今の防疫対策では、鳥インフルエンザのウイルス絶滅が困難として、日本鶏卵生産者協会の梅原宏保会長らは9月8日、採卵鶏への予防的ワクチン接種を訴え、記者会見で、発生農場の窮状などを語った。
鳥インフルエンザは今年に入って茨城県で再発。汚染鶏は400万羽を超えた。伝染病の防疫対策には、感染源と感染経路の対策に加え、感受性対策というワクチン接種を含む3原則がある。これら総合的対策を農水省に要望してきたが、主要点は「ほとんど聞き入れられなかった」と、同会長と島田英幸専務は、初めて公式に行政に対する不満を語った。
また感染原因がまだわからない中で、農水省が9月2日に「使用が認められていない違法ワクチンの接種が原因ではないか」と言及したことを批判した。
会長は「ワクチンをあっせんします」というセールス文書が出回ったことがあり、このため(社)日本養鶏協会は、不正ワクチンは絶対使用しないようにとの注意を2度にわたって出しているから「だれも使っていないと思う」と説明した。
農水省がワクチン接種を実施しない理由については「理解しがたい」とした。
生産者協会と養鶏協会は、茨城県や、その他の汚染の危険がある地域では早急に予防的接種を実施することを主張している。
安全性や有効性では、接種した鶏は、しない鶏に比べて野外ウイルスの感受性が100分の1に抑えられ、また感染しても排出されるウイルス量は1000分の1以下になり、この相乗効果で危険性は10万分の1以下になるという。
さらに発生だけでなく、感染も防げる優秀なワクチンが海外で開発されており、これは動物衛生研究所でも立証済みで、これらのワクチン使用によるリスクは全くないとした。
接種を認めない理由の1つである野外感染による抗体と、ワクチンによる抗体の区別ができなくなるという点についても、区別をつけるシステム(DIVA)がすでに実用化されていると主張した。
一方、感染鶏の殺処分という農水省方針が8月22日に変更となり、ウインドウレス鶏舎の場合は殺処分をしなくてよくなったが、開放鶏舎と比較して、ウインドウレス鶏舎がウイルス拡散を防ぐことができるという科学的根拠はない、との見解も示した。
サーべイランス(監視)の結果、感染が認められた鶏群は鶏舎の型を問わずに全群を殺処分とすることを主張した。
また「鳥インフルエンザ防疫指針」を実態に合わせて機能する内容に変更することも求めた。
殺処分鶏に対する補償は1羽640円だが、若い雌の値段は800円。その上にインフルエンザ発生で納入がストップすれば、たちまち取引は停止となる。「5分の4というこの補償額では経営再建はできない」と会長は発生農場の窮状を訴えた。
米国の場合、カリフォルニア州では1羽5000円を補償したという。
なお会長らは、米国やイタリアなどの例を挙げ、当初の防疫対策は殺処分だったが、それをワクチンを組み込んだ対策に改め、最終的には清浄化に成功したなどと説明した。
日本養鶏協会は、各県の養鶏協会を中心会員とする生産者団体。また鶏卵生産者団体は、生産者の意見を迅速に養鶏協会に反映させるとともに養鶏協会と協同して鶏卵産業と養鶏経営の安定などに取り組むことを目的としている。会員数は560人で、生産者の8割を組織。その飼養羽数は1億800万羽。
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