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シリーズ 改革の風を吹かそう−農と共生の時代づくりのために |
◆組合員の意見を聞き経営内容もオープンに
森澤 JAとぴあ浜松は平成7年に合併し、組合員6万人の広域大型JAとしてスタート。各部門の事業量もそれぞれトップレベルで、かつ多様な作物を抱え、JA運営では大きいが故にご苦労もされてきたと思います。農協運動の面から、基本的に考えてきたことについてお話いただければと思います。 松下 農協は株式会社のような財の集まりではなく、人の集まりです。だから組合員の意見を聞かないで農協はあり得ないといえます。さらに農協法からいって協同組合は利益を追求しません、ということは利益が出れば公平に還元しなければならず、また利益を出さなければ組合経営が成り立たないから一定の利益は出し、組合の内部留保もします。さらに、もう1つは報酬も含めて職員が働きがいのある職場を作ってやらなければいけないという3分の1方式を常に念頭に置いてきました。 ◆受益者負担も話し合って
松下 施設投資については計画的に取り組んできましたが、現在、タマネギとバレイショの選果場建設が残っています。タマネギは品質が柔らかくなっており、バレイショもサラダ感覚に応えるため新しい選果場のあり方を議論しています。生産者自身の施設だから自分で計画を策定し、受益者負担で実施する方針で、農協はそれをお手伝いします。 森澤 組合員に還元していく基盤としてJAが健全でなくてはいけない、それと組合員の信頼確保には情報公開だと、そういう姿勢で施設整備にも公平性のある考え方で、受益者負担を求める所はきちんと徹底的に話し合っていくという運営のお話だったと思います。 松下 うちは作物が非常にバラエティに富んでおり、女性・青年部以外に44の生産組織があります。生産部会は共同計算、共販をしているもの、協議会は共販だけで、まだ共計まではいっていない組織ですが、将来はすべてを部会にします。 ◆選果場の統合を喜ぶ 松下 これらは合併以来、次々にできて、一番大きい柑橘は1200人いると思いますが、12年に協議会から部会になりました。合併前から選果場5つを1つに統合する話し合いをとことんして、まとまったところで部会にしました。5選果場のうち選果料は高い所でキロ当たり30円、安いところで16円でしたが、統合した新選果場の料金は25円にしました。高いという声も出ましたが、12年度末には未精算金が1億5000万円出て、それを分けたらキロ当たり17円になり、組合員は大喜びでした。同時に光センサーなど最新鋭の機械を入れて、畑ごとに、品質にどういうばらつきが出てきたかを全部管理して営農指導員が個別に指導しています。 森澤 販売高は約240億円ですね。とくに私が驚いたのは部会と協議会合わせて44だから、相当な品目を農業振興してきたということですね。 松下 野菜だけで120品目です。中でもハーブ類は東京の帝国ホテルはじめ全国の有名フランス料理店へ送っています。ほかに、これは企業秘密の段階ですが、新しい品目の少量生産も手がけています。ここで問題になるのがマイナー作物です。 ◆部会ごとに誓約書 松下 今、登録農薬の適用拡大をやっていますが、静岡県の中では2億円くらいかかります。うちは、その80%を負担します。県下JAを挙げて取り組んでおります。 森澤 登録農薬の適用拡大はJAが一歩前へ踏み出さないと進展しない状況です。とにかくこのままでは地域の特産物がなくなってしまいます。 松下 食生活が貧相になっちゃいます。ところで、うちの場合は一昨年8月無登録農薬問題が起きたとき、全部会で各生産部会長あてに「使用しません」という誓約書を書き、それを組合長がまとめて東京の青果市場と花市場へ持参して安全・安心を訴えたという取り組みもあります。 森澤 生産履歴の記帳運動のほうはどうですか。 松下 部会で牽制し合ってやっています。もう1つ私どもは土壌分析と、水耕栽培の溶液分析、それから残留農薬分析をやって生産者個々の営農指導に活かしています。 森澤 地縁的な部会から目的別グループへの変化ですね。 松下 目的別だけだと困るので集落単位に正組合員を網羅する形で部農会を組織し、広報はこれを通じてやっています。 森澤 縦横の網の目ですね。無登録農薬にしてもマイナー作物にしても、組合員より一歩か二歩先を考えて組合員に率直に状況を説明し、組合員の合意の基に進めてきた、というお話でした。さて地域の活性化では、間もなく開幕する「浜名湖花博」への出展があります。スタートまでには大変な判断があったと思います。 ◆花博にJAパビリオン 松下 大阪、淡路に次ぐ3つ目の花博で開幕は4月です。うちは単独で、パビリオンを出展します。組合員参加型で花と野菜と果物がテーマです。園芸博だから花だけではありません。費用は5億円ですが、組合員から反対は全く出ませんでした。“やらまいか精神”といわれる浜松の土地柄もあるようです。 森澤 組合員参加型でやるわけですね。花博に取り組めるのも、やはりJAの財務基盤がしっかりしているからだと思います。それからJAとぴあ浜松はコンプライアンス(法令順守)の徹底でも定評があります。 松下 これはね。保有が増加しなければ保障の充実にはならない。だから、うちは純増方式で8年間に1兆円伸ばし、加入者の中には1億円以上保有の人が約1万3000人います。 森澤 信用事業でも貯金の伸び率が高い水準です。組合長は“集める貯金よりも集まる貯金を”が持論ですが。 松下 販売高、購買高、そして管内の農地面積も農業就業者数も毎年減り続けている、そんな中で貯金を伸ばすには、年金振り込みの取り扱いしかないとして力を注ぎました。販売代金は購買代金や生活費で出ていきますが、年金はごそっと出ていきません。“集まる貯金”というわけです。 ◆人材の有効活用にも力を入れて 松下 年金は集めに回るコストがいりません。その分をいろんな顧客サービスに使っていますが、とくに日帰り旅行が喜ばれています。今では管内年金受給者の4人に1人がJA貯金口座への振り込みで、シェア24%です。 森澤 もともとJAへの信頼はありますが、とぴあ浜松は、それに仕組みなどを付け加えて厚い信頼にしています。 松下 もう1つ、うちの特色に女子営農指導員の導入があります。13年度に8人を入れ、現在は13人です。合計約80人の指導員のうち半分ほどは女性にしてもよいと私は考えています。 静岡大学をはじめ4年制大学の農学部卒で大学院卒も2人います。彼女たちは仕事上の疑問に直面すると出身大学に問い合わせるため、先輩が指導員になっていることを知った後輩たちが、その後、次々に採用試験を受けに来ています。組合員の中にも最近は大卒の就農者が増えているため、英文レポートの翻訳などを彼女たちに頼むといった風景も見られます。 森澤 最後に、これから経済事業の改革に取り組むJAに向けてのメッセージとか留意点を挙げて下さい。 ◆意識改革がキーワード 松下 経済事業については、農協がやらなくてもよい仕事まで農協がやる必要はないと思います。例えば、うちは合併当時、家電製品の取扱高が8億円ありましたが、供給先の半分は職員と、その親戚でした。量販店が増えている中で、これが購買活動だといえるのか、と議論をして同事業から撤退しました。 森澤 経済事業改革を進めるに当たっても組合員に率直に情報を開示して、説明責任を果たし、組合員の合意を得ることが大事だというお話でした。そして意識改革をキーワードに実践を進めようということですね。ありがとうございました。
(2004.1.8) |
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