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5月18日の調印式の模様は新聞やテレビで大々的に報じられた(写真右側が中安社長、左は統一カタログの頼社長) |
◆蓄積された通販のノウハウを活かして
旬の果物など農産物を通信販売している全国農協食品(株)(中安久司社長、以下、全農食品)が、台湾の「統一グループ」と提携し、国産果物の通信販売を台湾で始めた。
最近は、国を挙げて農産物の輸出を促進しようという気運になっているが、全農食品が果物の輸出を検討し始めたのは、昨年の初めころだという。
生活水準が高く、良質な食品を求める層が確実に存在すること、国内産地から輸送しても鮮度が保てる距離にあることが、台湾を選んだ理由だ。
中安久司社長は、輸出を検討する際の基本的な考え方として、(1)現在、台湾のデパートやスーパーには数多くの日本産果物が並べられているので、そうしたところに輸出しても価格競争になってしまい意味がない。(2)全農食品らしい輸出のシステムをつくり上げる。(3)政府や行政からの補助金がなくても民間でキチンとできるシステムを作ることをあげた。
そして、「旬の美味しいものを直接、そして一番早く消費者の家に届けて、美味しいものをそのまま食べてもらう」という同社がノウハウを持つ通信販売ができないかと検討してきた。
◆台湾の大手通販会社・統一カタログと提携
同社の取引先であるヤマト運輸が、台湾の食品・流通の大手である統一グループと提携して宅配便の事業を展開していることから、統一グループで通販事業を展開している統一カタログ(統一行銷整合股フェン有限公司)と提携して、国産果物を台湾で通販することにした。
統一カタログは「統一購物便・unimall」という呼称で、カタログ(雑誌)だけではなくインターネットも活用して、台湾で幅広く通販事業を展開している。
今年5月に台北で行なわれた両社の調印式の模様は台湾のテレビや新聞で大々的に報じられ大きな話題になった。
そしてこの6月から7月に届けるサクランボとモモについて、「unimall」や統一グループ傘下のセブンイレブン(3800店舗を展開)が発行する雑誌などで販売を開始した。
サクランボはアメリカンチェリーの味に慣れた台湾の人には酸味が強く、いまひとつだったようだが、モモは2000ケース(6玉)が販売されまずまずのスタートを切った。その際、全農食品は、輸出先企業の倒産などで代金回収が滞った場合にその約90%を受け取れる(独)日本貿易保険に保険を掛けたが、これが生鮮食品では初めての事例だとして新聞などで取り上げられ話題になった。
◆来年からは頒布会方式で販売を検討
年内は、ナシやブドウ・柿・リンゴなどを毎月、単品で販売していくが、来年1月からは、毎月の商品を予め決めて注文を取る頒布会にしたいと、いまその準備をすすめている。
これが実現すれば、全農食品が提携している産地・品目のなかから、台湾の人の好みに合う果物を選び、月2点ずつ年間24種類の果物が台湾へ輸出されることになる。国内産地にとっては、それだけ販売量が増えることになり、期待が寄せられている。
中安社長は「日本の果物は生産者の努力もあり、台湾では“ブランド”です。台湾の人の好みに合った旬の美味しい果物を届けることで、月1000万円以上の規模にしていきたい」と抱負を語ってくれた。
国内で蓄積してきたノウハウを活かし、台湾の大手通販会社と提携することで、まさに「民間ベース」での農産物輸出のシステムができたことになる。これが成功することで、国内産地には新しい販路が確立することになるわけで、ぜひ成功させて欲しいと思う。
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生産者の顔写真入りで販売された7月のカタログ(8月に届ける) |
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「unimall」の表紙 |
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