|
||||
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ |
シリーズ 卸売市場を考える(6) |
|
◆研究会設置の背景
藤島 まず、この研究会がもたれた経緯や背景についてお話いただけますか。 高橋 この研究会は、昨年の7月2日に第1回が開催され、今年の4月24日まで10回開かれています。研究会がもたれた背景を私なりにまとめてみますと、次の4点になると思います。 ◆論議の流れ
藤島 研究会での議論の流れはどのようなことだったんでしょうか。 高橋 委員の構成は、野菜をめぐるフードシステムの関係者が多く、卸売市場関係者は半数近くいますが、その人たちが主体ではないという性格でした。そこでの、議論の方向性をまとめてみると、概ね次の3点になると思います。 藤島 研究会あるいは報告書の背景はわかりましたが、報告書の内容は、今後どうしていくのかという具体性に欠けるという感じがしますが… 高橋 規制緩和が必要であるということは、随所に書いてありますが、しかし、どのような規制緩和をどういう形で、いつ頃までにやるのかということについては、ご指摘の通り報告書では明確にはしていません。それは、この研究会では全体としての方向性を出すことに重点をおき、その具体化については行政当局が詰めるというのが主旨だからです。 ◆規制があることが高コスト構造を生み出す 藤島 「報告書」では、「高コスト構造の是正を図ることが喫緊の課題となっている」としていますが、「高コスト構造」とは具体的には…。 高橋 結論から先にいいますと、自由なビジネス展開を規制するような制度枠があるのではないか。これをなくすことによって、自由な競争がもっと展開してくるだろうということです。 藤島 現在が「高コスト」だから、よりコストを下げるためには競争が必要ということとは違うのですね。 高橋 違います。競争を規制しているような卸売市場法があることが、現在、高コスト構造をもたらしているということです。その規制を緩和することで高コスト構造が是正されるという考えです。 藤島 規制していることに大きな問題があり、規制することが高コスト構造であるということですか。 高橋 生鮮卸における自由なビジネス展開が規制されているからです。一般論として、他の食品卸の改革と比べて、変化への対応が遅く、生鮮流通でも「こだわり商品」などを中心とする新しい動きは市場外流通で主に展開しておりますが、生鮮卸ももっと自由なビジネス展開をして欲しいし、そのことで構造が是正されてくるということです。 ◆手数料問題は全体の中の一つの問題 藤島 報告書の「卸売市場流通の効率化の考え方」のなかで「機能・サービスに見合った手数料を弾力的に徴収できるようにすることが求められる」と指摘していて、高コスト構造とは「手数料」かとも思えますがその点はいかかですか。 高橋 市場関係者は、この研究会が「手数料自由化委員会」と位置づけていますが、研究会の議論では、手数料問題は規制緩和全体の中の一つであるという位置づけです。手数料問題を先行して、それだけを自由化するなどということは論外であるということで一致していますので、手数料問題だけに短絡して理解されると困ります。 藤島 しかし、冒頭にご説明いただいた「背景」の3つ目にもありましたように、行政はかなり手数料問題を意識しているのではないかと思いますね。ところで、卸売市場の実質的な手数料はどの程度かという点については、各委員はどのように理解していましたか。 高橋 それは適正手数料は何かという議論にいくべきというご意見ですね。そうではなくて、私どもは、そういうことを国や公的機関が決めること自体が、規制緩和の流れの中ではおかしな話だと考えております。他の商品の取引で手数料を国が決めているものはありませんよね。しかし、おかしいのはこの手数料問題だけではなく、他にもいろいろあるじゃないかというのが、研究会の議論です。 藤島 いずれ手数料は自由化になると考えていますが、そのこととは別に、現在の手数料が「高コスト構造」なのかどうかという点については、委員会関係者は十分に理解しておくべきだと思います。また適正な手数料ということになると、そのときの経済事情によって変化するものと思います。 高橋 自由なビジネスの中で、流通で付加価値を高めれば、当然、マージンだって高くなるわけですから、ビジネスの中で決まっていくことだと思いますね。 藤島 手数料の実態については、研究会に報告されているんでしょうか。 高橋 それはされています。出荷奨励金とか完納奨励金についても出て、十分理解されています。関連していえば、出荷奨励金で運営されている出荷団体までこの報告書の精神が周知徹底されていませんので、今後、出荷団体にこの精神を理解してもらうことが大事だと思います。 ◆国の関与は緊急時や安全性確保などだけに 藤島 規制緩和について、どういう規制を緩和していくのか。そして今後の青果物流通にはどういう姿が求められるとお考えですか。 高橋 「米政策大綱」では、平成22年度を目途にこういう形にする。その過程で段階的にその形に接近するとしていますね。私も同じように、卸売市場法を変えるとすれば、卸売会社や出荷奨励金で運営する出荷団体に準備期間が必要ですから、何年先にはこういう形になるというものを出し、施策としては段階的にこういうものを出すので、準備をしてくださいという、目標年次とプロセスを明確にした手順表をつくるべきだと思います。 藤島 私も、競争を維持していくことは大事だと思いますし、競争を維持していかない限り効率化はないと思います。それから、緊急時の対応と安全性についてもその通りだと思います。その上で、「生鮮食料品のEDI標準(受発注等の取引情報を電子的に交換する方法の標準的な取り決め)の導入などによる電子商取引の統一的方式の普及」のような社会的なインフラの確保は国にしっかりやってもらいたいと思いますね。 ◆将来方向をどのようにつくりだすのか 藤島 もう一つ私が、行政やこうした研究会に要請したいのは、将来の効率化した卸売市場のビジョンを出すべきではないかということです。卸売業者は自分たちで変えていかなければいけない、会社ごとにビジョンをもつべきだということはその通りですが、全体のビジョンがあってはじめて自分たちの立場がはっきりしてくるわけですから…。 高橋 私は、それには反対です。なぜかといえば、それは、業者の自由な活動によって自ずとおさまってくるもので、国が方向を出してそれに倣えという時代ではなくなったからです。ただ、国がやるべきことはきちんとやらなければいけませんから、報告書の最後で「各種制度の見直し等を可及的速やかに進める」ことが国の責任であるといっているわけです。そして国がどの程度やっているかをチェックしていくことも必要だと思います。報告書でも「時期を限ってその進捗状況を評価する」と明記しています。 藤島 国が何をするかというときにも、将来方向があるからハッキリすることだと思います。例えばEDIにしても、国がインフラを整備しなければ企業としても使えないわけです。 高橋 それは逆で、民間が自由なビジネス展開をしていく場合に、個々の企業ではなく社会的なレベルで共通項をつくる必要があるなら、業界団体からそういう問題提起がされて、それによって国・行政が動くのであって、国・行政が先に立ってついて来いといういままでの行政の姿勢は変えるということです。 ◆市場内・外、卸・仲卸の区別がなくなる 藤島 残念ですが、国の将来方向(ビジョン)を国が示すべきか否かについては、互いに考えがまったく違うようですね。ところで、これからの市場流通はどうなる、あるいは何をするべきでしょうか。 高橋 まずはこの報告書に沿って国が思い切った規制緩和の方針を出せるかどうかでしょう。それがあいまいなら、卸売会社や仲卸会社にツケが回ってしまう事態になると思います。 藤島 私もこれからは、卸売市場もいままでのように生鮮だけに特化してはやっていけないと思いますから、加工品などを積極的に取り扱うようになると思います。そういう意味では、従来の卸売市場という概念ではなくなり、大幅に変わると思います。ご指摘のように、市場流通・市場外流通の区別もなくなってくるだろうと思います。 ◆商流・物流などの機能分担で効率化 高橋 生産面からいうとおそらく中国、韓国からの青果物輸入がどんどん増えるでしょう。しかも、現地に加工施設をもってですね。一方、消費面から見ると、生鮮野菜を購入し各家庭で調理するのはもっと減って、惣菜とか調理食品が増えてくると思います。そうすると中国からの冷凍野菜がさらに、中食とか外食産業にストレートに入ってくるようになると思います。 ◆国の農業政策との関わり 高橋 いずれにしても、生産者が高齢化して、国内農業の生産力が衰えていることが、苦しいところです。これは流通の問題ではなく、国の農業政策にかかわることですが気が重い問題です。 藤島 私もその通りだと思います。報告書にもあるように、市場も産地を育てるような機能を持たなければいけないと思います。そのときに市場は、北海道や遠隔地のものでもできるだけ輸送コストを安くして引き受けられる体制を整える必要があります。 高橋 生鮮ものの場合には、保存がきかないあるいは品質が急変するという特性を踏まえながら、どのようなシステムづくりができるのか。情報と分荷のシステムをどのようにつくるのかですが、これも国が方向性を決めるのではなく、民間に任せて、その活力やビジネスのアイディアでどんどんやっていくことだと思います。 藤島 民間に任せるのはいいんですが、国としても自給率を高めるために輸入品に対抗できる仕組みをつくりだそうとする民間企業には支援することも重要だと思います。 高橋 そこにあまり力を入れすぎると伸びるものも伸びていかないわけです。産地でエネルギーが出るのは、大量生産大量出荷ではなく、「こだわり商品」でスーパーなどと取引きする中でアイデアやエネルギーがでてくるのではないかと思いますね。 藤島 いろいろな産地があっていいと思いますが、「こだわり」だけだと、全体として産地が衰退していくことになると思いますから、それなりに国として食料自給や食料政策の考え方を出すことも重要だと思います。
(2003.6.11)
|
特集企画 | 検証・時の話題 | 論説 | ニュース | アグリビジネス情報 | 新製品情報 | man・人・woman |
催しもの 人事速報 | 訃報 | シリーズ | コメ関連情報 | 農薬関連情報 | この人と語る21世紀のアグリビジネス | コラム | 田園交響楽 | 書評 |
||
社団法人 農協協会 | ||
|