省は感染の原因やルートの解明を急ぐ。

◆弱毒タイプへの防疫対応を強化 −農水省

 79年ぶりに昨年1月、山口で鳥インフルエンザが発生。次いで大分、京都でも確認された。ウイルスが全身で増えて大量死に至る強毒性だった。今回は呼吸器や腸管でしか増えない弱毒性のウイルスだ。
 しかし茨城は鶏卵の出荷量が全国1位(平成15年)の大産地で、しかも首都圏にある。弱毒性でも、まん延すれば市場に与える影響は非常に大きい。
 ところが、H5N2亜型は死亡率が低いため、今回は、兆候が出てから感染確認まで3ヵ月近くもかかった。病原性の弱いウイルスにだまされた形だ。
 H5N1亜型の場合、京都府丹波町の例では、1日に最高1万羽が死んだ(昨年2月)。しかし今回の茨城では、今年4月の1日平均が10羽強で、月間合計300羽強の死亡だった。しかも5月には月間270羽と死亡が減少した。
 ただ、産卵率が4月上旬から緩やかに低下し始めたため、それと死亡率が普通より少し高いことを考え併せてみて、初めて問題意識が浮上したとのことだ。
 5月には、さらに産卵率が落ちたので、23日に農場から薬品会社の研究所に検査を頼んだ。その後、6月23日に同社から鳥インフルエンザの疑いがあるとの報告を県が受けて、動衛研による判定となった。
 こうした問題点をまとめるとともに、農水省は対策本部会議を27日開き、島村宜伸本部長は「今回の事例が特徴的な症状を示さなかった」として、これに対応する早期発見につながるよう「モニタリングと報告・連絡のあり方」の再検討を指示した。
 また弱毒タイプを含めた総合的な防疫対応の充実をはかることも決めた。
 モニタリング検査は、全国178ヶ所の家畜保健衛生所が毎月1回、それぞれ1農場10羽ほどで実施。最近は一ヶ月合計約2000羽を検査しているが、そのあり方を見直すことにした。
 なお鶏の飼養羽数は、採卵鶏が1億7455万羽(16年2月1日)、またブロイラーが1億373万羽(15年2月1日)となっている。

(2005.6.29)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。