農林水産物等輸出促進セミナー〈東京会場〉が12月9日、主婦会館(千代田区)で開かれた。このセミナーは、今年度の農林水産物貿易円滑化推進事業の一環として年内に9回行われる予定で、東京会場が6回目となる。生産者や流通関係者などを対象に、実際に海外への輸出事業を行っている人や輸出に関する有益な情報や知見を持っている人を招いて話を聞き、これからの活動に役立てようというもの。
主催者を代表して農水省輸出促進室の和泉真理室長が、「昨年の4月に輸出促進室が設置された。現在、農産物の輸出は順調に伸びており、7月以降は前年度比約20%増で推移している。政府は今後5年間で出荷額を2倍にする計画だが、この調子だと、その目標を達成することは決して不可能ではない。このセミナーを通じて、農林水産物の輸出を考えている方、すでに行っている方が互いに情報交換し、みんなで輸出促進を目指しましょう」と輸出促進の雰囲気を盛り上げて欲しいとあいさつした。
講演では、『香港における日本産食品の輸出現状と今後について』のテーマで(株)ホクレン通商・貿易部担当取締役坂井紳一郎氏が、「品質管理、品揃え、店舗のオペレーションなど、香港の小売業のなかで日系企業が果たした役割は大きく、地元企業の手本となった。しかし、ここ10年地元企業も力をつけてきており、パートナーとして選択できる。海外での小売の場合、フォローが難しいので的を絞った適切な戦略が大切だ。流通に関しては、狭い地域なのでルートの選択が成否を左右する」と述べ、マーケティングなど事前の調査が重要なことを強調した。
続いて、『中国における農林水産物・食品の物流事情と今後の展望』のテーマで(株)日通総合研究所経済研究部の町田一兵氏が、「台湾、香港を加えた中国の外貨準備高は日本を超えた。中国市場が今後も拡大する可能性は高く評価出来るが、市場が成熟しておらず、粗悪品、偽物などが多く、信頼を得るには今後努力が必要だろう。また、地域の保護主義が強く、上海、北京、大連など市場は全国に分散している。富裕層を中心に“食”に対する関心は高く、安全性が強く意識されだした。そのような環境のなかで、日本食がブランドになっている」と、現在中国市場が抱える問題点や可能性を明らかにした。
櫻井研東京海洋大学講師の司会でパネルディスカッションが始まり、「特に果物ですが、日本に来て始めて桃を食べたときその美味しさに感動した。中国で暮らしていた時には、思っても見なかった味です。日本の高品質な農林水産物に自信を持って良いと思う。売り方を間違えなければ、必ず売れる」、と自身が20歳まで暮らした中国での経験を交えながら、日本産食品の品質の高さを語った。一方、坂井氏は、「日本産というブランドを確立するためには、全国の産地間の連携が必要。例えば、日本産のカボチャを外国に売る場合、国内の北から南の産地がリレー出荷するなどして対応し、日本産ブランドを確立する。これは、全体の利益になると思います」と、農林水産物の輸出では、1産地だけではない国内の連携が大切だと訴えた。
|