●農業者の夢と顧客満足を実現
ハナロクラブは、韓国農協中央会が「農業者の夢をかなえ、顧客の要求を満たすために」と設立し、子会社・株式会社農協流通が経営する農産物の小売卸両面の流通機能を持つ、統合的農業マーケティングセンターである。韓国農協中央会では「農産物を中心とした食品部門で、小売と卸を統合した流通業は世界初の試み」と自信を深める。
現在、卸売取引4ケ所、小売販売所が、大型ディスカウント店「ハナロクラブ」3ケ所、スーパーマーケット形式の「ハナロクラブ」9ケ所、24時間営業の「ハナロマート24」2ケ所を経営している。正職員は332人で、非常勤職員を合わせると849人。
1995年に会社を設立。98年1月に第1号店、良才農産物流通センターを開設。以後、ソウル周辺のほか、全国の主要都市にも展開している。
99年には駐在アメリカ軍に対し青果物供給契約を結び。2000年からは駐日米軍に対しても輸出するなど、積極的なマーケティング戦略を展開している。
2000年11月には、インターネット上のショッピングモールも立ち上げ、常に新しいことに果敢に挑戦している。
●農産物自由化対策はマーケティング戦略から
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活気あふれるハナロクラブ店内
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韓国農協中央会がハナロクラブに取り組むきっかけは、農産物の自由化対策である。一連の農協のマーケティング戦略の立案者で、農業担当の政府高官も務めた、アグロフード・ニューマーケティングネットワークのヤンブー・チョー代表は「韓国ではWTO対策として、農協が農産物流通改革に取り組むようになった」と歴史的経過を説明する。日本と違い、韓国では大規模店舗の規制が厳しく10年前までは、大規模なスーパーマーケットは国内になかった。ガット・ウルグアイラウンド合意により、韓国は農産物の自由化だけでなく、流通、金融、外資の投資、サービスなどあらゆる経済分野での自由化を受け入れることになった。
最初に農協中央会が取り組んだのが、卸売市場の民主化。韓国政府に働きかけ、農産物の販売を日本型の公設卸売市場で100%セリにかけることを目標に、集荷業者を生産者団体=農協だけに絞り込むという法案を通過させた。
怒ったのは商系の流通業者である。法律が発効する直前の1994年5月3日に業界全体でストライキを起こした。ソウル市民への8割の農産物流通がストップ、野菜の価格は高騰し、政府は市場法の改正を棚上げせざるをえなかった。この後、商系流通業者にも門戸を開く形で卸売市場法は改正されることになった。
この一連の事件から、農協陣営はより流通機構に深く入り込んだマーケティング戦略の必要性を痛感、大規模流通センターとディスカウント型の大型農産物直売所の建設にたどりついた。
卸売市場の改革も順調に進み、2000年には一時9割を超える農産物がセリを通した取引となった。しかし、大規模流通業の発達で、相対取引が進み、今年は5割以上になる見込み。まさに、日本が半世紀かけてたどった農産物流通の変革が、10年足らずで起きているといったところである。
●国産農畜産物のみを販売
ハナロクラブの業績は順調だ。95年には1200億ウォンだった売上は2000年には1兆4140億ウォンになり、2001年には1兆5350億ウォンに成長した。
2002年には1兆6000億ウォンの売上を見込んでいる。そのうち7550億ウォンが小売部門の売上である。残りの8800億ウォンは卸だ。
小売部門の売上の内訳は、野菜・果物が2350億ウォンと31%、米などの穀類が35%、肉類が16%、魚類が8%、加工食品やトイレットペーパーなどのその他部門が10%となっている。農畜産部門で8割を占めている。
扱っている農産物はすべて国産品だ。「アメリカ産のオレンジやフィリピン産のバナナは置きません。バナナは南の島しょ部に産地があります。かんきつ類も豊富ですから」とマネージャーのソン・クワン・イルさんは、お世辞にも見栄えがいいとはいえない、小ぶりのバナナを見せてくれた。日本のファーマーズマーケットやAコープでは、品ぞろえのため、輸入農産物を扱っているところが多いが、ハナロクラブでは、国産品の販売促進という、本来の事業目的に沿った経営が行われている。日本のJAグループにもぜひ、参考にしていただきたい。
●倉庫型店舗にあふれるお客
第1号店で、卸の流通センターとディスカウントセンター型の大型小売店舗を構える良才店は敷地2万坪、建坪1万8000坪で、駐車場も1万坪ある。1日平均の売上高は卸が20億ウォン、小売が11億ウォンに達する優良店である。
店内はコストコを思わせる倉庫型のシンプルな内装。高い天井にうず高くつまれている加工食品が印象的だ。農産物も山積みにされ、活気のある店舗となっている。
●生産者・消費者双方にメリットのあるシステム
これにより、農家にとっては出荷農産物の適正な価格を保障し、農産物の安定的な販路を拡大している。消費者に対しては、新鮮で安全な農産物を低価格で提供し、年中安定的に供給、物価の安定に貢献している。
そして、(1)生産者と消費者との直取引による流通段階の縮小(2)機械化、電算化、大規模化による流通コストの削減(3)計画生産・計画出荷、注文販売による農産物の需給調整――など流通革命を実現している。
こうした経営努力により荷役作業を軽減、97年から98年で、品目別コストを30〜50%削減している。出荷は大型パレットで行い、青果物の輸送コストを軽減している。出荷している単協は815組合、会員消費者は110万人にのぼる。 (山本和子)
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