農業協同組合新聞 JACOM
   

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JA米で信頼される産地づくりを−1

「JA米」主要JAの8割が16年産から実践
コメ作付面積 上位200JAへの調査で明らかに

本紙調査「JA米についてのアンケート」結果まとまる

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  米政策の転換にともなってJAグループが課題としている「JA米」の確立について、本紙では、水稲作付け面積上位200JAを対象にその取り組み方針や実践状況をアンケート調査した。調査結果では、回答JAのうち8割のJAが「16年産からJA米に取り組む」とし、また、生産履歴記帳運動にはすでに「15年産」から9割のJAで実施されたことなどが示された。今回は同アンケート結果の概要を紹介する。

◆信頼される産地づくりへ  

図1 「JA米」確率への取り組み方針
  アンケートは昨年末から今年1月にかけて実施した。対象は、水稲作付け面積の上位200JA。回答JAは165で回収率は82.5%となった。東日本で118JA、西日本で47JAとなった。回答JAの15年産水稲作付け面積を総計すると、約71万3000ヘクタールとなっている。
 JA米の要件は(1)銘柄が確認できた種子により生産された米穀、(2)登録検査機関で受検された米穀、(3)生産基準に基づく栽培履歴記帳が確認された米穀、とされている。
 アンケートではまず「JA米」への取り組み方針を聞いた。
 結果は、「16年産」から取り組む方針のJAが回答全JAのうち80.6%にのぼった。16年産では取り組まないとしたのは25JA、15.2%だった(図1)。このうちには「17年産から取り組む」方針のほか、検討中、当面保留などの回答があった。
 地域別にみると、「16年産から取り組む」方針は東日本の回答JAでは86%、西日本では68%だった。

◆「管内全域で推進」が6割

図2 地域での「JA米」確率に向けた推進方針(16年度)
 地域でのJA米の推進方針については、(1)「管内全域を対象に推進」、(2)「地区を限定して推進」、(3)「銘柄を限定して推進」の3つの選択肢から回答してもらった。
 結果は16年産から取り組むJAでは「管内全域」が72.2%を占めた(図2)。「地区限定」は6.8%、「銘柄限定」は16.5%だった。(未回答4.5%)一部の回答では地区と銘柄の両方を限定して推進するとの方針もあった。
 また、16年産では「地区」または「銘柄」に限定するものの、17年産、18年産と段階的に管内全域に広げていく方針のJAもあった。
 地域別にみると「管内全域対象」は東日本回答JAでは72.3%、西日本では71.9%。JA米の確立にあたって、米主産地のJAでは初年度から「管内全域」が推進方針の主流であることが示された。

◆生産履歴記帳 高い浸透度

図3 栽培履歴記帳運動の取り組み(15年産)

 栽培基準に基づく生産履歴記帳とその確認は、JA米の大きな柱だが、すでに15年産から多くのJAで取り組まれている実態が示された。
 回答JAのうち「15年産から取り組んだ」のは実に90.3%で、「16年産から」としたのは7.9%。「未定」は1.2%にすぎなかった(図3)。16年産では約98%のJAが生産履歴記帳に取り組むことになる。
 15年産からの実施は東日本回答JAでは91.5%、西日本でも87.2%と高かった。
 推進方針については、(1)全生産者に生産基準と栽培日誌を配布、(2)重点集落に絞って推進、(3)重点品種に絞って推進の3つの選択肢から回答してもらった。
 結果は、JA米の推進方針で「管内全域」が主流であることを反映し、「全生産者に配布」が89.1%を占めた。東日本では89.0%、西日本では89.4%だった。
 15年産の実施実績について、生産日誌の提出実績を聞いた。集落や品種を絞って実施したJAでは100%提出されたとの回答だったが、全生産者を対象にしたJAでは平均85%の実績となり、今後の課題も示された。

◆生産者の意識改革進める生産現場

 栽培履歴記帳運動の推進にあたって、集落や品種を絞る方針のJAではその理由について「農家の認識レベルを考慮した結果」、「とりあえず推進できる地域から」、「米販売農家を中心にした」といった答えのほか、「まず無化学肥料栽培を対象」、「15年産は特別栽培米対象、16年産は稲作部会、17年産で全生産者」と段階的な推進についての具体的な方針を持っているJAもあった。
 一方、全生産者を対象に推進するとの方針の理由では「地域全体のコメ生産に関わることだから」、「生産者として当然全量取り組むべき」、「全生産者で取り組まないと意味がない」、「時代の流れだ」、「取り組むなら全員一緒がベター」、「組合員に意識をもってもらうため」など、この運動を通じて、地域全体で安全・安心な米の生産についての意識改革、品質のレベルアップをはかろうとする意向が感じられる声が多かった。
 そのほか、野菜や果樹、畜産ですでに先行的に「全農安心システム」などを導入していることから、米についても全生産者での生産履歴記帳への理解が進められたといった理由もあった。

◆生産日誌の点検 平均1.8回

 15年産で生産履歴記帳を行ったJAの生産日誌の点検回数は平均で1.8回となった。
 生産日誌の点検時期でもっとも多かったのは、「出荷時」で43%。ついで「生育時」38.8%、「収穫後」31.5%となった。「収穫中」は18.2%、「植え付け時」は12.7%(図4)。
 また、生産日誌の回収時期については、「出荷前日までに回収し内容を確認した」は37%だった。「出荷日までに回収するのがやっとだった」が10.9%。
 「出荷時に回収」(24.2%)と「出荷後に回収」(21.8%)と合わせると46%となり、出荷までに回収し内容を確認したうえで集荷するという体制の確立が多くのJAで課題となっていることを伺わせる結果となった。

図4 生産日誌の点検時期 図5 生産日誌の回収時期

◆JA米への取り組み 「重要課題」が8割

図6 「JA米」への取り組みについて

 アンケートでは「JA米」についての意識を米穀事業担当者に聞いた。
 結果は「非常に重要」(40.6%)と「重要」(40.6%)を合わると8割が重要な課題と考えていることが分かった。
 「関心がない」との回答はゼロで「あまり重要ではない」も3.6%だった。ただし、「極めて難しい課題」との回答も11.5%と1割を超えた。
 具体的な課題については自由記入してもらった。生産者の意識改革をうながす努力、特色ある米づくり、販売戦略の構築などが上がっている。

回答165JAの作付品種の生産量10位

 

◆JA米の確立とJA米穀事業の課題
(おもな回答)

 アンケートでは、JA米への取り組みとともに米穀事業全般の課題について、自由に記入してもらった。
 品質向上策や販売戦略の重要性を指摘する声が多く、「全農安心システム米」の認証取得も課題との意見もあった。

●米需要情報の収集により、消費者ニーズにあった米の生産計画を樹立。生産、集荷、販売をより精度の高い関係とする。
●栽培履歴記帳については、本年度は2年目でほぼ100%を達成。16年度以降は、トレーサビリティシステムが完全になり生産段階でのトレースは確立されるため、そのデータを基に積極的な販売戦略を策定する。
●「米政策改革」での地域水田農業ビジョン作成が難しい課題だ。とくに担い手農家の選定、認定農業者の転作未達成者が多い地区がある。
●努力している産地とそうでないところを一緒にして共計することに不公平感が出ている共計のあり方を新たに確立すべきである。
●地域水田農業ビジョンに沿った作付誘導とトレーサビリティーシステムの確立によりJA米の販売強化を図る。
●農協が取り扱う米全部をJA米としてゆくべきではないかと思う。種子更新と検査を受け、また、生産履歴のあるものがJA米としての定義であることを生産者にアピールするには、「売れる米」と他とは別の付加価値が必要だと思う。付加価値をいかにつけられるかが今後の課題である。
●16年から統一した資材で生産が行われるよう誘導に力を入れる。系統集荷率が低下している現状で生産者自らの販売に拍車がかからないよう農協の指導力を発揮するためきめ細かい活動を展開する。
●「売れる米」づくりの方向性を生産者の理解を得て推進すること。JA独自の「こだわり米、オリジナル米」を有利販売に結びつけること。使用農薬の集約化をはかり生産履歴を記帳しやすい状況にしたい。

<栽培履歴記帳の徹底はかる>

●農水省ガイドラインの減化学減農薬栽培に全面積で取り組む方針。JA米については、単協のみならず県本部として取組む方針であり協議検討して全員参画の方向。
●契約栽培米の拡大により、安全供給を目的とし、安定価格を確保する。共乾施設の稼働率の向上。大規模農家対策への取り組み。
●土づくりを基本とした高品質・良食味の安定生産(タンパク値を重視)
●エコファーマー認定の米作りを平成16年度から全生産者で実施(化学農薬、化学肥料2割減)
●JA米を中心に、早期あきたこまち、契約栽培ミルキークィーンなど、特色ある米づくりを推進していきたい。
●消費地のため、直接消費者へ販売する生産者が増加し、集荷率が低下している。特別栽培米等の生産組織を強化して集荷率を向上させたい。
●系統販売を中心に契約栽培米及び特別栽培米等を拡充したい。
●集荷率の向上、品質の維持
●地産地消。
●売れる米づくりの推進。販売力の強化。
●現行の一般栽培米を、3年後(18年度)を目標にエコ米へ移行。
●栽培基準に応じた肥料農薬の統一により、安定供給の確立。売れる米づくりへの取組強化による米作付け面積の拡大をめざす。
●集荷率、上位等級率をさらに向上させるため、営農指導に力を入れ、生産者とJA(指導員)との距離を縮める。トレーサビリティのさらなる徹底、また、生産基準を生産者に守ってもらえるような指導が必要。産地間の競争がさらに激化していくことが予想されるので、当JAの特色を生かした販売方法の検討、確立。

<土づくりから「売れるコメづくり」をの声も>

●元々集荷率は高く、組合員へのPRは行届いてるものと思っている。また、量販店との取引量が多く絶対量が不足していることから今後も出荷を呼びかけていく。本来「売れる米づくり」の観点から言えば、もっと水稲作付け面積を拡大すべきと考えている。
●売れる米づくりに向けプライベートブランド米の確立を目指す。
●地域に合った具体的な良質米生産基本計画の策定や「こだわり」のある販売戦略を策定し、各地域の生産組織等を通じその徹底を行い実践する。地域店舗等を中心とした地域ブランド米の販売戦略を確立する。全量集荷や良質米生産販売に対する指導販売体制の強化に努め、農家の意識改革を図る。
●実需者と協議し契約栽培方式を取り入れた生産に取り組みたい。
●県のこだわり基準をもとに環境とのかかわりを全面にだして販売につなげたい。
●消費者への安全・安心をどう明確化するかが課題。記帳などはあくまで目安とすべきで出荷米ごとのサンプル分析、検査がより確実にも思われる。生産者の意識改革は必要だが手段・手法を間違えると反感が多くなる。強制感ばかりでは真の安全・安心の実現は難しいと考える。農家がついてこられない状況が最も心配。
●当JAでは消費者に少しでも安心して食べていただけるよう、栽培方法を工夫した減農薬、減化学肥料での取り扱いのみを行っており、今後もこの取組を強化しJAブランド米確立をはかる。
●合併JAで標高差、地域差があり、品種についても異なるので、良質生産地域に限り、JA米を推進している。
●販売力強化に向け販売専任職員を設置。特徴ある米づくり(土づくり、コスト低減米)。生活者、量販店への直接販売。
●減農薬、減化学米の取組みも平成15年産から進めており17年度は管内で大幅に増やす予定。相対取引(契約栽培)を増加させる。
●栽培計画に基づいた生産基準厳守。履歴記帳の徹底及び提出。無化学肥料栽培米を中心とした販路拡大。産直方式による個別宅配サービス。

<「全農安心システム」認証もテーマ>

●当JAは米については集荷業務のみの取扱いとなっていたが、16年度より販売業務体制を整える予定。
●トレサビ、JAによる検査結果、土検結果、食味結果(→食味計の購入検討)を統合して管理、活用するためのシステム化が必要(理想)。
●売れる米づくり、売れる品種への誘導を今以上に行う。一方、品種の統一をはかった場合におこる施設利用者への対応も課題。
●栽培履歴記帳の全米生産者への実施
●地帯別用途別品種の選定と販売方策の実施。仮渡金制度の検討。
●直売所等を中心とした販売拡大(地産地消)。管内消費者を対象とした玄米直販の実施(年間予約販売)
●需要に応じた米生産により、復田可能な水田から段階的に米生産拡大を目指す。もち米、酒米の実需者との契約栽培、減農薬減化学肥料栽培の拡大でこだわり米の生産拡大。
●「全農安心システム米」の認証を15年度に受け今後も更なる高品質を目指し継続して行く方針。JAの独自販売等の取り組みも今後進めて行く方針。。
●カントリーエレベーターへのJA米等への誘導)。食味値によるサイロ振り分けを行う。

(2004.2.23)


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