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農協時論
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卸売市場の今後のあり方
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藤島 廣二 東京農業大学国際食料情報学部教授 |
しかし、今回の「卸売市場制度の改正」はある意味で「網羅的」なこともあって、その基本的な方向を容易に見出すことができない。うがった見方をすると、「卸売手数料の弾力化(自由化)」だけが目的のようにも思われる。 それゆえ本稿では、先の9月25日に開催された国際シンポジウム「日・韓・台の比較から卸売市場流通の将来を考える」の成果(表を参照)を基に、卸売市場制度の改正のあり方、すなわち卸売市場の今後のあり方にかかわって3点ほど提案し、改正論議に一石を投じたい。 ◆商流費と物流費の峻別と物流費削減の推進 国際シンポジウムの中で明らかになった主な点の第1は、韓国、台湾とも、卸売業者の商取引手数料(情報交換費用、価格形成費用、代金決済費用等)と場内物流手数料(運搬費用、分荷費用、保管費用等)とを区分していることである。例えば韓国の可楽洞卸売市場の場合、公表されている手数料は卸売業者の商取引手数料に限られ、青果物で卸売額の4%、日本の卸売手数料の半分ほどであるが、これとは別に場内物流手数料が品目などの違いに応じて3〜6%ほどかかる仕組みになっているのである。 ◆価格安定化のための仕組みの構築 シンポジウムの中で明らかになった主な点の第2は、日本とは大きく異なり、韓国、台湾とも、出荷者(生産者等)側が卸売市場での価格形成に関与できることである。すなわち、IT化の進んだ韓国では、出荷者がインターネットを通してリアルタイムでセリ価格を把握し、暴落時には売り止めを指示することができるし、台湾では出荷者側が最低のセリ価格を指定できると法律に定められている。
表 卸売市場に関する日・韓・台の比較
◆総合卸売市場化の推進 シンポジウムで明らかになった主な点の第3は、韓国の可楽洞卸売市場が青果、水産物、食肉の総合市場で、青果物卸売市場流通量に占める同市場のシェアが38%(流通額に占めるシェアは40%)と驚くほど高いことである。しかも、専門市場だけの台湾では市場経由率が低下傾向にあるのに対し、韓国では市場経由率は上昇傾向にあると言われている。 日本の卸売市場をみると、中央卸売市場はもとより、地方卸売市場の中にも総合市場はあるものの、その総合化は「青果物+水産物」が中心で、衛生面の規制のため食肉部門を取り込んでいる卸売市場はない。したがって、スーパー等が青果物、水産物、食肉の生鮮3品を仕入れるためには、複数の卸売市場と取り引きしなければならないのである。 仕入れ業者の立場からすれば、専門市場よりも総合市場の方が、また日本の総合市場よりも韓国の可楽洞卸売市場の方が便利なことは言うまでもない。しかも、今日の日本のように加工青果物が年々増えている国では、生鮮青果物だけでなく、加工青果物も取り入れた総合市場の方が便利であろうし、また加工青果物の取り込みは市場経由率の低下を食い止め、逆に経由率の上昇につながる可能性をも高めよう。 かくて、今後の卸売市場の発展を図る上で、総合市場化の推進は積極的に取り組むべき課題と言えよう。 (科研「地域貿易協定進展下における東アジア農業の競争と協調条件の解明」(代表・八木宏典)により韓国と台湾の調査を行った。) (2003.12.1) |
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