農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
「経営所得安定対策等実施要綱」決定
生産現場への定着、国の検証が課題



  7月末に担い手に施策を集中させ、品目横断的な直接支払いを導入するなどの「経営所得安定対策等実施要綱」と、19年産から農業者・農業団体が米の需給調整に主体的に取り組む新システムへ移行することなどが決まった。JAグループでは予算規模が4130億円と現行を上回る規模となったことを評価する一方、米の計画生産の実効確保、地域実態に即した担い手づくりなどにJAグループ自ら取り組むことや、国として新たな政策が現場に定着するよう検証の継続が必要だとしている。

◆数量単価は3年間固定

 「品目横断的経営安定対策」の予算総額は1880億円。対象品目が麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょとなっている「生産条件不利補正対策(ゲタ)」は1400億円となった。
 支援水準のうち、過去の生産実績に対する面積支払いが7割、数量支払いの割合が3割とされた。小麦では10アールあたり2万7740円、数量支払いは60kg2110円(Aランク・1等)と決まった。支援水準としては10アールあたり4万400円で、平均単収に換算すると60kg6250円となる。現行は6610円。
 大豆は面積支払いが同2万230円で数量支払いが60kg2736円(2等)。支援水準としては10アールあたり2万8900円で数量換算では8540円と現行の7990円を上回った。
 JAグループは、数量単価の設定では、良品質生産に結びつき、努力した生産者が報われるように決められるべきと主張してきたが、数量単価は当面3年間は固定することになった。また、麦については現行の流通コスト助成に相当する額を組み入れ、別途対策として20億円(ランク区分見直しへの支援策13億円、追加契約麦への措置7億円)を確保し今後、活用手法を検討していく。

◆過去実績ない場合は別途対策

 品目横断的に面積支払いで経営を支援する対策では、過去の作付け実績が支払い基準となるため、今後の生産調整の拡大などで麦、大豆の作付け面積が過去実績よりも増加した場合の支援措置が焦点となっていた。
 今回の決定では、担い手育成・確保総合対策として180億円を確保し、このうち70億円を過去の生産実績のない事例に対する予算として、品目横断的な直接支払いの枠組みとは別に支援する。
 農水省は過去の生産実績がなく別途対策の対象になるケースとして▽過去の生産実績を持たない農業者から農地を取得して経営規模を拡大。自らの過去の生産実績以上に麦・大豆などを生産する、▽過去の生産実績を持たない農業者から農地を取得して新規に参入する、▽米の生産調整の強化に対応し麦・大豆などの生産を行う、の3つの類型をあげている。
 また、米も対象品目となる担い手への「収入減少影響緩和対策(ナラシ)」は総額300億円に決定。5年中3年の基準収入に対し減収分の9割を、生産者1対国3の積立ての範囲で補てんする。
 ただ、JAグループは米価の大幅な下落によって基準収入が下がれば、補てんを受けても所得は大きく減少するとの懸念もあるため、計画生産に取り組む担い手の所得確保のための対策が必要だと主張してきた。
 この点については与党の議論で、収入所得が大幅に下落する場合には「担い手経営安定のための万全の対策を講じ、あわせて集荷円滑化対策の的確な実施等の対策を講じる」との文書が示された。

◆非担い手対策に290億円

 米政策改革推進対策は合計で1850億円。このうち産地づくり交付金は1330億円で3年間同額。また、生産調整の特別調整加算に対する交付金を拡充した新需給調整システム定着交付金が150億円となった。これは転作作物の定着状況によって都道府県配分が見直される。
 また、現行の稲作所得基盤確保対策に代わり、担い手以外を対象とした新たな対策として、稲作構造改革促進交付金を決めた。米価下落の影響を緩和するための仕組みとして、非担い手に10アールあたり4000円の一般部分と担い手集積加算として同3000円とした。担い手集積加算は、たとえば、2年後に担い手要件を備えた集落営農組織に移行するなどの計画が明確であれば対象となる。
 総額は290億円程度だが2年目には270億円、3年目には220億円と総額を減らす。また、290億円のうち50億円は生産調整の面積拡大を想定した分だが、県段階の判断で持ち越し在庫の保管経費などの助成に振り向けることもできる仕組みとした。
 集荷円滑化対策では、生産者支援金を現行の60kg3000円から4000円に引き上げた。10アールあたり1500円の拠出金は変わらない。また、生産者支援金に基金をあてた後に十分な資金が残る場合は生産者拠出金は返還される。
 また、この対策は豊作で過剰となった米が対象でこれまでは出来秋に区分出荷されたものとされていたが、翌年に持ち越し在庫となった米も豊作分の過剰であれば、対象とすることができるよう拡充された。
 そのほか耕畜連携水田活用対策として50億円程度が確保された。

◆先進的な営農活動を支援

 「農地・水・環境保全」は、総額300億円。このうち農地や農業用水などの資源保全のための「共同活動支援」分は270億円。単価は都府県の水田が10アール2200円、北海道が同1700円などとすでに決まっている。ただ、地域の実情をふまえて地方裁量で、支援総額を変更せず対象面積を2倍まで拡大することが可能となった。
 そのほか、資源保全の取り組みをステップアップさせるため「促進費」として高度な資源保全活動や環境保全活動が行われている場合に、取組み水準に応じて地区あたり10万円または20万円が交付される。
 一方、環境負荷低減など先進的な営農活動を行っている地域に対する「営農活動への支援」は10アールあたり水稲3000円、麦・豆類1500円、果菜類・果実的野菜9000円などと水準が決まった。作物類型で7区分し、これに該当しない作物の場合は10アール1500円とした。この支援水準は国費負担分で同額を地方自治体が支払うことにしている。
 品目横断的経営安定対策など合わせて3つの対策のほかにバイオ燃料の利用促進のための予算を100億円計上することも決まった。

19年度以降の品目横断的経営安定対策の概要
(2006.8.11)


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