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生協らしさをどう発揮するかが問われている |
生協運動北の雄・みやぎ生協を取材訪問したのは、今年9月上旬。さんま、はらこ飯など「秋の味覚満載」、「野菜果物100万個大放出」、「カナダ産豚ロース肉4割引」などのチラシが配られた時期だった。
事業概要を紹介しておこう。メンバー数51万人、供給高939億円(前年比99.9%)。うち店舗683億円、共同購入235億円、経常剰余金7億円(以上2004年3月末現在)。圧倒的に店舗事業中心だから、競合店との競争圧力は大きい。共済事業剰余をプラスしながら、必死に闘っているとみる。
生協幹部との討議・懇談をふくめ、以下21世紀に存在する意味を列挙してみよう。
第1は、売り場で見た3店、大型SSM店の概要である。
・ 幸町店(1994年開店、供給高4,891百万円、売り場面積2271坪)
・ 明石台店(2002年、2,869百万円、867坪)
・ 愛子店(2004年、833坪、26億円)
供給高は03年度実績。ただし愛子店は旧店から新立地の開店で04年度計画。
バックヤードは、正面から見た範囲のことだが、確かにコープかながわの新店舗型「ミア・クチーナ」に比べ、地味だった。揚げ物を中心に惣菜強化路線を模索中なのだろう。3店とも、衣料品を併設していて、みやぎ生協のSSM業態への並でない決意を感じた。生協運動全体としては、食品中心の450坪SM店型へ中軸を移しつつある中でのことだからである。
第2は、いわゆる生協らしさ。店舗だから一層それが問われる。店内陳列と料理メニューとの協力関係に大きな特徴を見た。例えばコーナー「キッチンサポートホットメニュー」。常時1人が担当して、組合員に声を掛けていた。料理方法「レタスとみょうがの和風サラダ」をとってみた。4人前で材料、つくりかた、若干のイラスト。持ち帰ってレシピ通り作ってみたが、簡単。実際的だ。こういうのを「生協らしさ」という姿勢と実践。
キッチン応援と休息を兼ねて、首都圏の地域大手スーパーでも見かける。だから、なにをプラスするか。そこが問われているのだろう。
第3は、やや理論編になるが、いわゆる多数者生協運動について。店舗で一定の勢力を占めなければ、共同購入だけではおぼつかないという考え。農協店舗事業論にはないものだろう。コープとうきょう(供給高1500億円)に代表される。関西のコープこうべが先進事例であった。1980年代後半、食品小売り市場で一定のシェアを目指し、店舗展開を急速化した。狙いは、西欧生協の10%シェア以上だったろう。
◆量販店との苦闘
みやぎ生協(県内世帯の60%組織化)は、この考えを強固にもつ。そして店舗事業は急伸した。当然民間スーパーの攻勢にぶち当たる。かくて苦闘して15年程。その評価が定まったか。現実は日本中、どの生協も店舗展開に相当の困難さが伴う。食品SMへの中心への転換とはこのことだろう。みやぎ生協のSSM店舗配置は、一層注目される。
第4は、農協共販事業、協同組合間協同との関係である。1970年代後半に、おりからの流通革命の激化で、生協との関係強化が広く問われた。みやぎ生協と仙南加工連の産直事業は当然注目された。県経済連が機能参加しない、加工連がその機能を負ったからである。結果的には、みやぎ生協の急伸によって加工連から県内各地農協に広がった。
豚肉産直でみてみよう。「産直豚肉PorK」は、2種類「みちのくポーク豚」と、「ふるさとポーク豚」。黒豚と白豚の交配で、遺伝子組み換えしない飼料、収穫後無農薬トウモロコシ。それに約5ヶ月抗生物質などの休薬期間が強調される。新顔に宮城県産「霜降り豚」もある。相当の産直豚強調である。
店内チラシ「生まれてから、メンバーさんのお手元に届くまで」で、産直豚とカナダポーク及び一般国内豚の比較表示をする。
・ 産地。「JA加美よつば(加美町)」、「JAみやぎ仙南(角田市、丸森町、白石市、蔵王町)」、「JAみどりの(田尻町、南郷町、鹿島台町)」、伊豆沼農産(迫町)。
・ と場。仙台中央食肉卸売市場(株)、宮城県食肉流通公社(株)。
・ カット場。ここでは仙台中央食肉加工事業(株)、加工場東北フレッシュパック(株)宮城ミートセンター(米山町)と表示。
・ この間、生産者証明書(外箱証明書と生産者証明書)が通関する。
・ 最後はみやぎ生協のミートセンターと(株)コープフーズ東北ミートセンター。
最終に店舗で組合員あてとなる。ここまで丁寧とは驚きだった。
第5は、今後の運動と事業展望である。東北6県にめぐらす事業連合(東北サンネット)が順調に進んでいるらしいので、そのことは省略する。
もっぱら民間スーパーの店舗展開とかスーパー間再統合の動向に左右される。敢えて言えば、競合に耐えられる体力と競争力。それを生協全体イメージと社会的責任、日常のサービス、商品力となろう。そうであれば益々組合員(メンバーさんという)の参加力ということになる。福祉事業、子育て支援組織などが、その周辺の厚みになる。
蛇足を少し。取材中、頭にあったのは、戦前の東京にあった家庭購買組合だった。リーダーが吉野作造(大正デモクラシーの論客)で、宮城県古川市出身。かれの先人的努力は、賀川豊彦に優るとも劣らない社会運動だった。そのことを知らねば彼に「ごしゃがれる」(怒られる)だろう。
(2004.12.15)
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