アジア各国の農協育成、人材づくりを支援しているIDACA(アジア農業協同組合振興機関)の常務に11月1日、塚田和夫前全中常務が就任した。JAグループが掲げる「アジアとの共生」の理念を踏まえて、EPA締結国への対応なども含め、多様化する途上国のニーズへの対応が課題だという。改めて抱負などを聞いた。
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◆各国の運動に格差ひらくなかで
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略歴(つかだ・かずお)昭和20年富山県生まれ。昭和45年全中入会。平成8年農業対策部長、平成10年農業基本政策対策部長、平成11年総務企画部長、平成14年全中常務理事、平成17年IDACA常務理事。 |
昭和45年の全中入会後、5年間、国際部に所属。当時、経堂(世田谷)にあったIDACAで研修生の現地視察同行などにも携わった。それから30年経ち今度は実務のトップとして町田のキャンパスに。
「30年前との違いは、国によって研修に対するニーズに差が出るようになったこと」だという。
かつてはどの国にも農協づくり支援が課題となったが、韓国や台湾は今や日本と変わらないまでに協同組合運動が定着し発展してきた。むしろ日本と同じようにグローバリーゼーション、規制緩和の流れのなかで農協がどう対応すべきかに共通の課題がある。
一方、インド、タイなど事業、運動が発展しつつある国のほか、ベトナム、カンボジア、ラオスなど協同組合法制度の整備から始まって、「民主化の過程のひとつとしてこれから協同組合運動を普及させよう」という段階の国もある。設立から42年経ち研修生は4800人を超えているが「課題解決のためにJAバンクシステムに関心のある国もあれば、戦後の復興期の日本の経験が役立つ国もある」というように、きめ細かな研修カリキュラムが一層期待されている。
◆食の安全テーマに研修も
また日本とEPA(経済連携協定)を締結した国への対応について塚田常務は、「単なる貿易の自由化ではなく、農業協力を含めた広範な連携を図ろうというのがEPAの趣旨。JAグループと連携してIDACAとして準備をしておかねければならない」と語る。
アジアへの支援ではたとえば、食の安全性の確保がある。安全性はどこの国でも求められる課題。
生産、加工、流通を通じた日本の農業者、JAの実践は大きなヒントになる。実際に年明けのタイからの研修生には食品安全を中心とした初めての研修を実施する。
研修生受け入れで気を使うのは食事。宗教、信条から肉など食べられない研修生も多い。同じ国ならともかく複数の国からの受け入れとなるとメニューにも一苦労だ。もちろん専属のコックがいて対応しているが、こんなところにも多様なアジアの姿がある。
「それは農協についても同じで、それぞれ置かれた環境からわれわれに質問してくる。本当に的確に答えているのか、講義もニーズに合っているのか、相手を知るために正確な意志疎通が大事だと痛感している」。
常務就任後、初めての開講あいさつでは「英語原稿の読み上げではなく、きちんと研修生に向って話していた」(同職員)。
アジアの農協の姿を的確に国内に伝える役割も期待される。
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