◆総合事業の基礎条件
JAの生活活動の今後の展開方向を検討するためにJA全中に昨年12月に設置された「JA生活活動研究会」がこのほど報告書をまとめた。
研究会は今年1月から6回開かれ、JAが行う生活活動は「組合員の豊かな暮らしを支援する活動」であり、それはJAと組合員・地域住民を結びつけるだけでなく、組合員同士、さらに組合員と地域住民とのつながりも築く活動だと結論づけている。
こうした人と人のつながりを築く範囲を研究会では「コミュニティ」と定義。組合員や地域住民が豊かな暮らしを送るためJAは「コミュニティ」を再構築する役割があることなどを提起した。
研究会座長の石田正昭三重大学教授は報告書の「とりまとめにあたって」のなで、今後の生活活動を考えるうえでの視点として、JAの地域協同活動は「総合事業展開のための基礎的な条件」と提言。
地域協同活動とは、コミュニティを単位とする地域づくり・村づくりや生活文化活動、教育広報活動などの総称であり、「JA運動の展開に不可欠な」基礎的な活動だと指摘、これを抜きにしては「JA事業を展開できない格別の性質を持っている」と強調している。
◆支所の役割が重要に
報告書では、組合員・地域住民が自主的に参加するJA生活活動を展開することによって、農産加工や直売所、福祉事業など新たな事業を切りひらく可能性があることや、組合員のみならず職員の活性化、活用に結びつくほか、縦割り化した事業に「横串」を通す役割も果たすことなどJAの生活活動の意義を整理。
とくに地域に根ざした「活動」から「事業」を生み出すというコミュニティ・ビジネスの展開は民間企業ではまねのできない「JAの強み」だとして、活動と事業の関連性を明確にすることを今後の課題のひとつとしている。
一方、今後、生活活動を展開するにあたっては、組合員・地域住民の願いやニーズを把握することも課題となる。
そのための方法としてアンケートや個別訪問など組合員の声を聞くルートづくりに取り組む必要性をあげているが、とくに「役職員がアンテナを高くして情報収集」し生活活動を再構築していくべきことを強調している。石田座長は「縦割りの事業に横串を通すのは組合長しかいない」と指摘している。
人材育成では、職員のコミュニケーション能力を向上させるためにボランティア活動への参加を職員教育に位置づけることなども提起した。
また、活動の範囲は、相互のコミュニケーションが図りやすいことや、従来からの組合員とJA、住民同士のつながりが強い支所を単位として実践することが現実的であると報告。
石田座長はこの点について支所を金融・共済特化型店舗にしてはならないと提言、多くの人が訪れるような集会機能、相談機能を備えた生活活動の拠点として考えていくべきだという。
◆連合組織の体制づくりも課題
そのほか生活活動の経費も課題となるが、活動がJAの基盤維持・強化につながる取り組みであれば、人件費・活動費を共通管理費として配賦すべきとした。また、活動費の確保については剰余金を「生活活動基金」などの目的積立金とする方式や、ファンド積立なども提起している。
そのほか、石田座長は連合組織の協調体制づくりの重要性もあげ、総合事業性を持つJAの活動、事業に対して連合組織としてもそうした総合性を「JAブランド」として確立する支援が不可欠とし、具体的な例として、現在、検討されている総合ポイント制の導入にも協調体制が必要などと提言している。
報告書にもとづき、今後は3月にJA全中に設置された「くらしの活動強化推進委員会」で具体的な取り組みが検討されることになっている。
(くらしの活動強化推進委員会委員)委員長:茂木守JA全中副会長、副委員長:黒木義昭JA広島中央会専務、委員:相澤成典JAみどりの組合長、鈴木章文JAあずみ組合長、奥田克也JAあいち豊田組合長、中家徹JA紀南組合長、萬代宣雄JAいずも組合長、松尾照和JA糸島組合長、佐藤勝哉JA福島中央会常務、荒木健雄JA和歌山中央会専務、石田正昭三重大教授、小田切徳美明治大教授、宮下弘JA全農専務、今尾和実JA共済連専務、山ア直昭農林中金専務、矢木龍一JA全青協会長、大蔵浜恵JA全国女性協会長、向井地純一JA全中専務、前澤正一JA全中常務。
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