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シリーズ 2002コメ改革 |
(社)日本経団連の立花宏常務は農水省の生産調整研究会のメンバーであり、個人的には「コメだけは構造改革を前提にして危機管理、食料安全保障の上からも特別な位置付けを与えて何とか国際交渉でも守れるものは守っていきたい」という。対談では梶井功・東京農工大名誉教授が経団連の提言をめぐり、農産物の内外価格差について、米国でさえ国際価格への収れんは不可能であり、新農業法による手厚い農業保護になったことなど挙げ、経団連の考え方を聞いた。立花常務は直接所得補償の必要性を説くなど、この問題は対談の一つの焦点となった。 |
梶井 昨年の「通商立国・日本のグランドデザイン」という経団連の提言は、最後のほうで通商立国には国内体制の改革が必要であるとし、その一環として農政問題を取り上げていますが、農業関係者の間では余り知られていないようです。 ◆構造変革は先進国共通 梶井 提言の前段には例えば自由貿易協定(FTA)の問題などがあり、これはこれで大いに議論が必要ですが、きょうは農政に絞って、経団連として一番問題にしている点をまずおうかがいしたいと思います。 立花 経団連が農業問題を勉強してきた経過を振り返りますと、まず戦後の食料難の時には食糧増産委員会を設け、肥料や農薬、資材の供給を拡大する対策などを外貨不足の事情などもにらみ合わせて考えてきました。 梶井 それは経団連の考えている基本線ですか。 ◆避けられない2極分化 立花 そうです。2極分化が歴史的にやむを得ないとすれば土地基盤整備をテコに構造改革を進めることです。大規模ほ場を借りてプロが生産し、そこから地主組合が地代を得て、さらに集落の一角に、ほ場を用意して大多数の兼業農家や都市住民がライフスタイルとして年をとっても農作業を楽しめるようにできればと思います。 梶井 集落営農の中にもそういったことを典型的にやっているところがあります。今のほ場整備は1ヘクタールほ場が普通ですから、集落で取り組めば必然的に耕作の共同化に迫られます。そこから機械の共同利用や作業のオペレーター委託などの集落営農体制ができてきます。しかし、オペレーターにまかせきりでなく、例えば畦畔の草刈などや、水見廻りなどお年寄りもできることをやるという形です。集団的な協定による土地利用ですから、転作でもブロックローテーションなんか非常にやりやすい。 立花 それらをやるには借地でやるしかないのですよね。 梶井 結果としては土地の利用権をどこかへ集中しなくてはいけませんが、このほうがスムーズに動かせます。 ◆法人化への挑戦も課題 立花 角来のような例があてはまらない地域もあります。中小企業振興もそうですが、基本は地域住民が知恵を出し合い、協力して生き残り策に取り組むことです。誤解があるかも知れませんが、よく地域の生産集団は機械の共同利用などにとどまっていて、悪くいうと無責任体制みたいな形で、結果的には余り構造改革につながらないといったところがあります。 梶井 性急にやっても利用権は動かない。大野市の例のように時間が必要なんです。最近は法人格を持たない生産組合なども組織を永続させるために自ら法人化を考えざるを得なくなっています。私は今の農事組合法人の仕組みは余り適切ではないと考え、むしろ集落で株式会社をつくるなら、そのほうがいいなとさえ思う。地域の実情に合ったタイプの法人を育てていく必要があります。 ◆急がれる後継者の確保 立花 もう一つ農業サイドの方々に考えていただきたいことがあります。農業は高齢化の最先端にいますが、後継ぎのいない高齢者は自分の家だけでなく集落全体の後継者難にも不安を抱いています。そのことを都会にいる息子や娘たちと家族会議で真剣に議論し、自分たちはこれからどうするか、その上で集落としてどうするかを共有してほしいと思います。盆や正月に帰郷した時にでもね。 梶井 おっしゃるとおりです。農家の生活設計の相談に親身に応えなければいけないのがJAの営農指導員やJA共済のライフアドバイザーです。農地をどうするとかね。農地の制度はだいぶ変わっていますがまだ知らない農家があります。それが本来あるべきJAの営農指導事業でしょう。 立花 そうした相談活動を先行させてほしいですね。 ◆一律な価格支持より直接所得補償の形で 梶井 ところで経団連の提言は農産物価格を国際価格に収れんさせていくような仕組みを強調しています。米国では正に農産物価格が国際価格と連動していますが、それでは農業経営が成り立たないという現実から、今回の農業法改正で実質的な不足払いを復活させました。それも不足払い制度を一旦やめたときに導入した固定払いを残したままで、です。 立花 いえ、価格支持はやめたけど別の形で実質的には価格支持があるということです。 梶井 いや稲作経営安定対策にしても事実上、機能しなくなって米価はどんどん下がっています。だから価格支持制度はなくなったと見てよいのです。 立花 私どもは通商立国を前提に他の産業と農業を両立させるために優良農地保全などを追求していくことが極めて大事なことだと考えています。それには同じ通商立国である英国がかつて導入した不足払い制度が一つのモデルになると考えます。一律的な価格支持よりも直接所得補償です。関税を下げ、究極的に水際の障壁を低くした場合の国際価格と、国内の合理化された生産コストとの差を直接支払いにし、消費者や食品産業は国際価格で買うというのがありうべき政策の姿ではないかと考えます。日本の農産物価格は欧米より数倍高い。この価格差を消費者負担でなくて財政負担型にし、また品質や安全性でも競争力をつける仕掛けが必要です。これはWTO交渉をにらんだEUとの協調などの点からやらなくてはいけないと思います。 梶井 財政負担でやれということを経団連も支持するということですね。最後に、食品会社をはじめ企業の不祥事が続いていますが、企業モラルについてはいかがですか。 立花 経団連には企業行動憲章があり、これの浸透に努めています。さらに奥田碩会長の指示で企業行動委員会の中に部会を設け、問題を起こした企業のトップに経団連の役職をやめさせたり、または除名するなどの厳しい規定をつくるかどうかの検討を始めています。
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