農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事

回収拠点の整備など進め利用拡大図る
「やまびこくん」利用で紛失弁済方式導入
JA全農生産資材部



 通い容器(コンテナ)による青果物物流は、環境に配慮しコスト縮減につながる取り組みとして注目されている。しかし、容器の回収がスムーズに進まないことや、段ボールに比べて割安感がないことなどから、なかなか本格的に普及しない。通い容器による流通の現状と普及を妨げる問題点を探った。

通いコンテナを使用している主用品目
通いコンテナを使用している主用品目

  18年9月に策定された『食料供給コスト縮減アクションプラン』の中で、通い容器を本格的に普及させることが明記された。今年3月15日、全農も参加し関係者一体で「通い容器普及促進協議会」を立ち上げ、返却容器回収拠点の整備、紛失防止システムのあり方、回転率向上のための方策、通い容器対応選果ラインの整備、通い容器に適する品目選定、IT技術の活用、の6項目の検討課題を話し合い、9月27日に検討結果を『通い容器の本格的な普及に向けて(提言)』として公表した。その中では、回収拠点の整備、実在庫の把握、利用産地拡大による周年活用、などの取り組みを急ぐ必要が述べれられている。

◆通い容器は出荷容器の3%程度

 実際の物流現場では、品目に合わせて効率的な大きさを選べる、箱そのもので産地ブランドをアピールできる、専用の選果ラインが整備されているなどの利点があることから、現在段ボールでの流通が主役となっている。
 通い容器については、業界全体で年間2500万〜3000万レンタル(1レンタルとは1回貸し出すこと。同一容器が年間4回貸し出されれば〈4回転すれば〉4レンタルとなる)が利用され、出荷容器全体の3%程度と推定されている。

◆「やまびこくん」導入でデポジット料不要に

 全農は産地での在庫管理や事務処理の省力化・合理化をめざし14年6月から一部のJAと卸の間で、インターネットを利用した通い容器の受発注システム『JAリターナブルシステム(愛称「やまびこくん」)』を稼働させた。JAを対象にし、使用には会員登録が必要。「やまびこくん」の端末に入力すると容器メーカーに発注でき、容器納入後に産地の在庫として計上される。そして、産地からの出荷情報を入力すれば、産地の在庫が減少するという仕組だ。そのことで、通い容器のリアルタイムでの在庫管理が可能となった。
 通い容器は、1容器につきレンタル料(型式によって価格が異なる)に加え、デポジット料として250円が必要となる。デポジット料は使用後紛失等の事故が無ければ返却される。紛失保証金の意味合いがある「デポジット方式」は、リアルタイムで在庫管理ができる「やまびこくん」利用によって、在庫数量確認時に紛失分だけを弁済する「紛失弁済方式」に変更が可能となり、使用時にはレンタル料のみの支払で済み、生産者の負担を軽減出来る。
 「やまびこくん」で使用するコンテナ業者は『イフココンテナ』(イフコジャパン株)と『三甲コンテナ』(三甲リース株)の2社。容器は折りたたみが可能な樹脂製(原料:ポリプロピレン)で、底面が60cm×40cmで統一され、作物による大きさの違いは高さ(最高24.5cm)で調整している。「やまびこくん」は現在、24道府県で導入され、年間約600万レンタルの利用がある。全農では今後、全ての県での活用を進めたいとしている。

◆原油価格高騰が利用拡大につながるか

 通い容器のレンタル料は、段ボール価格(前出)に比べ、ほぼ同じか若干上回る水準にある。しかし、高い鮮度・品質の保持能力、作業効率の向上などの点で通い容器は優れているのに加え、環境に配慮した取り組みとして、消費者にアピールできることから、使用については小売側からの要請が強い。また、ここにきて、原油価格の高騰から段ボール製品の値上がりが現実のものとなってきており、段ボールとのコスト比較で通い容器に対する需要が増すのでは、と関係者は期待している。

(2007.10.23)

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