◆JAグループが担うコメ流通の車の両輪
米の「検査」と「保管」はコメ流通の「車の両輪」といわれる。従来はこれらの業務は国の管理のもとに行われきていたが、16年4月に改正食糧法が施行されて計画流通制度が廃止され、検査は民間に移行(18年完全移行)され、保管も15年3月に国の保管管理要綱(政府所有食糧等の保管管理要綱)が廃止され、文字通り「自主保管」となった。つまり、車の両輪をJAグループ自らが担う新しい時代を迎えたといえる。
しかし、各JA自らが作成した「自主保管マニュアル」による実質的な保管管理が実施されて3年が経つが、JA経済事業改革の一環として倉庫担当者の削減や見回り・点検回数の減少など、保管管理体制の弱体化が懸念される状況にあり、依然として品質事故が発生している。一方では、消費者の「食の安全・安心」への関心の高まりから、保管履歴を含むトレーサビリティへ意識の強まりや、高品質志向が強まるなか、農業倉庫の保管・品質管理は、売れる米づくりの一環として、消費者や実需者の要望に応えたよりきめ細かな対応が求められている。
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メモを取りながら保管管理について学ぶ参加者 |
◆具体的で役に立つ研修内容
こうした状況に対応するためにJA全農と農倉基金((財)農業倉庫受寄物損害補償基金)は、農業倉庫の保管管理技術者の育成と技術向上をはかるために、以下の全国4ヶ所で「17年度農業倉庫保管管理技術研修会」を開催している。
▽11月10〜11日 大阪市 中日本地区(東海・北陸・近畿・中国・四国)
▽11月17〜18日 千葉市 東日本II 地区(関東・甲信越)
▽11月24〜25日 盛岡市 東日本I 地区(北海道・東北)
▽12月1〜2日 福岡市 西日本地区(九州)
このなかから千葉市で開催された東日本II 地区の研修会を取材した。
研修会の内容は、第1日目が、▽農業倉庫における米麦の保管・品質管理▽ネズミの生態と駆除について▽貯蔵穀物害虫と防除について。第2日目が▽米穀情勢報告▽農業倉庫法の概要と農業倉庫の業務▽農業倉庫受寄物損害補償制度について▽実需者・消費者の求める米と多岐にわたっていたが、いずれも具体的ですぐに役立つ保管管理者に必須な内容だといえる。
新潟県から参加したある農業担当者は「10年ほど農業倉庫を担当しているが、忘れていたことを思い出させてくれることもあり、とても良かった。JAに帰ったらこの研修会で勉強したことを活かして管理していきたい」と語った。
2日目の研修会後には、HACCPの考え方や空気搬送を多用した密閉性の高い搬送機で加工時の異物混入をシャットアウトするなど、最新鋭の設備をもつ全農パールライス東日本(株)千葉精米工場を視察。コンタミ防止への同工場の取り組みなどに熱心に聞き入ると同時に、工場へ搬入されるまでの米の保管管理の重要性を再認識していた。
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最新鋭の精米工場を視察 |
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