◆発生は遅いが今後の推移に注意が必要
「売れる米づくり」は全国の稲作農家やJAの目標となっている。そして高品質な米を消費者や実需者に届けるためのさまざまな取り組みや努力がなされている。その一つに斑点米など「着色粒」をなくす・除去することがある。
「着色粒」は「農産物規格規程」によると「粒面の全部又は一部が着色した粒及び赤米」のことをいうが「とう精によって除かれ、又は精米の品質及び精米歩合に著しい影響をおよぼさない程度のものを除く」とある。モミや玄米で着色粒であっても白米になったときに着色していなければいいということになる。
着色粒となる主な原因には、米を高水分のまま保管すると蒸れて着色するケースとカメムシ類による斑点米のケースなどがある。
カメムシの発生は最近では平成12年をピークに、ここ数年は「平年並み」で推移している(図)。
今年は「冬が遅くまで続いたので、害虫の発生は遅れている」が「温度が高く、雨が少ないと発生しやすいので、注意が必要だ」と農水省消費・安全局植物防疫課の真壁貞夫防除班発生予察係長。6月9日付け「発生予報第3号」ではカメムシに関する情報はまだなかったが、6月14日に鹿児島県は早期水稲での斑点米カメムシ類に対して注意報をだした。また、秋田県・山形県・石川県・兵庫県・宮崎県の各県でも発生の情報があり、今後の推移に注意をはらう必要があるという。これ以外の地域でも、県の「予察情報だけでなく、自分の目でほ場を注意深く見て、発生が見られたら迅速に対応しなければいけない」と真壁係長。
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◆畦畔・休耕田の除草が効果的
斑点米カメムシ類は、畦畔や休耕田など水田周辺の雑草に生息し、稲の出穂期や乳熟期に水田に入り、稲穂の汁を吸って斑点を残すので、農薬での防除だけではなく「タイミングよく雑草を刈り取ることが大事」だと農産物検査を担当する農水省総合食料局消費流通課の江渡浩課長補佐はいう。
防除も除草もしなかった場合の斑点米混入率は0.744%だったが、薬剤散布した場合は0.662%、1回だけ除草した場合は0.139%、そして3回除草した場合には0.054%(除草区は薬剤を散布しない)と除草の効果が大きいという東北のあるJAの実証試験データもある。農産物規格規程による1等米の限界斑点米(着色粒)混入率は0.1%(1000粒に1粒)だから、着色粒だけに限ってみれば、全量が1等米になるのは、3回除草区だけだ。
本紙1947号で紹介した滋賀県のJAグリーン近江大中の「湖ヒノヒカリ特許栽培生産部会」は、(1)穂が出る前後に草を刈る、(2)被害の少ない水田内部と被害が集中する水田周辺部を別々に収穫する、(3)周辺部の米は色彩選別機を通し斑点米を除去するという仕組みをつくり、地球環境問題の解決と人類・地球の持続可能性に貢献する技術100件を選ぶ「愛・地球賞」を受賞した。
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クモハリカメムシ |
トゲシラホシカメムシ |
ホソハリカメムシ |
◆産地での発生抑制や斑点米除去努力が必要
検査の段階でもモミや玄米を剥いて調べるが、斑点米など着色している米が入っていると、消費者から必ずといっていいほどクレームがくる。そのため、精米工場では色彩選別機を導入し、着色粒が製品に混入しないようにしている。しかし、着色粒が混入していると精米工場では歩留が悪くなり、稼働率が低下することになるので、着色粒がない米と着色粒が混入する米を同じ価格で取り引きすることへの不満や除去費用を請求されることもある。
斑点米は間違いなく消費者からのクレーム対象になるので、消費者に届く前に誰かが除去しなければならい。そういう意味でも、産地がカメムシ類の発生を抑制したり、斑点米を除去するなどの努力をすれば「あの産地の米は品質が良い」という評価となり、継続した取り引きにつながることになるだろう。
18年度から農産物検査が全面的に民営化されるが、その移行段階にあるいま、JAや全農県本部・経済連を中心に約1万人の検査委員がいるが、前述のような消費者ニーズに応えた米を届けるために「この人たちには、客観的・公平・中立な検査を行なうことが要求されるが、これに応えるためにも検査・鑑定技術を磨いて欲しい」と江渡課長補佐はいう。
斑点米のない高品質な米を消費者・実需者に届けるために、カメムシ類がほ場に入り込むこれからの時期に、キチンとした対応をすることが肝心だといえる。
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