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シリーズ 2002コメ改革

生産調整研究会「中間とりまとめ」とJAグループの考え方
安定供給の確保 国の役割が必要

 JA全中は、政府の「生産調整に関する研究会」の中間とりまとめ「米政策の再構築に向けて」についてのJAグループの考え方を含め、組織討論のポイントを7月11日の理事会で決めた。その基本的な考え方は(1)主食である米は国が役割を果たして安定供給を確保、(2)国の需給計画に基づき計画生産を実施することが基本、(3)生産調整は、生産面積による管理を基本に過剰米処理を組み込んだ仕組みとすること、(4)現行の稲経は、需給調整メリット対策など改革の内容をふまえて必要な見直しを行うことや新たな経営安定対策などである。ここでは中間とりまとめのポイントとJAグループの考え方を紹介する。

◆「総論」部分の「自己責任」は削除
 
 6月28日の第7回全体研究会では、長時間の議論の結果、何カ所かの修正を加え最終的に別表のような概要の「米政策の再構築に向けて」がとりまとめられた。
 ここでは議論の経過をふまえながら、修正部分を中心に中間とりまとめのポイントをみてみたい。
 総論では米づくりの本来あるべき姿が記されているが、それは「需要に応じた売れる米づくり」を「効率的かつ安定的な経営体が市場を通じて需要を感じとり」行っていくこと、としている。
 原文では、そこに「自己責任に基づき」の文言が入っていた。
 しかし、この「自己責任」に対し、委員から「言葉が一人歩きしてその意味が正確に伝わらないことが懸念される」、「作る自由、売る自由と同じニュアンスで受け止められる可能性が高い」などの意見が続出し削除された。
 そのうえで、○需給調整に関する行政と生産者団体の役割を根本から見直すこと、○その実現に向け、実行プログラムを策定し必要な条件整備を実施する、こととされた。

◆「生産調整」の“選択”を「経営判断」に修正
 
 生産調整のあり方については、原文では、自由な作付けを行うかセーフティネットに参加して生産調整を行うかを「選択」しつつ、全体として需要量に見合った生産を確保する仕組みが望ましい、とされていた。しかし、「農村の仕組み、集落の仕組みを考えると生産の選択という形にならない」など、零細・兼業も多い水田農業の現状を考えると、需給ギャップを改善するには「選択制」は無理との主張をふまえて、「選択」は削除され、農業者の「経営判断」により全体需給を確保することが望ましいとされた。
 また、供給量の調整は当初から数量を基本とする方向が打ち出されていたが、「一気に変わることは危険」、「実際は面積でやることが基本」、「数量と面積の両方があってはじめて過剰米の把握ができる」などの意見を受けて、「実効性ある具体的手法については更に検討を深めるべきである」とされた。
 さらに焦点となっていた需給調整参加のメリット対策と麦・大豆等の対策など地域の特色ある農業展開のための施策を「分ける」という当初のとりまとめ案については、「メリット措置の検討はこれからであり、検討の足かせにならないよう留意が必要。水田農業の構造改革を進めるうえでは分けずに進める必要性も出てくる」などの意見をふまえ、「分けて設計すること」に修正された。
 稲作経営安定対策については、原文では「原則廃止」の文言が盛り込まれていた。が、委員からは「経営所得安定対策の具体策が見えないなか、廃止と言えば混乱する」、「現在14年産の契約を行っているところで、廃止の議論は無神経すぎる」などの意見が続出し、結局、「需給調整への参加メリットを明確化することを前提に現行稲経を廃止」との文言に修正された。

◆過剰米対策の具体化を盛り込む

 過剰米の処理については大きな議論となった。原文では「自己責任による余り米の処理」と項目として記されていた。
 この部分について、JAグループは、短期的な需給調整は避けられない実態にあり、自己責任だけでなく政府の制度として対策を措置することが基本との考えを主張しており、最終的には項目の見出しから削除、本文では「自己責任で処理することを基本」を「自己責任を基本とし、具体的な処理方法を検討すべきである」と修正された。
 同時に、過剰米対策についてJAグループが研究会に提示した「過剰米対策の必要性と具体的仕組みの考え方等について」をさらに具体化することが今後の検討課題に盛り込まれた。

◆流通制度は「原則自由」を「必要最小限の規制」に

 流通制度について、原文では「原則自由、例外規制」のもとで安定供給を図る、とされていた。
 これに対し「計画外流通米は地方都市中心で、大都市では計画流通が7割が実態。原則自由でいいのか」、「自由になると検査義務などの規制が必要になる」などの意見が出され、「必要最小限の規制の下で安定供給を図る」こととされた。
 そのほか、新たな経営所得安定対策の対象については「需給調整への参加を用件とすべきかどうかについても検討する」とされた。また、担い手の支援・育成については、「集落営農も含めたものとすべき」との主張がとりまとめには盛り込まれなかったものの、議事録には明記されることになった。

◆具体策の検討によっては「基本方向」の修正も
 
 JAグループは中間とりまとめについて、米政策の改革の必要性や対応方向の考え方など、基本的な認識は一致している。ただ、JAグループの主張が盛り込まれなかった部分もあることや、具体策の検討は今後に委ねられることから、JAグループとしての考え方を打ち出した。
 その基本的な考え方は、米は主食であり唯一自給できることから、安定供給には「国が一定の役割を果たすこと」であり、国の需給計画に基づく計画生産と実施すること、としている。
 そのうえで生産調整の手法については「生産面積による管理を基本に過剰米処理を組み込んだ仕組み」とすることが必要との考えだ。また、その際、公平性を確保するため物理的定着分を除くなど実質水田面積のあり方を検討することも必要だとしている。
 メリット対策では、「生産調整未実施者との公平性を確保し、簡素で分かりやすい仕組みが必要」で、「地域の関係者の合意に基づく地域の取り組みを生産者が選択でき、これに一括して助成金を交付する仕組みが必要」としている。
 また、主業農家と副業的農家の問題は、「主業・副業の区分ではなく集落営農も含めた“新たな担い手制度”を確立する」ことが必要としている。
 過剰米処理対策は、豊作や需要減からその発生は避けられず、「政府の制度として対策を措置すること」が基本で、その仕組みとして、(1)過剰分を安価に出荷し処理することを生産調整の要件とする、(2)過剰米を加工用途などに安定的に供給するための「加工用等備蓄制度」の創設、(3)安価出荷に対する生産者全員の公平な拠出の仕組みづくり、を求める方針だ。
 計画流通制度については、計画外流通米との競争力を強化する観点から「期別販売計画の廃止など計画流通米の規制を緩和する」ことが必要としている。
 そのほか、JAグループの米事業については(1)集荷中心から販売中心の事業へ転換、(2)多様な需要への対応や組合員の多様な取り組みへの対応、(3)委託販売・共同計算の仕組みの改善、(4)県間流通銘柄における協同と連携の取り組み、を挙げている。
 いずれにしても中間とりまとめは、基本方向のみを示したもので、具体策はこれからの検討になる。その具体策の結果、今回示された基本方向については「見直すこともある」ことは、研究会で確認されている。また、中間とりまとめに盛り込まれていない事項についても、検討しないという意味ではないことも確認された。
 JAグループは、8月中下旬まで生産現場で具体策づくりのための討議を進め、9月初めに政策提案を決定する予定にしている。




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