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シリーズ 地域が変わる、人が変わる、組織が変わる――ファーマーズ・マーケット

モノ・ヒト・情報が交流する「ひろば」

「とれたて元気市」  JA全農ひろしま


240坪のスペースに多彩な県産品が

広い店内にはとれたての多彩で
新鮮な広島の野菜がいっぱいだ
 100台以上駐車できる広い駐車場の向うに、一段高くなったプラットホームがあり、そこがJA全農ひろしまが運営する「とれたて元気市」の店となっている。店内に入ると240坪強の店内がすべて見通せる。どこか普通の店舗と違う感じがする。柱が1つもないのだ。旧広島経済連の生活センター倉庫を改装したからだと説明を受けて納得する。
 店内には余裕をもって平台が置かれ、「日本で収穫できるものはすべてある」とさえいわれる広島県産の多彩な農産物や加工品が並んでいる。通路はカートが余裕をもってすれ違えるスペースがあり、子ども連れでも楽に買物ができると好評だ。


生産者名だけではなくレシピも添えて

 それぞれの商品の側には、生産者の名前と地域名、特徴などが書かれた紙が置かれ「顔の見える」工夫がされている。一度買って美味しければ「誰それさんのをまた」という消費者も多い。広島市安佐北区でキュウリを生産する佐藤和夫さんは、品質はいいけれど市場出荷できない規格外品や「元気市」用に栽培しているトマト、ナスを自分で持ってくるので、直接お客さんと話す機会も多い。
珍しい商品には
レシピも添えられ好評だ
 例えばトマトは真夏の陽射しが強く暑いときには味が落ちる。そんな時に「近ごろ、味が落ちたんじゃない」といわれると、工場製品ではないので自然条件の変化で農産物の味が変わることを説明し「もう少し涼しくなるとまた美味しくなります」と説明し納得してもらう。ここは「モノ」だけではなく、消費者と生産者という「ヒト」そして「情報」が交流する「ひろば」になっているのだ。
 野菜コーナーには、トマト、ナス、キュウリなど定番商品だけではなく、「ピー葉」(ピーマンの葉)や「花オクラ」、「芋つる」など、消費者にはあまりなじみのないものもある。こうした商品には調理の仕方や食べ方のレシピが添えられている。買物に来ていた主婦は「珍しいものだし、レシピがあるから買おうという気になりますね」とピー葉を2袋カゴに入れた。


おいしくて新鮮な広島をおなかいっぱい味わってもらう

 この「とれたて元気市」は昨年10月6日にオープンして1年が経った。県単位でのファーマーズ・マーケットは全国でも珍しいが、その設置目的を企画段階から立ち上げまで携わってきたJA全農ひろしま総合対策室の坂本和博営農対策課長は「地産地消運動の実践として、各JAの参画による『JA交流ひろば』を設置することで、農産物の産直ルートの開拓と、消費者と生産者の交流をとおして、『食』と『農』の距離を縮小すること。そして農業所得の向上によって地域農業の活性化とJAのPRをはかる」ためだという。
 県内各地には、数多くのファーマーズ・マーケットがある。しかし、県内最大の消費地である広島市のその中でも人口急増地域である安佐南区に設置することで、より多くの消費者に「おいしくて新鮮な広島をおなかいっぱい味わって」もらうことで、「作って、売る人が元気になる。買って、食べる人が笑顔になる」そういう「広場」となるようにということだ。

倉庫を改装したJA全農ひろしまの
「とれたて元気市」

集客力の強化と品揃えの充実が課題

 現在の登録生産者数は34JA(旧JA単位での登録もある)628名だ。昨年10月のオープン時には368名だったから260名増えたことになる。9月の1日平均売上げは約40万円、来店客数は350人。オープン時に比べると減少しているが、今年4月以降の推移をみると着実に売上げも客数も増えてきている。だが、「元気市」の責任者である三宅弘道JA全農ひろしま農産課直販係長は「目標は1日1000名の来店者、1000名の生産者登録、1日100万円売上げだから、まだまだ」だという。そして目標達成のための課題は「集客力の強化と品揃えの充実」だとも。
 実際に取材して感じたことは、駐車場に車はあっても、住宅街なのに自転車が1台も見あたらなかった。時間帯別売上げでも昼までにピークは終わり、夕方には品物が少なくなることもあってか、ほとんど来店者がないというのが実態だ。つまり、来店客の多くは、店周辺ではなく離れた地域から来ていて、周辺の住民は夕飯用の買物を競合するスーパーなどでしているということではないだろうか。来店者のアンケートでも鮮度・品質では80%以上の人から「良い」と評価されたが、「品数を増やしてほしい」「旬のもの」や「県内産の珍しいもの」をという要望がだされている。

登録生産者を増やしニーズに応える

 こうした要望に応えるには「少量多品目の生産拡大と登録生産者を増やし、品揃えを充実させる」ことだと三宅係長。特に「広島市近郊の生産者を増やして軟弱野菜など基本的な部分をだしてもらい、離れた地域からは、その地域の特徴ある農産物を旬の時期に出してもらうことで、スーパーにはない品揃えをしたい」と考えている。そして、生産者も消費者も巻き込むようなイベントを定期的に開催し、チラシや広報などで認知度を高めることで集客力をアップすることも計画している。
 「とれたて元気市」は、地産地消の実践の場としてJA全農ひろしまが開設したものだから収支面だけで評価することはできないが、ここが成功しなければ「第2、第3の産直市への広がりがないと思われるので、どうしても成功させなければならない」。品揃えが充実する10月下旬には、開設1周年を記念するイベントも計画しており、「それを機に攻めに転じます」と三宅係長は決意を語った。





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