農業協同組合新聞 JACOM
   
解説記事
県域規制の緩和など
生協法改正の方向まとまる

生協制度見直し検討会



◆「全体としては受け容れられる内容」−日本生協連

 生協法(消費生活協同組合法)は、昭和23年(1948年)に制定されて以来、約60年間実質的な改正がほとんど行われず今日に至っている。そのため「社会・経済状況の変化や生協自身の発展にともなって、実情との間に大きな齟齬をきたしている」(日本生協連)ことから、日本生協連は生協法全体の見直しを求め、昨年5月に「生協法改正要求案」をまとめ法改正をめざす取組みを進めてきた。
 こうしたことを受けて厚生労働省は「生協制度見直し検討会」(座長:清成忠男法政大学名誉教授)を設置し、組織・運営規定や共済事業に関する制度のあり方を中心的な検討事項としながらも、購買事業における員外利用や県域規制の緩和など、日本生協連などが求める問題なども含めて生協制度全般について検討。11月22日の第8回検討会で「生協制度の見直しについて(案)」(中間とりまとめ)をまとめた。
 日本生協連は11月29日、「中間とりまとめ」は「全体として受け容れられる内容である」が、「それぞれの措置の具体的な内容については、必ずしも十分でない」部分もあることや今後の詳細検討に委ねられている事項もあるので「今後の検討経過を注視」していくとの見解を明らかにした。
 検討会で検討された事項は多岐にわたるが、とくに注目すべき点に絞って「中間とりまとめ」のポイントと日本生協連の見解をみていきたい。

◆実情にふさわしいガバナンスのあり方を提起

 「組織・運営規定」について「中間とりまとめ」は、理事会・代表理事制の導入、解散・合併の総代会議決、役員選任制度の導入、員外役員枠の拡大、監事の権限整備、組合員代表訴訟の制度化などガバナンスの強化と外部者による監視機能の強化。法令違反などに対する行政庁の措置命令に従わない場合の解散命令の強化。連合会会員の出資口数の限度(現行2分の1)の撤廃などを提起している。
 これについて日本生協連は「今日の生協の実情にふさわしいガバナンスのあり方を実現する上で大きく前進した内容」と評価。そのうえで、員外監事について経済事業を行う生協・連合会のうち「一定のもの」に設置が義務づけられているが、「中小規模等の生協の実情を踏まえたもの」にすべきだとしている。組合員監事なら「手弁当」だが、員外監事だと報酬を払わなければならずコスト負担が増加し、中小規模生協の経営を圧迫するおそれがあるということだろう。

◆県域規制は緩和、員外利用は原則禁止を維持

 「県域規制」については、「購買事業の実施のために必要な場合」との条件はあるが「主たる事務所の所在地の都府県の連接都府県まで」地域生協の区域を拡大することを認める方向を示した。これによって、現在の事業連合だけではなく、県域を超えた店舗の展開などが可能になり、事業を行うための選択肢が広がることになる。
 これについて日本生協連は「硬直的な現行法の規制が緩和」されると評価しつつも「購買事業の必要性という限定条件の再検討を期待する」とした。
 「員外利用」については「原則禁止の枠組みを維持する」が「相互扶助組織という理念の中で、それに反しない限りで見直しを行うべきである」。具体的には、山間僻地・離島などでの物資提供、老人ホームなどへの食材提供など許可を必要とするもの、災害時の緊急物資の提供や体育施設・教養文化施設の利用など許可を必要としないものを「法体系の中で限定列挙」するとしている。
 これについては許可を必要としない「員外利用を認める事由」が拡大する方向で示されているので、「具体的な法令の検討の中で更に充実を図る」としている。

◆共済事業については兼業を禁止

 「共済事業」については、「他の協同組合法における規定の整備状況を参考にしながら、法改正を行うことが必要」とし、契約者保護と経営の健全性、組合員ニーズに応える円滑な事業遂行について方向を示したが、概ねJA共済に準じる内容となっている。これについて日本生協連は「現状に比べて前進した内容」で「他の協同組合法の水準を考慮した妥当なもの」と評価。 その中で「規模が一定以上の共済事業を実施する」場合、単位生協、連合会を問わず「他の事業を兼業することができない」と兼業禁止の方向を示した。ただし「他の生協との契約により連帯して共済契約による共済責任を負担し、かつ、当該共済責任について、自らが負担部分を有しない生協については、兼業を可能とする」としたことについて日本生協連は、「リスク遮断の見地での兼業規制の導入は必要な面がある」が「導入基準については組合員の生活上のニーズに応える単位生協の総合性に十分配慮すべき」との見解を示した。

◆共済の兼業禁止、出資口数撤廃などに反対を表明
  生活クラブ生協連

 なお、生協連合会のコープネット事業連合と生活クラブ生協連がそれぞれ12月12日に厚労省に意見書を提出している。
 コープネット事業連のそれは基本的に日本生協連と同趣旨だが、生活クラブ生協連は「協同組合の社会的価値や役割についての本質的な論議が充分に行われず」、共済の兼業規制、県域規制緩和、連合会の1会員出資口数撤廃など「実務的な改定だけが先行」していけば「社会からは、生協側が営利企業と同一の条件の下で競争を行うことを求めているのだ、と見られかねず、生協・協同組合の公共性や非営利性に対する社会の認知や理解を損ない」かねないとし、「共済と本体事業の兼業規制、連合会会員の1会員の出資口数限度の撤廃」について反対を表明した。
 以上見てきたように、細かな点を除けば概ね農協法の水準に追いついてきたといえるのではないだろうか。むしろ、いまや全国で6000万人を擁するまでに発展してきている生協に関する法律が、昭和23年に制定されて以降、今日まで基本的に改正されずにきたという事実に驚かされる。
 今後は、12月12日に締め切られたパブリックコメントなどを含めて検討会で最終とりまとめが行われ、法案作成、与党確認、閣議決定、国会上程へと進むことになるが、できれば来年6月の通常総代会までに法案が成立することを日本生協連では期待している。

(2006.12.19)


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