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シリーズ 農協のあり方を探る−10 |
第二 農産物の生産や供給は農協がなければできない
黒澤さんが言わんとしたことは、信用・共済分離論を主張しているわけでは決してない。そうではなく、農協の果たすべき最大の仕事は、国民・消費者にいかに安全かつ安心してもらえる農畜産物を安定的に供給するかにある、ということを強調しているのである。 そのためには、これまでの農協の販売事業のシステムをいかに改革すべきか、食と農の距離をいかに縮めるか、という課題を高らかに宣言した言葉である。農協は消費者が求めているものを、身をもって捉えていただろうか。ただ作って集荷し、選果して出荷すればよいという安易な行き方ではなかったか。安全とか安心とかいう基本問題に真剣に取り組んできたか、というような反省からでてきた言葉でもある。 さらに、販売するための農畜産物を生産するに当たっては、営農指導事業が欠かせないが、農協合併などを契機に営農指導事業は収益を生まない不採算部門として縮小されるとか切り捨てられつつあるが、それでよいのか。 そういう路線ではなく、営農指導事業と販売事業をしっかり結びつけ、真に消費者の求めているものを作り、それを実現する販売・供給システムにつなげ、あわせて生産者組合員のフトコロを最大限に暖めることのできる改革路線を作るべきではないかということを提示しているのである。 この黒澤賢治さんの改革提言は言い放しに終わっているのではなく、JA甘楽富岡のこれまでの実践に結びついている。 (1)「生産者手取り最優先」の理念による営農事業の根本的な転換、(2)多様な生産者による多品目生産を支える五つの販売チャンネルの開拓とパッケージセンターの設置、(3)「公開の原則」による組合員の事業参画と面積予約による購買事業と販売事業、経営指導のリンク、(4)多様な生産者に対するきめ細かな技術サポート、(5)生産者を鍛え元気にする直売システム、(6)販売促進委員会商品開発部会によるオリジナルブランドの多面的開発、(7)面積予約による計画生産・計画販売で産地主導の値決め型販売、(8)職員の研修システムと総合職としての営農指導員の意識改革、(9)女性・高齢者が元気を出せる地域づくり、(10)平等原則から公平原則へ。 JA甘楽富岡がJA改革のトップランナーとして評価される点は、以上述べたような斬新な改革路線にあるが、その原点は、「農協がなければ農産物の生産や供給はできない」という考え方を堅持しているところにある。この原点を忘れては、農協の存在意義はなくなってしまうということを肝に銘じてもらいたいと思う。 「農協のあり方についての研究会」の報告書で、現状の農協に内在している問題点として次の4点を指摘した。要点だけ要約して紹介しておこう。 (1)農協制度発足後、半世紀以上が経過して「組合員のための組織」というよりも、「組織のための組織」という色彩が強まっている。 (2)農協合併で規模が大きくなったが、それに見合った運営ノウハウが確立していない。 (3)食料不足を前提にした系統出荷システムを今も踏襲しているため、消費者ニーズをふまえた農産物販売になっていない。 (4)農業者の階層分化が進んだ現在においても、「形式的な平等」となり、担い手を中心にした「実質的な公平」な事業運営に転換できていない。 ここで指摘した問題点は、あくまでも基本的な問題点を整理したものに過ぎないが、これらの問題をいかに克服し活力ある農協にすべきかを次に具体的に述べてみよう。黒澤賢治さんの提言と実践は、実はここで指摘された問題点の全面的な改革へ取り組んだ先発事例でもある。 第三 危機を発展のエネルギーに転化させ、 ◆「農業恐慌」から立ち上がる 目を見張らせるような販売戦略。老若男女の生産者組合員全員の信頼を集めてゆるぎない活動をする営農指導。ガラス張りの経営。たゆみない市場開拓と新作物の創造。JA甘楽富岡の早朝の集荷場に来た組合員と話してみると、その活気に充ちた会話から、こういうことがすぐ連想される。 ◆大水害で飛躍のバネに JA越後さんとうは、米政策改革大綱の打ち出されるはるか以前から、この大綱に盛られたような路線をすでに実践してきたということで、いま全国から熱い視線を浴びている。 ◆人材と営農指導 さて、以上、全国のJAのトップ・ランナーとして位置づけられている野菜など青果物を主体としたJA甘楽富岡、米作地帯の代表としてのJA越後さんとうについて紹介してきたが、いずれも「危機」を逆転の発想で乗り越え、今日の姿を築き上げたことが判ったと思う。だから、現状ではどん底にあると見られるJAでも、常に努力次第でトップJAに飛躍できる可能性を秘めているはずである。では、どこから、どういう視点で取り組むべきか。 (1) 誰が この10項目の1つ1つの項目はいずれも重要だが、それぞれについて詳しくは次回(下)で述べることにするが、これを読んで頂いたJAの役員、そして職員は各自、まず自らの手で答案を書いてもらいたいと思う。各JAで役職員が500人いれば500通りの答案ができる可能性があると思うが、それを持ち寄って、JAとして何をどこから始めるべきか、核心に迫る討議を始めてもらいたい。 |
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