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シリーズ 海外に学ぶ農産物マーケティング |
◆農産物流通全体の5%占める
台湾で農業分野での電子商取引(Eコマース)が急成長している。すでに取引額は17億円に達し、農産物流通全体の5%を占めると見られる。IT立国を国策とし、ハード面での環境が整っているだけでなく、インターネット人口率も高いことなどが、この急成長を後押ししている。B2Bといわれる商用の取引だけでなく、消費者が直接農産物を購入するネット産直も盛んだ。台湾は日本と違い、宅配便や生協などによる産直システムが発達していなかった。このため、通常の産直というビジネスモデルを飛び越えて、ネット産直が盛んになったという面もある。中華民国行政院王業委員会技監で、国立台湾大学の劉富善兼任教授に台湾農産物の電子商取引事情を聞いた。 こうした急成長の背景には台湾政府のIT立国としての政策が大きく貢献している。世界のラップトップコンピュータの世界シェア40%を占める。(1)農業分野でのEビジネスシステムのビジネスモデル構築(2)農業団体の電子商取引参入への支援(3)Eビジネスに関する知識の普及・広報(4)データの標準化などのフレーム整備(5)E農業環境の整備――などを行ってきた。 次にインターネットの普及率が51.9%、世界第11位と高いこと。日本はネット人口は5千万人を超え、アメリカに次ぎ、世界第2位だが、普及率は第16位、44.0%にとどまっている。 最後に日本と決定的な差は、産直自体が新しいビジネスモデルとしてインターネットを通して普及してきた点である。台湾では日本ほど、生協や宅配便などが発達していなかった。この分野の潜在需要をネット取引が吸収した。特に米。日本でも宅配、産直で人気の商品だが、台湾でも特にB2Cの主力商品となっている。未発達な産直市場にネットが火をつけた格好だ。 台湾には次のような農業関連サイトがある。 1、efarm(http://www.efarm.org.tw) 農家と漁家が共同で運営するサイト。農産物のほか日用品を提供、台北市、台北郡、桃園市、桃園郡、苗栗郡など台湾北部を中心に配達サービスをしている。2000年に、このシステムは約3億円を売上げた。1996年からB2BとB2Cの取引をしている会員制のサイトだ。 2、農会超市のサイト(http://www.tpcfa.org.tw) 農業委員会チェーンストア向け調達用サイト。全国120の農業委員会のショッピングセンターが参加している。日本のAコープ用のB2Bサイト。食料品の調達コストを下げ、農家・漁家向けの食品品質を向上させるために開設された。取り扱い高は非食品も含め、2000年に1500億円の売上に達している。 3、台北花市電子市場(http://www.tflower.com.tw) 台湾最大の生花市場、台北花卉銷股有限公司「台北花市」が運営しているB2B市場。輸出業者や卸売業者にサービスを提供している。 4、ザ・ブランド食品(http://www.brandfoods.org.tw)。特産品の紹介などをする農業関連情報のサイト。電子商取引はしていない。 5、台北農運銷股有限公司のホームページ The Taipei Agricultural Products Marketing Corporation(http://www.tapmc.com.tw) 6、易得網―農産運鎖知的殿堂(http://eat.nctu.edu.tw)農産物の電子商取引の研究報告などのサイト。 順風満帆に見える台湾の農業分野でのネット利用だが、「さらなる発展の最大のネックは、農家自身がコンピュータ、インターネットを使いこなせるかどうか」と劉教授は分析する。さらにブロードバンドの普及や、法規制、電子認証制度による安全性の確保などの全体的なネット環境の進展も大事だという。 今後の台湾の農業分野での電子商取引の拡大について、劉教授は「台湾で電子商取引は急成長してきたが、あくまでも通常の農産物市場の補完と考えている。せいぜい、10%から20%の市場シェアにとどまるだろう」と予測している。(山本和子) |