昔から伊賀米の評価は高い。大阪の入札取引には伊賀のコシヒカリが区分上場されている。だが生産者の7割強が副業的農家だ。主業はわずか7.7%。準主業は21.8%。経営主の年齢は60歳以上の男子が44.5%となっている。
JAの組合員アンケート調査では、コメづくりの作業の一部を「委託している」が32.9%。これに「全部委託している」を合わせると46.4%。
「10年程度先の稲作をどうするか」の質問には全部または一部を「委託したい」が21.7%。「集団転作」が23.5%。受け皿としてはJAの支店ごとに受託者部会がある。窓口は支店だ。
「地域に必要なこと」という質問には「受委託組織の強化」という回答が14.3%とトップ。次いで「高齢者への営農支援」などがあり、4番目には「集落営農・地域営農の強化」が挙げられた。
だが、農水省の「生産調整研究会」の中間取りまとめは集落営農に冷たい。そこには「主に兼業農家で組織される集落営農は::一般に組織体制の継続性を保証する仕組みが不十分であり、地域の営農の持続的な発展のための原動力に欠ける面がみられる」とある。
◆「一村一農場も」
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松生憲一常務
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こうした研究会の議論の方向でいくと「集落営農は強化どころか、崩壊の一途をたどるしかないだろう。この点が一つ今後の討議の問題点となる」とJAの松生憲一常務は指摘する。
集落営農の活動形態は極めて多種多様だ。伊賀の場合も受託部会の強化が期待されるし、昔から営農組合などといった名称で集落営農がかなりある。
管内1市2町2村のうち大山田村には1村1農場を目ざす社団法人の大山田農業公社がある。各集落の土地利用組合が作業の受委託託をあっせんしているが、担い手がいない地区も出てきたため8年前に村とJAと農業者が4000万円ずつ出資して村全体の受け皿として設立した。
それでも、まかない切れないため今年4月には、公社の中に作業受託をする農業生産法人をつくった。
こうした実態から松生常務は、主業と副業の区別ではなく、集落営農を含めた「新たな担い手制度」の確立が必要と主張する。
◆副業的農家も努力
「転作は副業的農家の協力があってこそ100%を達成してきた。その人たちが協力しないといい出したら集落営農の強化もない。これまでも主業農家には、片手間に少しのコメしか作っていない副業的農家と同じように転作しなければならないのかなどという不満が強かったが、そこを集落や営農組合の中で話し合って納得してもらってきた」と現場の困難を語り、市町村職員の中にも自分の田で転作に協力しない人がいるなどの実態も挙げた。
そして「生産調整はJAだけですべてをやれるものではない。これまでも市町村とタイアップしてきた。主食の自給を考えた安定供給のためには、やはり行政の指導が重要だ。安全安心の問題もあり、国が一定の役割を果たす必要がある」と主張する。
ポジ配分については、農家ごとに「決められた生産数量に合わせた作付面積を割り出して作っていくのは難しい。結局は余り米が出る。やはり面積配分がよい」とのことだ。
◆伊賀、甲賀の転作率に差
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伊賀米のイメージキャラクターは忍者=JAいがほくぶの看板 |
伊賀は甲賀と接している。畔一本で隣の田は滋賀県側で転作率は28%ほど。ところが伊賀側は40%近い。どうして、こんな傾斜配分になるのか。三重県に質問しても答えは返ってこない。不透明だ。
県間の傾斜配分の基準は農水省に聞いてもはっきりしない。また転作率は市町村間でも差がある。
伊賀米はおいしい銘柄米として区分上場もされているのだから消費拡大につなげるためにも転作率緩和してほしいと県に要望しているが、実現しない。
こうしたことから転作の話し合いでは、まずは身近な農協が組合員から悪者扱いされると常務は嘆く。
品質の格差も考えて、この辺は全農自身も全国的な視野でもっと調整できないものかと松生常務は、共同計算のあり方も含めて首をひねる。JAグループの主体的な需給調整の仕組みづくりも今後の討議の重要ポイントだ。
傾斜配分のもたらす不公平感とともに過剰米の処理対策の不公平がある。
◆過剰米処理は、援助? の構図
JAいがほくぶの集荷率は90%強だ。数量で22万俵。生産力30万俵のコメどころだけに、この調整幅は大きい。さらに全量集荷に力を注いできた。
ところが全農の共同計算では22万俵の代金に対して過剰米処理費がかかってくる。全量集荷に努めれば努めるほど負担は重い。 集荷率が50%を割るJAもあり、そこでは負担は軽い。また計画外米を売る農家は負担ゼロだ。
そういうところの過剰米処理負担までを、まじめにやっている組合員が援助している構図だ。コメどころのJAでは生産調整が響いてカントリーエレベーターやライスセンター、また育苗センターなどのコストが負担も重くなり、問題山積だ。
このため常務は「生産者全員が平等に過剰米処理負担をすべきだ」と強調。「面積単位で負担すればよい」と提起する。
稲作経営安定対策については「稲経があるから転作にも協力してくれる。経営所得安定対策が確立するまでは当然、継続すべきだ」との主張だ。
組合員の不公平感が募っているためJAへの風当たりも強い。ところが武部勤農相は農協系統組織について「改革か解体か」などと批判する。「これには腹が立つ」と怒る。
◆農相発言の刺激
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いざ畦道へ、庭先へ、営農相談車の勢ぞろい
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しかし一方では、この一連の発言からJAへの関心を呼び覚まされた組合員もいて、貯金にしろ共済にしろ協力的になってきた人も目立つというから、農相発言は逆に刺激になったというエピソードもある。
JAはいま伊賀米の品質均一化に向けて、高温障害を軽減する運動を進めている。酷暑の中で稲に無理をさせ、高単収を求めるとでん粉が十分に詰まっていない白未熟粒が増えてしまうためだ。
管内に広報車と営農相談車を走らせ、庭先や畔道でも、この時期の稲管理の注意点をわかりやすく呼びかけ、相談に応じている。
「米政策の再構築」の討議展開を図るとともに、きめ細かい「売れるコメづくり」へのたゆみない取り組みも続けられている。
なお同JAの販売高は58億7000万円、うちコメは38億5000万円、松阪牛に匹敵する伊賀牛に豚を含めた畜産が15億1000万円、園芸が3億円、麦・大豆が2億円など。しかしBSEの影響で牛の販売高減少が手痛い。