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シリーズ 「再生21」への挑戦―コープこうべ

事業競争力の源泉は何か
創造への苦闘

今野 聰 元(財)協同組合経営研究所研究員



◆100年に向けた挑戦
環境と食の安全に「フードプラン」を全面展開
環境と食の安全に
「フードプラン」を全面展開
 コープこうべ(前身は神戸消費組合と灘消費組合)は神戸市を中心に、1921(大正10)年に設立、活動を開始した。戦前戦後を事業継続してきた数少ない生協の一つである。農協運動とも関係が深い。元々兵庫県経済連の準会員だったから、県連が合併した新生JA全農に、298・3百万円を出資している(2002年3月末)。質量ともに日本の代表的生協である。しかも生協運動全体に対して特異な位置をもつ。現在、法的には兵庫県内に限定されているにもかかわらず、ここ何年かは、年間供給高3500億円前後。ダントツを象徴する数字である。しかも生協運動の最高水準を自ら創り、走り続けていることだ。その自己改革は日本中から注目される。逃げ場がないと言った方が良いだろう。単純な比較はできないが、農協生活事業は連合会事業高の最大がホクレンで1169億円。当の兵庫県経済連が397億円(平成11年度)、事業高としてはおおよそ判ろう。
 だからスーパーなど県内小売業との競合条件は、ことのほか厳しい。スーパーは多くの場合全国または県域をまたがってチェーンを結成(店舗連鎖)しているからである。昨年までは長い間、ダイエーが好敵手であった。これからも日本の代表的小売業との凌ぎ合いは続く。だからコープこうべは全国の生協店舗の連帯に問題提起してきた。これからもするであろう。単一生協としては、その事業競争力と源泉はなにか、その興味は尽きない。多くの関連本もある。
 念のため、コープこうべ生協『二〇〇一事業報告書』末尾資料を開く。そこに「日本のおもな購買生協」の2000年度順位(日本生協連調査)がある。単純で誤解を招きやすいが、これからの論考の参考のために、上位2位〜10位を供給高(億円単位)だけを転記する。
 (2)コープさっぽろ1477。(3)コープとうきょう1346。(4)コープかながわ1298。(5)さいたまコープ1024。(6)みやぎ989。(7)ちばコープ701。(8)京都629。(9)トヨタ622。(10)エフコープ565。
 もうひとつ初めに触れておく。日本中どこの生協でも、自らの歴史と存立理念を鮮明にしている。このことは農協以上である。とりわけ大正デモクラシー時代の創立以来80年、創業者・賀川豊彦に代表される「愛と協同」思想はこの生協に血肉化しているといって良い。これも比較になるが東京都に1919(大正8)年創立の家庭購買組合があった。これは1951(昭和26)年消滅だから、戦中に活動していた。そのことは産業組合誌にも記録がある。初代理事長が吉野作造で大正デモクラシーの旗手。本人はクリスチャンであった。しかしこの生協のどこにも「愛と協同」という看板もモットーもなかった。この生協の伝統を引き継がなかったからか、現在、都内にある代表的地域生協にも、同様にない。
 1960年代は全国各地農協店舗がコープこうべにお世話になった。農協店舗事業に大きなロマンをもらった。販売事業でも同様、多くの取引関係があった。そんな縁で、私は1970年代の初期の全農直販事業で、この生協と係わった。第一に販売相手先としてであった。だが、時代の背景もあって、一挙に協同組合間提携課題に入ることになった。そのことは本稿の最後に触れる。最近コープこうべを取材する機会があった。そこには厳しい「再生21」という挑戦テーマがあった。創立百年に向かって日々挑戦する姿でもある。以下この生協の現状と歴史を紹介・検討して、これからの展望を提起してみよう。

◆厳しい経営 現状と「再生21」

 2002年7月現在の最新データがある。やや細かい数字だが、検討の前提として挙げておこう。
 組合員142万人、出資金453.7億円、県内組織率68.2%。供給高は2002年度予算3026.2億円(前年度3020)。組合員一人当たり月利用高17402円。総職員数は13581人(内、正職員数3913人、時間給者8,196人)。総店舗数:154、この内店舗形態別にシーア:1、コープデイズ:7、コープ:83、コープ分店:3、コープミニ:58、コープリビング:1。
 基礎数字から判ることは、組合員利用が不況と消費生活の一般的停滞を反映して、最盛期から比べ下り坂に入り、現状維持ベースであることだ。それを今年度事業報告書から引用してみる。
 「2001年度は経営再生計画の二年めとなり、二年間の[改革(止血)期]を経た[養生期]の三年めとして引き続き[再生21]の三つの基本方針を掲げ、これまでの改革を具体的に成果につなげ、経営体力を養うべく取り組みました」
 驚くことに「改革(止血)」期と言い、創立80周年記念行事を展開しながら、今年度が「養生期」第二年めであることだ。自己改革の執念が見える。ではこの間の供給高推移はどうだったのか。

(年度)
1992
95
96
97
98
99
2000
01
(億円)
3517
3700
3795
3700
3607
3370
3137
3019

 95年震災の翌年をピークに、毎年100〜200億円の供給高減である。平均的年間供給高地域生協が一つづつ消えた計算になる。このことはここ数年間、生協の各種全国集会でコープこうべ報告として、聴いてきた。その上でなおすさまじい数年であったと思う。だから自己改革の一歩猶予もならぬことを実感した。そこで今年、2002年度方針の基調「再生21」を引用しよう。
(1) 生協の基本原則を強め、組織基盤の強化をはかります。
(2) 「くらしの安心づくり」の取組みをとおして、生協運動の社会的評価を高めます。
(3) 生産性向上の視点で、あらゆる事業構造改革をすすめ、「経営の安心」を取り戻します。
「くらしの安心」と「経営の安心」が対になっている。そういう事業構造改革である。「総代会意見と回答」で読む限り、この壮絶な努力は大方支持されていると読めた。   (つづく)




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