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解説記事 |
小売りのノウハウを蓄積し販売支援機能を強化する |
インタビュー 三富不二夫 JA全農燃料部長に聞く |
JA経済事業改革のなかで、JA―SSの赤字解消は重要な柱とされている。JAエリア戦略や収支改善運動など、JA石油事業を支援する諸施策を進めることで、黒字SSが50%台に回復するなど一定の成果があがってきているといえる。経済事業改革のテーマにはなっていないが、電気など他エネルギーの攻勢などもあって、これからもガス事業が従来の収益を確保できる保証はないといえる。 そこで、今年1月に全農燃料部長に就任された三富不二夫氏に、これからの燃料事業の課題とめざすものを聞いた。 |
◆黒字SSが51%に回復 ――石油事業 ――まず、1月に部長に就任されましたが、これからの抱負をお話いただけますか。
石油事業については、昨年、JAを支援するために全国に10カ所の事業所ができました。そうした現場とのコミュニケーションをはかりながら、本所として彼らが動きやすいようなバックアップ体制を強化していきたいと考えています。昨年は事業所ができたばかりということもあって、事業所長会議が十分に開けませんでしたが、これからは年に3〜4回くらい開き、コミュニケーションを深めていきたいと考えています。 ――事業所は部長の直轄という位置づけですね。 三富 本所の課と同じ位置づけです。私がすべて見なければいけないのですが、そうもできないので永井次長に専任で担当してもらうことにしています。――JA―SSの赤字解消はJA経済事業改革の重要な柱の一つに位置づけられ、全農としてもJAエリア戦略をはじめとする支援策を実施してきましたが、成果はどうですか。 三富 15年度末の状況ですが、黒字SSの割合は前年度よりも2.3%増えて50.9%となり、50%の大台に乗りました。しかし、石油業界は厳しい状況にあり競合も激化していますので、赤字解消には時間がかかります。◆小売店舗として集客力を高める ――SSの収益を上げるためには何がポイントになるのでしょうか。 三富 経済事業改革を進めるために県域のマスタープランを策定しましたが、コストを低減する改革案が中心になっています。それはそれでいいのですが、SSも小売業ですからお客さんがたくさん来店して、売上げが増えることが大前提だと思いますね。そして、店舗運営をローコストで合理的な体制でやるのか。この二つが揃わないと収支は改善できないと思います。小売店舗として考えれば、いくらローコストにしてもお客が来なければ意味がありません。JA―SSの場合、築後20年以上が69%もありますから、改装するとか建て直すとかして、お客さんが来たくなるような雰囲気をつくらないければ売上げは伸びないと思います。 ――そうした投資がしにくい条件もいろいろありますね。 三富 そうですね。◆増える受託運営方式 ――受託運営の件数も増えているようですね。 ――受託は今後も増える見通しですか。 三富 県別マスタープランを集計してみると、連合会で投資と運営をというのが、20年度までに173SSあります。それ以外に投資はJAでするけれど運営は連合会でというのもあります。――受け皿つくりも大変ですね。 三富 受託の受け皿会社の柱である全農エネルギー(株)の体制強化をはかり、運営のノウハウを蓄積していきます。と同時に投資をしてお客さんが来やすい施設にしないと黒字化が見えてきませんから、全農エネルギーの自己資本比率を高めるために増資をすることを総代会に提案しようと考えています。いずれにしても、受託する以上はすべて成功させるべく頑張っていきたいと考えています。――商系の場合、廃業などでSSの数が減ってきていますがJA―SSの今後の見通しは…。 三富 JA―SSは16年3月末時点で約4500SSありましたが、県別のマスタープランを見ると約1800カ所が廃止の方向です。残る2700の内、投資はしないけれどライフライン的SSとして残すのが1300カ所ですから、基幹SSとして位置づけられるのは1400〜1500カ所ですね。新設するのも200カ所ほどありますから全体では3000カ所程度になると思います。しかしSSの数は減っても、事業基盤を強くして取扱数量は伸ばしていこうと考えています。 ◆卸から小売りへの転換で ――そのためには1SSごとの売上げを伸ばしていかなければならないということですね。 三富 私は前から「卸から小売りへ」と言ってきましたが、連合会も小売りの世界へ出て行って直接売ることを含めて、小売戦線に対応できるノウハウをもってJAの小売りをサポートする力をどれくらいつけることができるかが、われわれの事業が生き残るポイントだと考えています。このため平成7年ごろから、JA―SSブランドとチャネルの確立に努めてきましたが、このことは、自身でブランド力を継続的に高めていくということです。物流や購買チャネルの分野は、基地から配送までの体制ができていますから、ある程度、完成形に近づいてきていると思います。 石油事業は、輸入段階からコストは見えていますし、品質にも大きな差がありませんから、これからはますます売ることに力を入れていかないとダメだと思いますね。 ――売る力をつけることとローコスト運営の2要素が揃わないとダメだというお話でしたが、そういう意味ではセルフがこれからの主流になるといえますか。 三富 改装をしたりするときには、基本的にセルフ化を促進します。なぜかといえば、現在の8円程度のマージンで運営のあり方をシュミレーションするとセルフSSでないと黒字にならないからです。それから、最近は慣れてきたこともあってか、フルサービスよりセルフが良いというお客さんの方が多くなっています。◆販売所の集約と小売機能の ――ガス事業についてはどうですか。 三富 ガス事業も競合が激しい業界で、都市圏ではガス会社同士が顧客を取り合うような状況になってきています。それに加えて、電力会社がオール電化ということで参入してきていますから、供給戸数が毎年減ってきています。――そうしたなかで、これからのガス事業のポイントは何だとお考えですか。 三富 JAのガス事業をみると、配送や検針が自動化されていますが、反面農家に対する推進体制が弱くなっています。もう一度、価格・サービス・保安のいずれをとっても、お客様満足を実現できる体制を作り直さなければいけないと思います。そういう意味では、農家組合員の人たちが来店したくなるような小売店的な機能をもった「JAのエネルギーのお店」というようなイメージをもった店舗をつくったり、これを効率的に行うために1万戸くらいを対象に販売所を集約してサービスなどを提供できるような体制をつくっていってはどうかと思います。ガス事業は経済事業改革の対象品目にはなっていませんが、電気など他エネルギーや業界内の競合が厳しくなってきていますから、いままでと同様に収益が保てることはあり得ないので、これからどうやっていくのかという県単位のマスタープランも策定することが必要だと考えています。 ――1万戸ということになるとJA域を超えるケースも出てきますね。 三富 経営受託方式とか事業移管方式を含めて、どうやったら消費者にとって一番いいのか検討することだと思います。そして、販売所も先ほどいったように小売店的機能をもって、農家に行っていろいろな推進ができるようにする必要もありますね。岐阜では県内4カ所に販売所を集約しましたし、千葉や山口などでもそうした動きがあります。◆事業受託で小売りノウハウを蓄積 ――販売力を強化することが最大のポイントですね。 ――物流コスト低減も大きなテーマだと思いますが… 三富 県本部・経済連間の業務提携はもとより、JAグループとか県域にとらわれず、元売・大手卸業者との充填・配送などの共同化をすることが、物流コストを低減するためには一番効果的だと思いますね。そのうえで、販売で競争する時代になっていくのではないかと思います。――石油事業もガス事業も販売力をどうつけるかがこれからの課題ということですね。 三富 先ほどもいいましたが、「卸から小売業へ」ということで、小売りのノウハウを蓄積し、それを活かしてJAの事業をサポートしていくことだと考えています。 ――ありがとうございました。
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(2005.2.25) |
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