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シリーズ 生協―21世紀の経営構造改革−−4

女性の経営参加は
ジェンダーフリーから始まる

ドゥコープ 理事長
中島拓子氏に聞く


インタビュアー:協同組合経営研究所元研究員 今野聰

 1951年に埼玉県南部に「蕨生協」として設立したというから歴史は古い。供給高112億円、4.4万組合員(2001年3月末)まできた勢いを一層前向きに展開出来るか、その構造改革の中心に座る女性のパワーを探った(今野)。

「ドゥコープ」とは行動しよう!の意味

 今野 ここしばらく「狂牛病」問題がニュースになっていますが。

 中島 ドゥコープは首都圏コープ加盟生協なのですが、首都圏コープデータでは肉牛の飼育に肉骨粉は使われません。安全が看板の生協ですから産地の点検調査に入っていますし、狂牛病の学習会を準備しています。リスクのない商品は少ないと思います。狂牛病、環境ホルモン、農薬など不安の種は山ほどある中で、選択する立場で考えるとトレーサビリティは重要だと思いますし、牛肉を注文するとき、安心して買ってもらえる情報が必要です。

 今野 ところで「ドゥコープ」という呼称はどういう意味ですか?

 中島 「ドリーム」「ドラマチック」「ドゥイング」の3つのDです。「行動する」「やる気になる」などを意味しています。新しい生協にしようと言ったときに、前の名前「わかば生協」、それ以前の「蕨生協」にかかわりのない、新たなスタートにふさわしいものにしたかったのでしょう。

 今野 それでカタカナ文字になった?

 中島 組合員から公募したんですが、当時、カタカナ名がブームだったこともあるでしょうか。

抵抗あった理事長就任

(なかしま たくこ)昭和30年佐賀県生まれ。平成2年南埼玉生活協同組合わかば理事、6年生活協同組合ドゥコープ理事、9年同生協副理事長、11年同生協理事長。

 今野 理事長は何年目ですか。

 中島 結婚してから大阪、東京、埼玉と転居はしましたが、生協にずーっと入っていますが、この生協に入って17年ほどです。理事長は3年目です。

 今野 じゃ相当の生協経験ですね。

 中島 当初、皆さんと同じで生協って1つだと思っていた、ずぶの素人でした。たまたま社宅に旧わかば生協の班があり入りました。

 今野 理事長は2期目ですね。初めて理事長にと決断したときの気持ちはどうでしたか。

 中島 自分がそんな器じゃないからと心底思ってましたから、嫌で嫌でしょうがなかったですね。副理事長を受けたときも理事長のお手伝いをしよう、あくまでも組織をよくするためのサポート役ということで受けました。世間知らずでしたね。

 今野 理事長受諾の時、ご主人とは相談されたのですか?

 中島 相談したわけではありませんが、副理事長を受けた時に、その先が決まっていたんだよと言われ、3年目にしてハッと気づいたというわけです。


多様な組合員で成り立っていると実感

 今野 今年は、どんな総代会だったんですか。

 中島 99年度で供給高100億円を越えて、ようやっと世間で言う1人前になりました。現在組合員が4万人いますから、反対意見も含め、当然いろんな意見が出ます。全員賛成、それは望ましいことですが、むしろ反対意見が出てあたりまえだと思っています。

 今野 というとなにか問題があった?

 中島 定款改定案などがあったために、動議提案、修正案などが多かったですね。いままで経験したことがなかったことですが、いろいろな組合員参加があって、生協は成り立っているということが分かって、その意味では大きいと思います、いい意味で勉強になりました。でもそのことでエネルギーが裂かれたことも事実です。

 今野 そういうときは理事長答弁だけ?

 中島 いいえ、理事、職員一丸となって答弁にあたりました。


個配事業では単協の実状にあった対応が

 今野 これから個配事業展開の展望をどうみていますか。

 中島 これから生協の真価が問われると思います。生活はこれからますます厳しくなると思います。そんな中で生協が生活者の暮らしを支えていくわけですが、生協はちょっと高めですね。しかし「生協は商品がいい」と思った人が誰でも買える、手が届く程度の安い価格帯で供給出来ることは大切だと思います。

 今野 秩父地区の個配事業はどうなりました。

 中島 クロネコ便は新しい試みで期待も大きかったのですが、システム変更など当初の見込みと違いが生じ、採算面で難しくなり自前の配送に切り替えている最中です。

 今野 ところでUコープとの合併はありますか。

 中島 同一県内で同じパル・システムですから、利用者の立場で考えればいいことだとは思いますが、現時点ではありません。

 今野 他生協でも個配をしていますが、競合の対策は。

 中島 そこなんです。10月1日から、配布料をさいたまコープと同じ180円にしました。

 今野 じゃ他生協に追随ですか。

 中島 結果的には、今回は追随というカタチになってしまいました。この先、限りなく0円に近づくことを考えると、戦略が重要になります。

 今野 そうすると、元首都圏コープ・下山理事長が言った展望ですが、全国の個配システムを単協間の垣根を低くして社会的インフラとして繋ぐ、そこに首都圏コープが役割を果たすという、いわゆる「プラットホーム理論」は現実と合わないことになりますね。

 中島 具体的な展望にまで到っていない、と思います。確かに物流の効率化は必要ですが、単協ごとの実状に合ったきめ細かな対応も重要だと考えています。

 今野 チラシのライフステージ別3体系「マイキッチン」(育ち盛り子供世帯)、「YUMYUMヤムヤム」(赤ちゃんのいる世帯)、「Kinari(きなり)」(少人数世帯)は、女性の目としてはどうなのでしょう。

 中島 これからですね。「きなり」層は熟年層だけでなく、生活にこだわりを持つ若い世帯にだっています。ひとりひとりの生活スタイルにあった商品のみが案内できたらいいですね。3媒体はその第1歩といったところでしょうか。

 今野 では協同という部分はどうなるのですか。

 中島 今の生活者は身の回りの協同ではなく、精神的な意味で協同したいのだと思います。モノをまとめて買ってどうのじゃないところに来たと思いますね。
 面倒くさいことはやりたくない、煩わしい人間関係で縛られたくないと言ってもいいのではないでしょうか。個配が身に合って、共同購入に戻るということはもうないでしょう。カルチャークラブとかサークルで知り合って仲間になるのとは違う関係だと思うのです。

 今野 それもまた新しい協同ですか?

 中島 多分インターネットなんかのアクセスで、かえって関係がみえるのだと思います。インターネットを含めてITを使いこなす「マイキッチン」世帯なんかでそういう人が増えたということでしょう。


女性が“担っている”と実感できるように

 今野 女性の経営参加とよくいうけれど、どうですか。

 中島 人材育成をしてこなかった生協運動のツケがきていると思います。生協も男性社会の延長なのです。経営を動かす女性の育成プログラムを作りたいですね。
 女性が動かしていると実感できる実力の養成が必要ですからね。心底から女性が担うという実感を持ってないと、小手先の構造改革に終わってしまいますし、せいぜい女性は参画程度で終わり、これじゃ駄目ですね。男性が生協経営のすべての分野で女性を取り込むときに、初めて始まるのです。とくに団塊世代の男達がどう実行するかです。

 今野 戦後エプロン主婦から始まって、専業主婦、ウーマンリブ、フェミニズム、そしてジェンダー(社会的性差)まで来た歴史ですから…。

 中島 女性とことさら言うのではなく、ジェンダーフリーの考え方が必要です。

 今野 福祉事業も同じ意味ですか。

 中島 10月から訪問介護事業がスタートしました。この事業については女性は、気持ちプラス実務能力も身につけたプロなんです。 


競争力ある自立した農業に期待する

 今野 最後に農業・農協について。

 中島 競争力のある自立こそ期待したいですね。守りでは駄目じゃないかと思います。これからの農業に必要なのは保護を抜け出すことですし、活力をもった農業後継者を育てることですね。そうした発想を転換した人達に期待します。
 ヘルマン・ヘッセも人生の究極の贅沢は農業をすることといっていますが、人生を究めるとそこに行き着くのではないでしょうか。

 今野 厳しい提言になりましたね。         





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