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シリーズ 地域が変わる、人が変わる、組織が変わる――ファーマーズ・マーケット
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◆120本のトウキビがわずか1時間で売切れに
朝9時過ぎから、JA道央・Aコープ江別店の前には大勢の人たちが、10時の開店を待っていた。お目当ては地元の生産者が今朝収穫したばかりの農産物を並べている「もぎたて市」だ。店内では、もぎたての野菜などを運んできた「もぎたて市・産直部会」の人と青果物担当者が平台や棚にトマトやナス、アスパラガスなどを陳列している。 ◆「もぎたて市」の売上げがそっくりプラスに
Aコープ江別店が、「地域の食を守り、地域の活性化を支える」ために、道内Aコープ店に生産者直売コーナー「地元でとれたて! もぎたて市」を設置しようというAコープチェーン・北海道の提案を受けて、この「市」を立ち上げたのは今年の5月28日。この日の売上は2万2500円。その後、6月104万円(1日平均4万1509円)、7月212万円(同7万8656円)、8月274万円(同10万1414円)と、スタート時の4倍以上に伸びている。しかも通常の野菜売場の売上は「市」開設以前と変わらない。つまり店としては、「市」の売上がそっくり従来の売上にプラスされたことになる。 その要因はいろいろあるが、一番は生産者と店側のコミュニケーションがしっかりとれていることではないだろうか。Aコープ江別店の「もぎたて市・産直部会」に登録している生産者は27名。ほぼ週1回の割合で打ち合わせをして「誰が、何を、どれくらい」出荷するかを決め、1つの品目に集中しないようにしている。店の青果担当者は、この部会情報をもとに、通常の野菜売場の品揃えや仕入量を調整して「市」と野菜売場が競合しないようにしている。部会の会議には広野和行店長(JA道央経済部生活課)も出席し、お客さんの反応など店側の情報を伝えている。「生産者と店との協力関係をどうつくるかが大事だ」と広野店長は強調する。 江別店の成功もあって、いま道内23店舗のAコープに「もぎたて市」は広がった。15年度中には80店舗に拡大する予定だ。 全国Aコープチェーンでは13年度から、地産地消を進めるために、各店舗に生産者直売コーナーを設置することを提案・推進してきている。現在、全国490のAコープ店舗に設置され、その数は「加速度的に増えてきている」(指田和人JA全農生活部チェーン運営課長)。当然、競合する量販店も同様なことを考えてくるが、それは生産者にとっては流通チャネルが広がり、「所得が確保され、地域農業の振興につながる」という相乗効果が期待できるのだから、着実に進めていきたい。いずれは、会社化された700店舗全店で実現したいという。 北海道では8月をピークに、9月になると品揃えが難しくなり、11月になれば本格的に冬の季節となり、「もぎたて市」は来春まで事実上お休みとなる。江別の部会のメンバーは、自分たちで直売所を開いているが、今年の経験で「道端で売るよりも店で売る方が客数も安定している」「自分のモノが売れたのも嬉しいが、消費者が農協に来てくれることが何よりも嬉しかった」と「もぎたて市」に力を入れている。だから、来年は例年よりも早くビニールハウスを作り、4月上旬からトマトをメインに、もぎたて市に出荷しようといっている。消費者から支持され確実に生産者の意欲が高まってきている。これが、今年の取組みの最大の成果だといえるだろう。
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