JAの販売事業は、価格の低迷と自給率の低下などから、10年間で取扱額が2割も減少。収益も悪化の一途。このため流通の自由化が進む中で、JAと全農の販売事業を抜本的に見直そうと、JA全中は経済事業改革中央本部のもとに販売事業等検討委員会を置き、9月13日から改革案づくりに入った。全農内部でも検討を並行させ、11月末に案をまとめ、このあと各県域で具体策をつくる。
改革案には、生産資材価格の引き下げを重点にした担い手対応策も盛り込む。コメ販売策は平成18年産から導入する方向だ。
初会合では現状と課題をフリーに議論した。コメの共同計算では、売り手が販売対策費を支出すれば、指標価格より実質的に安くなって二重価格が生まれ、不透明感が増す、という問題が提起された。しかも販売対策費は大手卸に支出されるため、全農の販売量に占める大手5社の購入シェアが年々高まり、昨年産では3割に達したという。
共計コストが上昇して集荷段階での競争力が弱くなっていること、集荷率も米価も下がる中で相対的に共計コストが高くなっている問題なども出た。
◆収支の悪化続くJAの販売事業
青果物については▽卸売業者への販売委託が大半だが、そのあと消費者に届くまでの流通全体を把握した戦略が必要だ▽今の事業システムでは園芸生産は減少する。大転換が求められるなどの意見があった。
また品目を問わず、販売力の弱さから、業務用や加工用を含めた市場を、輸入農産物に奪われてきた面があるとの指摘など、農政転換や流通規制の緩和に対応し切れていない販売事業の姿が浮き彫りにされた。
一方、JAの販売事業収支については、委託販売手数料が全国平均でコメ約3%、青果物約2%と卸・小売に比べ、きわめて低いため、集荷と販売のコストが回収できず、多くのJAと連合会で販売事業の収支悪化が続いている。この手数料体系は食管時代のコメ集荷代行手数料が基準だ。
全中は安定供給のためにはコストの回収と低減が重要とし、JAグループの機能発揮が必要とした。
◆担い手対応では営農渉外を強化
担い手対応では、政策支援の対象が認定農業者や法人に重点化され、集落営農も法人的な経営に変わっていくことを想定。これらに対応した事業システムへの転換が必要と提起した。
具体的には、一括購入条件の設定など生産資材価格の引き下げや、営農・経済渉外の強化を挙げた。
全農についても、米穀と園芸の収支が悪化しているが、事業システムの転換なしに赤字解消を図れば、全農販売事業の機能がなし崩し的に低下していく懸念があるとした。
委員会は、こうした数々の課題について具体的な対応策を探るが、10月上旬には、JAのコメ販売と園芸販売を分けて検討。また下旬には全農についての議論に移り、11月には、担い手対応を検討する。
全中は「消費者接近のための販売戦略見直し」をJA指導の基本方針に掲げ、直接販売の拡大や、販売手数料・経費の見直しなどを目ざしているが、委員会で具体的な改革案をとりまとめた結果、基本方針の見直しが必要になれば来年3月に改定する。
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