日本学術会議は「人口減少社会の下では『食料の自給率向上』がきわめて重要である」と強調した対外報告を9月27日公表した。これまでに農水大臣の諮問を受け、農業と森林の「多面的な機能の評価」など2つの答申をしているが、今回は自主的な報告として地域社会の再編の重要性にも言及している。
基本的には「環境と資源の両面で、これまでのような成長社会志向は限界に近づきつつあると思われる」として「21世紀のわが国では、積極的に人口減少社会を受け入れ、その上で持続可能で豊かな社会を構築する必要がある」との考え方を示した。
食料に関する部分の要点としては「人口減少を自給率向上のチャンスと捉え、それに向かって努力すること」などを挙げた。
また「人口減少社会でも土地利用システムの改善、兼業農家の農業的機能の強化などによって、食料自給率向上の可能性はある。そのための政策として、日本型デカップリング政策、高収量・高品質のための技術開発、エネルギー政策との連携が重要」とした。
さらに「その場合、すでに人口減少社会に移行しているEUの共通農業政策が新しい政策モデルの1つとして有効であろう」と指摘した。
この報告書の題名は「人口減少時代の“豊かな”社会ーわが国の人口・食料・エネルギー問題」。案のまとめは、日本学術会議の人口・食料・エネルギー特別委員会(委員長=太田猛彦東京農業大学教授)。
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