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担い手絞り込みにどう対応するか JA全国大会決議実践交流集会
−JA全中 (11/15)

挨拶する茂木副会長
挨拶する茂木副会長

 JA全中主催の第23回JA全国大会決議実践交流集会(東日本会場)が11月15日、東京・浅草ビューホテルで開催された。JA役職員、県連・全国連役職員など約700名が集まった。
 茂木全中副会長は、「19年度から導入される品目横断的経営所得安定対策の内容が示され、担い手基準が明確になった。これは、農政の大転換だ。農業の振興はJAグループの重要な使命であり、我々はこの政策を生かして担い手を育成し、地域農業の維持・発展を図らねばならない。担い手対応を強く意識し、JA事業の具体的改革の姿を急いで作りあげる必要がある。この集会を、先進事例に学び、相互に研鑽する集会にしょう」と挨拶し、大会決議の実践に向け頑張って欲しいと激励した。
 山田専務は情勢報告と課題提起をし、「当面の最大の課題は、担い手を絞り込む農政の転換に、我々としてどのように対応するか。先月、担い手基準が示され、一定の要件はあるが、集落営農や作業受託組織などが対象となったことは評価できる。地域実態に合わせた担い手を主張してきた我々としては、JAが地域農業を支える担い手を作りだすことが求められている」と語り、これからがJAの存在意義が問われると訴えた。

■『集落の明日を語る会』に改称を提案

 全体集会の後、『地域水田農業ビジョン実現にむけた正念場の年の取り組み』、『組合員のくらしを基点とした生活事業の再構築』、『販売事業の改革について』など7つのテーマに分かれ、分科会が行われた。
 『地域水田農業ビジョン』分科会では、司会の松岡公明全中基本農政対策部次長が課題を提起。「▽売れる米づくり、▽米以外の麦、大豆、または耕畜連携を中心とした産地づくり、▽担い手づくり、の三点セットで地域水田農業のビジョンを描き、改革を。また、19年度以降の新たな需給調整システム、ポスト米政策改革へ向け来年度は重要な年になる。今回われわれは、自分たちの問題として考える意味で、集落座談会という従来の呼び方をやめ、『集落の明日を語る会』と呼ぶことを提案したい」と話した。
 JAあきた北央田中営農部長は、「JA組合長が水田農業ビジョン推進協議会会長に就任し、事務局をJAに置いて、生産から販売まで一貫した体制で取り組んでいる。協議会の下に、幹事会、ワーキンググループを設置し、月1回程度行政との情報交換も。消費者から選ばれなければ産地として生き残れない、そんな危機感を持っている。産地間競争で優位に立つには、生産・加工・販売を一体的に捉える経営感覚が必要」、と述べた。
 福島県昭和村(有)グリーンファーム代表取締役小林安郎氏は、「昭和村は、高齢化率52.2%と県内1位で、人口もピーク時に比べ1/3の約1600名。昭和60年代から高齢化が進み、後継者不足に悩むようになり、農業者年金受給資格を得るための経営移譲先が見つからない状況が出てきたが、平成4年にJAが受託農業経営事業を立ち上げ、受け皿となってきた。こうして、JA出資の農業生産法人ができた。米だけでは利益を出せないので、育苗センターやライスセンターの管理をJAから受託する形で運営してきた」と、立ち上げた生産法人が立派に運営できるためにはJAの支援が欠かせないことを強調した。
 また、栃木県の大豆生産者の市村和則氏は、「大豆、麦を本作として位置付ける国の政策に後押しされる形で規模拡大を図り、現在42.2ヘクタールの作付けを行っている。地域の畜産農家と連携して、糞尿をたい肥としても利用している。大豆の付加価値を高めるため、平成12年から麦麹を使った『味噌』づくりのも挑戦してきた。その後、順調に生産が伸び、現在は年間10トンを販売している。米価低迷の影響もあり経営に占める大豆の割合が高まっているが、今後は法人化も視野に入れ、味噌などの自家販売を拡大したいと考えている」と、個別経営として米、麦、大豆などの生産に取り組んでいる実態を語った。

■できるところからスタートが必要

 会場からは、「大都市圏に近く、まだあまり高齢化が進んでいない地域で、集落営農の取りまとめはどのような形で行ったらよいか」、「高齢者が多く集落営農に対して意識が低く、呼びかけにも集まらない現実がある。どうしたらよいか」との質問があった。それに対して小林氏は、「出来るところからやることが大切だ、集落全員の合意がなければスタートしないということでは、何時までたっても始まらない。とにかく、スタートを切ること」と、積極的な姿勢が必要だと、自分の経験を語った。
 また、「政府が示した経営所得安定対策で本当に農家・農民がこれから生活できるのか。そこが見えない」との現場の声もあった。

(2005.11.22)


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