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シリーズ JAの現場から「JAのビジョン」づくりに向けた戦略を考える(3) |
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営農指導を基本とした農協運営で成果 ◆「一歩ずつ、真っすぐに」を基本理念 当農協は盛岡市玉山区を含む2市3町1村からなり、現在、組合員は正・准合わせて16590であるが、そのうち正組合員は68%を占めている。したがって、管内は都市近郊、純農村、山間地が混在しているが、主要な産業は農業である。 ◆地域に対応した営農指導 農協管内は南部、西部、東部の3つの地域に分かれるが、当農協では営農指導こそは「農協の生命線」と位置づけ、各地域に営農経済センターを設置し、それぞれ課を設けて地帯、農産物によるきめ細かい営農指導を行っている。具体的には、米では標高差を活かした品種選択と栽培方法の徹底、野菜では用途などにより収穫期を決め、他産地との差別化が図られている。 ◆「農家手取額の増加」をめざす 当農協では「農家の手取額を増加させること」を重視し、米穀、園芸、畜産のバランスのとれた農産物の販売活動を基本に、「農家・利用者満足度」の追求による農協運営が目指されている。このため販売においても大手量販店、生協、メーカーなどとの提携を強めるなど、マーケティングが重視されている。 ◆地域貢献も重視 「第四次3カ年計画」の基本目標の1つに、「目に見える地域社会への貢献」が明記されていることからも明らかなように、当農協は農業生産と同時に「地域社会」への対応も重視している。このため、廃止予定の支所・出張所の再活用について地域で徹底した話し合いが行われている。 組合員に選ばれる農協への改革をめざして ◆「みりょく満点」統一ブランド確立を重視 当農協は7農協が合併し、現在、正組合員7106、准組合員2759である。その特徴の1つは、基幹作物である米を中心にトマト、キュウリなどの野菜について、「みりょく満点」統一ブランドの確立に取り組んでいることである。栽培方法の徹底、オリジナル肥料の開発と普及、地域の有機質資源を活用した不良土壌の改良などを進めている。これは生産物の有利販売につながっており、また、韓国農協中央会と提携し、本格的なキムチの開発・普及にも努めている。 ◆農家からの米買取制度の実施 当農協は事業改革の一環として、合併を契機に03年から農協販売高の42%を占める米について農家からの買取制を本格化し、独自販売を強化している。委託販売では農協独自の自由な事業展開が制限され、それが他業者との競争を不利にし、農家の農協利用率を低下させている、と判断したからである。買取制は農家と農協との真剣勝負であり、職員のコスト意識が重要となる。なお、生産資材でも入札を行い、価格引き下げに努め、農家の農協利用率を高めている。 ◆廃止出張所の有効活用 組合員の経済的メリットとともに、地域の発展に貢献することも農協の重要な役割である。このため当農協では、広く地域住民を対象とした活動を強め、また、文化・カルチャーなどのソフト面を重視している。一方、廃止した出張所は「ふれあい店舗」として活用し、農協OBを配置し人材の有効活用を図るとともに、組合員・非組合員が自由に利用でき、地域の連絡先や渉外活動にも役立てている。 ◆役職員教育と計画的推進 当農協は07年〜09年を期間とした「第2次かがやきプラン」、「第2次農業振興実践計画」の3カ年計画を樹立し、事業の計画的推進に努めている。この計画を実践していく上で組合員サービスの向上が重要であるとして、職員を減らさず収益向上を目指している。このため役職員教育を重視し、本年3月からは2週間に1回の常勤役員の外務の日を設定し、運営改善に努めている。 ブランドみかんで総合経営を堅持する ◆未合併でみかんのブランドを守る ◆組合員主体の生産・販売 農協にとっては、みかんの生産・販売対策は最重要課題であるが、そこには、(1)三ヶ日みかんの市場調査を徹底し、肥料など独自の生産資材を開発普及している、(2)全園をマッピングしてデータ化し、個人ごとの生産指導を充実している、(3)光センサーシステムの導入など選果を充実している、(4)1960年に「三ヶ日柑橘出荷組合」を結成し、農協と専属利用契約を結び、みかんの生産・出荷対策を組合員主体で行っている、という特徴が指摘できる。 ◆総合経営を活かした農協経営 当農協の組合員一人当たりの貯金高、長期共済保有高は、いずれも全国トップクラスである。しかし、信用・共済事業で成果が得られるのは営農・経済事業により組合員所得を維持向上させているからで、「信用・共済で稼いだ分は営農に回す」理念が徹底している。これが組合員の信頼と結集を強めているのである。 ◆地域住民への対応と農協の役割 当農協の農協祭には農協理念に基づいた5つの目的が明記されている。その内容は、農協祭だけでなく、農協の日常的な運営でも重視され、地域で農協の存在価値を高めている 広域JAだからこそ原点回帰で新たな挑戦 ◆農業を基軸とした広域大農協の挑戦 当農協は知多半島全域の5市5町を区域とする、正・准組合員合計で6万人を超える広域大規模農協である。管内に名古屋南部工業地帯や中部国際空港などがあり、都市化した地域を擁するが、「農業を基軸とした協同活動」を農協運営の基本としている。その理由は、組織が大規模化し、近年、組合員から「農協らしさや親近感がなくなった」などの意見が聞かれるからである。当農協はこれを「原点回帰と新たな挑戦」と位置づけているが、本来あるべき農協を目指した取り組みとして、他の広域大規模農協に重要な示唆を与えるものである。 ◆営農LAの設置と生産資材価格引き下げ 当農協は広域農協であるため、管内に4つの基幹営農センターとそのもとに7つのセンターを設置している。同時に「出向く活動」を重視して各センターに営農LA(購買中心)を配置し、一般の営農指導員(販売担当)と協力し、地域にあった指導を徹底している。また、経済連とも協力し、野菜苗の供給事業など農産物のブランド化を進めている。 ◆地域内販売の多様化と「げんきの郷」 当農協は「『集荷』から『販売』へ」を基本に、農畜産物加工センター(あぐり工房)によるカット野菜や弁当供給、量販店への販売、産直・地産地消などに取り組んでいる。 |
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(2007.11.16) |
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