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シリーズ JAの現場から「JAのビジョン」づくりに向けた戦略を考える(1) |
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農協・生協・信金の三面体 ◆支店統合せず 組合員数6万弱、出雲市の成人人口の半数を占め、准組合員の割合は8割弱。1996年に合併したが前組合長の約束ということで支店統合はせず、ガイドラインに満たない支店は職員1〜3名の「ふれあい」店舗と称し、信用事業を行わずATMを設置する。その他の支店には営農指導、経済係を1名程度置くことにしている。 ◆農業振興に力を 農産物販売額は約90億。ぶどう等が4割強、生乳や肉牛等が3割強、米などが1/4程度。市とともに21世紀出雲農業支援センターを設立し、市が5名、農協が2名の職員を出して集落営農の育成や法人化に取り組み、法人9、特定農業団体12等を立ち上げ、農協としても3法人に出資している。60代、70代はまだ後継者だという位置づけで高齢農業者も支援し、農協を辞めて就農する50代職員には支援金を出す。営農部内に指導特産課を設置し、京阪神を中心に米やぶどうの市場開拓を図っている。地元のソバといもを使った焼酎を開発し、地元出身者400名に通信販売を行っている。 ◆経済事業の赤字克服 経済事業の赤字ををいかに減らすかが最大の課題で、3割減を目標とし、販売手数料も1.8%から3%に引き上げ、職員の拘束時間も100時間増やして2000時間にしている。資材も全農一本ではなくメーカーと組んでPBの開発等を行っている。◆気を吐くAコープとコンビニ 購買事業180億の内訳は生活用品等が86%、主力はAコープ「ラプタ」7店舗で115億の売り上げ。全店に直売コーナーを設け、出荷者600名で2.2億の売り上げである。2年前から30坪のコンビニ7店舗を出店し、1日700〜800人の来店。いくつかのコンビニにはATMを設置し、また全店で自動車共済の一次受付、農協時間外の受付を行っている。コンビニでは高校生などの若者への浸透を図る。2006年秋に総合ポイントカードを導入し、これを軸に半年で1.2万人も組合員を増やした。貯貸率40% 貯金は2000億円強で横ばいだが、貯貸率は40%を越す驚異的な水準である。常務に地元銀行出身者を迎え、農家を中心に住宅・教育・マイカー・環境等に取り組み、住宅関連会社との連携強化を図り、また地場企業等への貸し出しも行っている。 多様な担い手支援を図る ◆出向く体制の徹底 ◆多様な担い手支援 行政とともに2005年に担い手育成総合支援協議会をたちあげ、農協から2名を協力職員として派遣し、集落営農の法人化に取り組み、70を目標にしている。農協も独自に15項目の担い手支援策を打ち出し、大豆転作機械のリース、施設利用料の割引、自己販売する米の手数料引き下げ、法人出資、大口割引等を行っている。同時に品目横断的政策にのりにくい集落・農家対策としてJA出資法人・アグリパートナー(AP)をたちあげ、農家は APに利用権を設定し、APの作業班としてグループで農作業することで政策対象になれるようにしている。 ◆米と園芸の複合化を 管内の米は約110万俵、そのうち70〜75万俵を農協が集荷する。リスク回避のため全て全農を通しているが、結びつき販売が7割に達する。上場区分は「一般コシ」で価格的に苦戦するなかで、肥料農薬の3割減減栽培に取り組み、ほぼ9割の普及をみている。5割減減のエコファーマーの作付けも1500haに達する。減減栽培用の肥料・農薬は自ずと農協に結集することになる。 ◆経済事業改革は終わった 価格調査を月一回は行い、農薬はホームセンターと同水準にし、価格クレームはなくなった。出資配当を減らし、利用高割り戻しを厚くし、価格引き下げの形で還元したい。 資材は農協に取りに来てもらう引き渡し価格とし、配達料をもらうようにし、物流は全農委託である。 Aコープ、葬祭、SS、クルマ関係等は基本的に直営で、営利に走らないよう会社化はさけている、残る経済事業改革はSSの地下タンクの老朽化対策のみ。 営農指導体制を再構築 ◆先行する部会統一と営農指導体制 2000年から営農指導体制の再編に取り組み、「広域営農指導員」7名を置いて生産部会の地域格差をなくし、共計共販も2002年のいちごを最後に確立した。2003年には「営農経済渉外員アクシュ」9名を本所に置き、認定農業者等1900戸を10日に1回は回らせる。さらに04年に品目横断的政策に対応するため「大型農家班」3名を設置、また地区営農センターには計30名の「営農相談員」を置き、販売業務と兼務する。こうして〈広域営農指導員―「営農経済渉外員」「大型農家班」―営農相談員〉の体制を構築した。 ◆販売戦略の強化 合併初年度と06年度の販売額を比較すると、米が116億から67億へ、園芸がパッケージセンターも併せて105億から131億へ、トータルで251億から228億へ、である。米の大幅減を園芸作の振興、いちご86億円の日本一の産地化でもカバーしきれていない。 ◆果敢な経済事業改革 経済事業の赤字部門はできる限り農協本体からは切り離す方針で、2001年にはSS・クルマ・ガスを子会社「はが野サービス」に移行させ、08年には全農との一体会社に移行させる。06年に観光部門を県旅行センターに経営委託、07年に農機、食材を全農にそれぞれ運営・経営委託する。 外貨と組合員の獲得に成果 ◆担い手支援 ◆外貨を稼ごう 農産物の販売額は合併時の72億円が40億円に減り、うち米の減が1/3、それをカバーするためアスパラに取り組み、現在は40ha、2.5億円で関西一の産地になった。 ◆経済事業改革 資材価格で勝てないのは[予約→早期引き取り→奨励金]のシステムだとして、早期引き取りはやめて奨励金を仕入価格引き下げに回してもらい、配送は全農の三次配送センターに委託した。グリーンセンターが営農センターに併設されたものを含め3つあり、普及OB等の相談員を置いて営農指導等の相談にのる。 ◆進む組合員拡大 中山間の高齢化地域ということで合併から2004年までに組合員が1845人も減った。そこで2005年度から組合員拡大運動に取り組み、後継者や女性の複数組合員化、准組合員の拡大を、職員1人当たり10人を目標に取り組んでいる。結果は差し引き初年度1752名増、06年度1139名増、今年1900名の計画である。「若い人が入ってくれるので将来が楽しみ」としている。 |
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(2007.10.29) |
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