農業協同組合新聞 JACOM
   

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シリーズ 「個配事業」の創造と21世紀的可能性−東京マイコープ
第2回
「連帯が生み出した力」

都内小生協群から連帯合併へ


 
組合員の組織討論が盛ん
組合員の組織討論が盛ん
 1970年代後半はまだ、日本経済が登り階段にいた。少子化を心配する土壌すらなかった。そこでは社会的インフラの未整備が、市民の日常生活に多くのキシミをもたらしていた。1973年暮れの第一次オイルショックが、この傾向を大いに助長した。つまり首都圏では生協の設立ラッシュ時代だった。農産物に限っていっても、1970年の自主流通米制度の発足は、こうした若い生協にとって、米を本格的に扱う工夫・創意の機会でもあった。仮に自主流通米に乗らず、ヤミ米を敢えて実行するにしても、生協の社会的役割との関係では、ヤミ米で大声を発する訳にはいかない。さらに米以外の農産物では公設市場利用か、部分的に市場外流通だった。産直事業の萌芽期がこの時代だった。1968年スタートの全販連(全農)東京生鮮食品集配センターは、その最も象徴的な市場外流通の利用拠点だった。
 こうした背景を踏まえて、生協の歴史を辿り直してみる。参考資料は事業連組織が編集した『連帯と協同の20年』(1997年3月刊)、東京マイコープの前身・Eコープ編集の『彩・Eコープ20年史』(1990年4月刊)、東京都生協連合会編『東京の生協運動史(続編)』(2001年2月刊)など。設立と合併連帯の主要な経過は以下の通り。

・1970年:辰巳団地生協設立、タマ消費生協設立
・1971年:北多摩生協設立、小金井生協設立
・1972年:あけぼの生協設立
・1975年:調布生協、立川生協、西多摩生協が設立
・1977年:首都圏生協事業連絡会議設立
・1983年:共同購入研究会(北多摩、花見川、わかば)スタート。全農と協同組合間提携強化協定調印
・1988年:東京3生協(たつみ、江戸川、あけぼの)合併でEコープ発足
・1990年:首都圏コープ事業連合が法人認可
・1992年:下馬生協が事業連合に加入
・1993年:東京多摩5生協合併でジョイコープ設立
・1996年:Eコープ(下馬込)とジョイコープが合併して東京マイコープ発足

 これらに加盟上部生協である首都圏コープ事業連合(会員は首都圏8生協)が大きな役割を果たすのだが、事業連合には触れずに進もう。
 初期リーダーで、合併連帯の中心作業にいた下山保氏(たつみ生協出身)のコメントを引用しよう。
 「76年に日本生協連が発表した[第1次中計]は、私たちの小生協に大きな衝撃を与えた。なぜなら、その内容は県内で拠点生協づくりを進め統一して行く、すなわち強い生協に弱い生協を統合していこうということだったからだ」
 これを、日生協公文書で確認しておこう。1978年6月に決定した方針で、拠点生協論が登場した。それまでの長い討議を踏まえて、日本生協連 「第1次中期計画(78〜80)」となる。その中で県連機能と赤字単協対策、拠点単協づくりが提起された。これに下山氏以下が敏感に反応した。事実76年7月、都内では文京勤労者、戸山ハイツ、都民の3生協合同によって東京都民生協(現在のコープとうきょう)が誕生したからである。転換点だった。第2次オイルショックも押し寄せたからだ。
 この頃あけぼの、北多摩、立川など関連友好生協が経営難問題をかかえ、その克服に多大のエネルギーを消費した。当時私は招かれて、北多摩生協の定期総会で情勢報告したことがあった。累積800万円を超える赤字を抱えていたのが、忘れられない記憶である。直ちにそれは全農関連協同会社との米取引の担保問題に直結したからである。
 最近下山氏を取材した。集約すると以下のようだ。
・私自身は森定進氏、斉藤嘉璋(以後共に日本生協連理事)氏とは早稲田大学生協時代からのつきあいだった。ただし私は社会党員であって、大学生協に入ったことはない。それが江東・辰巳団地自治会長になって、住民運動・生協設立運動に関係するようになった。
・1970年、都民生協設立の主旨とは違う人達、労働者クラブ、生活クラブ、タマ消費などの生協と、江東・海岸線方面に生協設立を話し合った。みな賛成してくれた。いわば生協ルネッサンスの時代でもあった。日本生協連の勝部欣一氏、竹井二三子氏らは東京生協問題をかかえていたから、勿論設立反対だった。
・日生協の中計拠点生協論を実践的に乗り越えることが小さな生協にとって課題になった。つまり「連帯」問題。多く語り合ったし、意見の違いがあって当然だった。
・ 飛んで、1984年のOCR採用、それに協力してくれた東都生協らに感謝。なんといっても銀行自動引き落としができるかどうかが大きな分かれ目だったからです。
 以上から、社会的信用を創るのに、80年代半ば、組合員の予約注文書を自動読み取り処理するOCR(光学式文字読み取り)方式の採用が如何に意味大きかったか。外部から見ていると、連帯するエネルギーときっかけは本当に分からないものだ。
(元協同組合経営研究所研究員・今野 聰)
生活協同組合東京マイコープ
▽理事長・増田レイ▽本部・東京都新宿区北山伏町1―11(牛込食糧ビル2F)▽総事業高・498億円(2002年度末)▽組合員総数・22万人(2月末)
(2003.6.5)


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