農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
産直生協の進路はどこか
東都生協総代会から


「自立した対等の関係」とは何かが問われる
 激論沸騰の総代会、それが都内4大地域生協のうち東都生協(組合員21.6万人、供給高397億円―05年3月末現在)だけの恒例である。
 2005年度総代会はさる5月26日、都内で開かれた。確かに今回も議論は激しかった。第7次中期計画(2005〜2007年)が審議され、とりわけ都内大手生協として、その中期路線が注目されたからである。しかし総代会の論点は今日の情勢に照らして、建設的であったとは思えない。何故か。
 第1に、「産直」「協同」「民主」という基本理念の進化である。東都生協は長年この課題を掲げてきた。そこに2002年の産直豚肉問題、2003年の産直米問題が起きた。この深刻な事態を凌ぐのに相当の討議をした。その結果、方針上はこうなった。「消費者と生産者が互いに自立した対等な関係のもとで、食と農に結びつける取り組みを推進します」。具体的には「地域総合産直の到達点の整理」、「産直運動と事業による実効性ある政策づくり」をするというのである。
 そこにすでに確立した5つの産直原則(産地明確、生産出荷明確、環境保全型、美味・鮮度、交流)が大きな風呂敷としてある。産直原則はすでに成熟している。一方見直しも大胆であるべきだ。この矛盾の解決に「(仮称)産直政策タスク」を立ち上げるとしている。それなら「自立した対等の関係」とはなにかが当然、問われる。どうも、そういう議論に発展しないで執行部批判になっているだけだ。
 これは日本農業の展望にもかかわる。輸入農産物の急増のなかだからこそ、提携産地の大胆発言もしっかり引き込んでもらいたい。「食料自給率の向上」を強化するといっているのだから、特に要望したいところだ。
 第2に生協商品政策である。仮称「新さんぼんすぎ商品」ブランドが提起された。3本杉は生協のシンボルマークである。
 総代からは、スーパー商品とどこが違うかなど極論もあった。要するに組合員が商品開発に参加できる余地がないと疑っている節がある。開発作業を組合員参加で進めるのは、どこでも生協の特徴である。不思議なことではあるまい。これに対して、職員中心になって組合員発言ができなくなるという心配に総代の意見が集中する。これまでの経過があるからこういう疑念が残るのだろう。議論を深めれば良いという一般論で済まないことなのだろう。
 第3に、事業連加入問題である。方針上は「東都生協の政策と合致する商品や産地と共同開発、商品の相互供給等の連携を模索し、事業面で相互に協力し合えるものについて検討を進めます」とある。どこの事業連合にも加盟しないという説明だった。
 ところが総代論議はここに全く集中しなかった。事業連合という組織は2次組織であって、組合員にとってはどうでも良いことなのかもしれない。

◆日本生協連の「農業提言」にも発言を

 最後に付け加えたい。今回日本生協連が発表した「日本の農業に関する提言」についてである。7年ぶりに提言したとある。関係資料の『国内農業視察報告書』、『欧州視察』を合わせて読むことができる。2004年5月、日生協理事会に検討委員会が設置され、国内・国外視察を含めて計画的に提言作業をした。当然経過は傘下生協には報告された。だが総代会には、このことに触れた部分は全くなかった。日生協総会が終って、これから本格討議になるらしい。旗幟鮮明な提言の最大ポイントは意欲ある農業者に農業予算を限定しろというのが中心だ。そうなら産直提携産地からの意見聴取も必要だし、堂々反論すればよい。「産直政策タスク」に深く関係するはずだ。今後産直の東都生協らしい、相当の論議を期待したい。

(財)協同組合経営研究所 元研究員 今野 聰

(2005.6.28)


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