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シリーズ 農協のあり方を探る−9 |
組合員と日々接するJAでは、具体的な実践こそがこれからの農協のあり方を示すことになる。農薬価格の引き下げや地産地消の取り組みなどで成果をあげつつあるJA新ふくしまの菅野孝志営農経済部長に聞いた。 菅野 全国果樹地帯でも農薬価格の激戦区の福島で農薬について、JA管内のホームセンターなどでの販売価格と横並びにするという取り組みを行いました。 私は市況に合わせた価格設定をして、そのなかで農協への結集度合いがどこまで確保できるのかを考えるべきだと思ったのです。実際にはかなり厳しかったのですが従来の価格を7%から8%引き下げて、ほぼ市況の平均的な価格にしました。しかしそれでJAとしての取り扱い量は10%程度増やすことができました。 今まで農協の資材価格は高いといわれていましたが、引き下げを実行して、組合員に「他と同じ価格じゃないか、それなら農協から買わなきゃ」と考えてもらえる運動をわれわれのなかで起こしていかなくてはならないということですね。 生産資材コストの削減は重要な課題ですが、それは同時に全体としてJAへの結集の度合いをどう高めていくか、を視点に入れて取り組むべきだと捉えています。 菅野 JAの事業は仕入価格に手数料を上乗せして価格を決めているのが普通ですが、管内で売られている農薬価格に合わせるためこの手数料を下げたのです。そうすると経営収支は悪化することも考えられますが、今回はそこに切り込みました。 今までの考え方は仕入値に対して手数料を11%から12%設定し、荒利率を10%確保する、これが主流だったと思います。そして、たとえば、1000円のものでも10%、200円のものであっても10%をという考え方でした。ところが、全体として考えれば、取り扱い量の多い品目もあれば少ない品目もある。それなのに加重平均して価格設定をするということも考えなかった。われわれはそこを考えて全体としていかに荒利率10%以上を確保するのかということを戦略的に考えて価格設定をしました。 すべての品目一律に10%確保ではなくて、加重平均して考えてみると市価品と比較しても逆に12〜13%の荒利を確保できるものもあるわけです。 ◆原価引き下げの努力で結集力の高めることこそ
菅野 実際、手数料率は全体で1%強下がりました。しかし、組合員の利用は10%増えた。ですから、これからのJAの経済事業は、取り扱いのすそ野をどれだけ拡大できるかということだと思います。いわゆる利用者総数の復活です。 ただ、われわれのJAの生産資材の手数料はトータルで12%程度ですが、この水準では経済事業の収支は厳しいのが現実です。私としては17%程度確保しなければならないだろうとみていて、その水準を確保できるような仕組みをつくることが必要ではないかということです。 そう考えると、やはり全農の機能はJAの補完ではなくて、本当の原価の部分を引き下げる努力がまだまだ求められていると思うんですね。どうも生産資材価格の設定は、JAに問題があるのだという受け止め方が多いように思いますが、加重平均を取り入れた手数料設定など手法としてはわれわれも努力しているわけです。それに加えて全農は元の部分を下げていくという機能分担をすべきだと思います。やはり協同組合として、われわれ単協段階ではできないことを全農や県連に委任しているわけですから。 そのなかで全農としては、原価と事業にはこれだけのコストがかかるということも示す、そういう情報公開が系統組織のなかであっていいと思います。われわれとしても示された原価やコストを必ずしも拒否するわけではありませんし、一方で切り詰めるべきコストはここではないかというような話もできなければならないでしょう。そうすることによってもっと結集力が高まると思います。安ければ商系から仕入れればいいということではないと思います。 梶井 そうですね。安ければ商系からやれば系統組織という実質をなくしてしまうと思います。 ◆直接販売の拡大は地域住民との連携で 梶井 さて、販売事業については果樹、花、野菜、米など品目が多くいろいろな苦労があると思いますが最近の取り組みについて聞かせてください。
どう再生するかが課題ですが、マーケットの状況をどれだけ把握できるかだと考えて、昨年からマーケティングの担当職員を設置しました。市場流通も含めて、マーケットにはどういう課題があり、それに対してどう取り組むべきなのかを捉えようということです。 また、米の販売高は合併当時は14億円の販売高がありましたが、今では6億円を切るほどの状況です。そこで福島市は消費地で29万市民がいるわけですから、福島市で生産された米を福島市民にどう流通させるかということにJAとして取り組んでいて、そのひとつが直売所での米販売や市内の学校給食への供給です。 私は今回の米改革に合わせて福島市のなかでみんなで米を守り育てていこうという「福島米友の会」といったものを結成できないかといったことを考えています。それは今までとくに米の販売は系統組織におんぶに抱っこという面がありましたが、自らが開拓していくということでもありますね。 それから、花き、野菜などは生産者も高齢化していますから新たな生産者をどう確保するかがいちばん大きな課題ですね。ただ、同時に高齢層から若い層まで生産者の幅が広がると技術レベルの幅も広がって品質がそろわなくなってしまうという現実問題があります。 そうなると販売事業も今までのように大量に集めて大量に共選するという方法だけでは進められなくなってくる。ところが残念ながらまだ大量集荷、大量販売という時期の考え方を引っ張ってきている部分がありますから、今の時点で必要なのは、生産者をある意味で技術水準別に見て、それに見合ったような売り方も模索していかなければならないと思っています。 ◆事業として農業再生のメッセージを伝える 菅野 たとえば、先ほど申し上げたマーケティング担当者は、JAが直接販売していくために地元や仙台市内のスーパーなどにインショップ方式の販売を展開しながら市場対応策を検討していますが、年間を通じて供給できるような体制をとなると、この管内は野菜生産が少ないという問題があります。
(梶井) (2003.7.29)
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