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安全性評価で対立する意見−米国産牛肉でプリオン調査会 (10/31)

 米国・カナダ産の牛肉の安全性が日本と同等かどうかを審議している食品安全委員会プリオン専門調査会は10月31日の会合で結論のとりまとめを行う予定になっている。報告書のたたき台は輸入再開を容認する内容となっているが、日本と同等の安全性と評価できるのかどうか疑問視する委員もおり結論が注目される。
 今回、農水、厚労の両省が食品安全委員会に諮問したのは米国とカナダが日本向けに実施する輸出プログラムによって管理された牛肉が日本産の牛肉とくらべてリスクが「同等」かどうか。
 米国の輸出プログラムとは(1)すべての月齢で特定危険部位(SRM)を除去、(2)枝肉の格付けや個体・集団月齢証明で20か月齢以下と証明するという日本向けの上乗せ規制。昨年の日米協議で輸入再開の条件として合意した。
 しかし、この上乗せ規制が確実に実行されているかどうかを評価することができないことから、調査会は日本向けの輸出規制が守られていることを前提としてリスク評価を行うことにした。
 また、答申は安全性の評価を行うものであって、輸入再開の「許諾権を持つものではない」(吉川座長)ことを明確にし、報告書(案)でもリスク管理側の農水、厚労両省に対して答申を受けて輸入を再開する場合は、輸出プログラムが適切に機能しているか現地調査を求めるとともに、輸入再開についてリスクコミュニケーションを行い説明責任を果たすべきだと強調。リスク評価機関(食品安全委員会)とリスク管理機関(農水、厚労省)の役割、責任を明確にすべきだとの姿勢を示した。
 調査会はこうした問題も含めて議論されたが、報告書案の結論では、上乗せ条件が守られた場合、国内産と米国産の「リスクの差は極めて小さい」としている。
 ただし、結論への付帯意見として輸出プログラムが守られない場合は「この評価結果は成立しない」ことや米国、カナダでのリスク低減措置が適切に実施されているかリスク管理機関による査察の仕組みが必要であることなども提言している。
 また、SRM除去については実態が不明で安全担保に疑問が残るとし「SRM除去に関してはわが国のものとは同等とはみなしがたい」との記述も盛り込まれているほか、もし輸入再開にふみきった場合でもSRM除去が不十分など人へのリスクが否定できない場合は「一旦輸入をストップすることも必要である」との意見もつけた。
 ただし、24日の議論では北本哲也委員からは「付帯意見が結論の前提ではないか。この付帯意見が守られなければ結論はないというかたちにすべき」との異論があった。また、甲斐知恵子委員からは「輸入解禁には慎重であるべきと提言行うべき」との意見も書面で提出された。
 さらに焦点になったのは結論が「リスクの差が極めて小さい」としていることについて。金子清俊座長代理は「諮問はリスクが同等かどうかを聞いている。同等かどうかを記述すべきだし、その判断を避けるならその理由を書くべき」と強く主張した。
 こうした意見が続出したが吉川座長は会合終了後の記者会見で「大きなずれは感じていない」ととりまとめに自信をみせ、結論部分で同等性について記述しなくても「(リスク管理側が)同等性を判断することは可能」との見方を示した。
 一方で日本向け輸出プログラムという上乗せ規制そのものに対して「このような一部規制を許すのであればどのような汚染国であっても部分的規制を行えば輸出入が可能になる前例をつくってしまう。学問的にも安全であるとはいえない」(甲斐知恵子委員)との意見もある。
 科学的な検討が十分に尽くされたかどうか。調査会の議論が問われる。
(2005.10.31)


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